PMFもついにこの夏の開催を中止~エッシェンバッハの言葉を、いま改めて振り返る
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
クリストフ・エッシェンバッハ(ピアノニスト、指揮者)©LucaPiva 写真提供:PMF組織委員会
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、各種コンサートやオペラ、そして音楽祭が、次々と中止に追い込まれている。今日(4月3日)はついに、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌)がこの夏の開催中止を発表した。
1990年にバーンスタインの提唱により始まって以来、31年目を迎えたPMFは、札幌市の強い意思により、強い継続性を持つ、日本最大級の国際教育音楽祭である。2020年は第6代芸術監督ワレリー・ゲルギエフのもと、7月10日から8月3日までの開催が予定されていた。
早々にPMFがこの夏の開催中止を決めたのには理由がある。
PMFの核をなすPMFオーケストラは、オーディションによって選抜された、世界中の優秀な音楽学生たちから成る。それは毎年20か国以上から集まってくる。PMF教授陣も、ウィーン・フィルやベルリン・フィルをはじめ、欧米を中心に世界中の名演奏家たちが集まってくる。
PMFの開催の可否は、日本国内だけではなく、世界の情勢と直接つながっている問題なのだ。
1990年代のPMFを支えた最大の功労者の一人、指揮者・ピアニストのクリストフ・エッシェンバッハは、昨年札幌で取材した際に、こんなことを言っていた。
「バーンスタインが私に教えてくれたこと、それは――私たちの平和のためのミッションを、音楽が持っているということです。音楽家は、平和をつくる使者(Peace maker)なのです。これは私の哲学でもあります」
いま世界を覆いつくしている疫病は、戦争にも等しい暴力を人類に対して及ぼしている。が、今一度、音楽関係者は心にとめるべき言葉ではないだろうか。
音楽家は、「平和をつくる使者」としての役割を持っている。
その役割は、決して無くなることはない。
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