ベートーヴェンとベルギー
年間を通してお送りする連載「週刊 ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、さまざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。今回は普段あまり語られない、ベートーヴェンとベルギーの深い関係。ベルギー在住のフルート奏者で、アントワープの王立音楽院図書館・フランダース音楽研究所の研究員としての顔ももつ柴田俊幸さんが紹介してくれました。
ベルギー在住のフルート奏者。ブリュッセル・フィルハーモニック、ベルギー室内管弦楽団などで研鑽を積んだ後、古楽の世界に転身。ラ・プティット・バンド、イル・フォンダメント...
ベートーヴェンはベルギー人!?
ベルギー出身の有名な作曲家といえば? という質問をベルギー人にすると、セザール・フランク 、ウジューヌ・イザイ、吹奏楽ではヤン・ヴァン=デル・ローストなどがあがりますが、ときどき冗談半分に「ベートーヴェン!」という人たちがいます。
馬鹿な冗談はよせよ、と笑うと、みんなが口を揃えて「メヘレンに行ってきな」というのです。
メヘレン市(メッヘレン)は、フランダース(オランダ語圏)の都市でブリュッセルとアントワープの中間に位置します。そこで街を歩いていると、ありました「Van Beethovenstraat (ヴァン・ベートーヴェン通り)」。
実はベートーヴェンのご先祖さまはベルギー・フランダース出身なのです。
1485年、大作曲家ベートーヴェンが生まれる285年前の話。カンペンホウト(Kampenhout)という田舎町に、彼のご先祖にあたるヤン・ヴァン・ベートーヴェンが生まれました。その何代か後にベートーヴェン一族はメヘレンに移住したのです。
ベートーヴェンのおじいさん、ベルギーに誕生
メヘレンのベートーヴェン通りに住んでいたのは、ミカエル・ヴァン・ベートーヴェン。パン職人として生計を立て4人の子どもがいました。その中に一人、パンを焼くのよりも、歌うことが大好きな子が一人いました。彼の名はロデウェイク・ヴァン・ベートーヴェン。ベートーヴェン一家で初めての音楽家でした。
彼の豊かな音楽性と美声もあり、聖歌隊学校へ入学。時としてメヘレンの大聖堂でも歌いました。ちなみにメヘレンは大きなコンサートホールもありませんので、大規模なコンサートは今でもこの、メヘレンの聖ロンバウツ大聖堂で行なわれます。
ロデウェイクは19歳の若さでルーヴェンの聖ペトロ教会の聖歌隊指揮者に抜擢されるなど、音楽家として出世街道に乗ります。その後、リエージュの大聖堂の聖歌隊で歌い始めた1年後、ドイツはボンの宮廷聖歌隊の仕事を得てそちらに移住します。初めはバス歌手として歌いましたが、1761年にはそこの宮廷学長に昇進します。
我々の知っているルートヴィッヒは彼の孫にあたります。残念なことにルートヴィッヒが3歳の時にロデウェイクは亡くなってしまいますが、おじいさんの音楽の才能が隔世遺伝しルートヴィッヒの後の大成のきっかけなったことは間違いありませんね。
©Aoitori Belgium
名前にもベルギーの血の証が
そのほかにもベートーヴェンのルーツがベルギーだったことがわかるのが彼の名前のスペルです。英語のof に当たる言葉はドイツ語ではvon 。例えばオーストリア・ザルツブルク出身の大指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンのスペルはHerbert von Karajan、VONです。一方でベートーヴェンはLudwig Van Beethoven そう、VANはオランダ語のスペルなのです!
ベートーヴェンがベルギービール飲みながら、ベルギー式フライドポテトを平らげ、デザートにベルギーワッフルとベルギーチョコレートで締める。そんな妄想も働かせながら彼の音楽を聴くのも悪くはないかもしれません。
©Aoitori Belgium
日時: 2020年4月12日(日)13:00開演
会場: サンポートホール高松 第1小ホール 北浜alleyチャペル(香川県高松市サンポート2)
料金: 1日通し券 一般5,000円/学生2,500円
1公演 一般3,000円/学生1500円
(当日券500円増し)
主催: せとうち国際古楽祭実行委員会
問合せ: 080-5665-7050
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