ベートーヴェンと冗談
年間を通して楽聖をお祝いする連載、「週刊 ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、さまざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。
第4回は、ベートーヴェンと冗談。気難しいイメージのあるベートーヴェン、実はダジャレ好きだった?
ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会...
カノンを大量生産していたベートーヴェン
冗談の通じなさそうな印象のあるベートーヴェンだが、実際には全然そんなことはなかっただろう。《運命》のようなまじめな作品の影に隠れてはいるが、彼には快活で楽しい作品がたくさんある。交響曲第8番とかピアノ・ソナタ第18番のスケルツォあたりには、あきらかに聴く人を笑わせようとしているとしか思えない面白さがある。《なくした小銭への怒り》なんていう面白いタイトルのピアノ曲もある。そういえば彼は、音楽におけるユーモアの第一人者たるハイドンの弟子だった。
交響曲第8番 第二楽章
ピアノ・ソナタ第18番 第二楽章
ロンド・ア・カプリッチョ ト長調 作品129《失われた小銭への怒り》
ところで、演奏や録音が行なわれることは少ないのだが、ベートーヴェンは短いカノンを大量に書いている。カノンとは、同じメロディを少しずらして歌うときれいにハモるという、要するに輪唱だ。友人知人への挨拶代わりなどに書かれることが多く、他愛のない曲が大半だが、そういうカジュアルなものだけに、ベートーヴェンの冗談好きな面がよく出ている。
たとえば、ソナチネで有名な作曲家フリードリヒ・クーラウ(Kuhlau)に送った、シャンパンを飲んで酔いましたというような内容の手紙に、「ぬるく(lau、ラウ)でなく冷たく(Kühl、キュール)!」というカノンを書いたり、シュヴェンケ(Schwencke)という人の名前を使って「悪ふざけ(Schwänke)なしに揺れろ(Schwenke dich)」というカノンを作ったり。ベートーヴェンはこんな言葉遊び(というかダジャレ?)も大好きだったのだ。
《Kühl, nicht lau(ぬるくでなく冷たく!)》
《Schwenke dich ohne Schwänke!(悪ふざけなしに揺れろ)》
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