読みもの
2024.10.09
牛田智大「音の記憶を訪う」 #8

コロナ禍に挑戦した3つの習い事。遠い世界を経験して得たもの

人気実力ともに若手を代表するピアニストの一人、牛田智大さんが、さまざまな音楽作品とともに過ごす日々のなかで感じていることや考えていること、聴き手と共有したいと思っていることなどを、大切な思い出やエピソードとともに綴ります。

牛田智大
牛田智大

2018年第10回浜松国際ピアノコンクールにて第2位、併せてワルシャワ市長賞、聴衆賞を受賞。2019年第29回出光音楽賞受賞。1999年福島県いわき市生まれ。6歳まで...

撮影:ヒダキトモコ

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20歳をすぎたころ突然コロナ禍がやってきたわけですが、その機会にふだん絶対にできないことをしてみようと思い立ち、無謀にも手を出してみたことがいくつかあります。今回はその結果を書いてみようと思います。真面目な話ではまったくありませんが、まあ閑話休題ということで……(笑)。

牛田 智大 Tomoharu Ushida
2018年第10回浜松国際ピアノコンクールにて第2位、併せてワルシャワ市長賞、聴衆賞を受賞。2019年第29回出光音楽賞受賞。1999年福島県いわき市生まれ。6歳まで上海で育つ。
2012年、クラシックの日本人ピアニストとして最年少(12歳)で ユニバーサル ミュージックよりCDデビュー。これまでにベスト盤を含む計9枚のCDをリリース。2015年「愛の喜び」、2016年「展覧会の絵」、2019年「ショパン:バラード第1番、24の前奏曲」、最新CD「ショパン・リサイタル2022」は連続してレコード芸術特選盤に選ばれている。
シュテファン・ヴラダー指揮ウィーン室内管(2014年)、ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管(2015年/2018年)、小林研一郎指揮ハンガリー国立フィル(2016年)、ヤツェク・カスプシク指揮ワルシャワ国立フィル(2018年)各日本公演のソリストを務めたほか、全国各地での演奏会で活躍。その音楽性を高く評価され、2019年5月プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管モスクワ公演、8月にワルシャワ、10月にはブリュッセルでのリサイタルに招かれた。2024年1月には、トマーシュ・ブラウネル指揮プラハ交響楽団日本公演のソリストとして4公演に出演。
20歳を記念し2020年8月31日には東京・サントリーホールでリサイタルを行い、大成功を収めた。また2022年3月、デビュー10周年を迎えて開催した記念リサイタルは各地で好評を博すなど、人気実力ともに若手を代表するピアニストの一人として注目を集めている。
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アナウンス教室では冷や汗の連続

第1弾は某放送局のアナウンス教室に行った話を……。これまでに公演などでトークなるものに挑戦するたびに、早口になったり、時間を超えて延々と長話になってしまったりと、なにかしらやらかしていた私は、この機会にちょっと勉強してみようと奮い立ちました。それは都内某所の会議室のような場所で行なわれたのですが、どんなことを学べるのだろうとウキウキして向かった私は、部屋に入った瞬間、そこに異様にピリピリとした雰囲気が漂っていることに違和感をおぼえました。

そう、私が「初心者のための話し方教室」くらいの気分で申し込んでいたその場所は、真剣にアナウンサーやキャスターを目指す大学生のための養成講座だったのです! 最初はアンケート(なぜ講座に参加したか)から始まったのですが、隣に座った方が用紙にびっしり熱意(なぜアナウンサーになりたいか)を書き進めているのを横目で見ながら、「話すのがあまりにヘタだから」しか書くことがない私は胃がキリキリと痛みはじめたのでした。

講座がはじまり、私の胃はさらに痛みはじめることになります。抜き打ちの漢字テストが始まってしまったのです。アナウンサーにとって読み間違いやすい漢字が集められたらしいそのテストは、もはや1年に一回くらいしかお目にかからないような文字の読み方から二十四節気のほとんどを漢字で書かなければいけないような問題にいたるまでたいへんに難しく、私は胃痛を通り越して冷や汗が止まらなくなりました。

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