パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)/特集「音楽祭が熱い!」

バーンスタイン最期の理想が詰まった音楽祭「PMF」——未来に向かう若者たちの音楽を北海道の大地で満喫する

イベント
2019.06.21

アメリカの指揮者・作曲家、レナード・バーンスタインの発案で始まった「パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)」は今年で30回目。ひと夏限り、世界中から集まった若き才能で編成されるPMFオーケストラは、数々の名演を作りあげてきました。

今年も豪華な指揮者や出演者たちを迎えてのピクニックコンサートや、PMF初演奏となるマーラーの交響曲第8番など聴きどころ満載! 涼しい札幌で、熱く過ごせる音楽祭をONTOMOエディトリアル・アドバイザーの林田直樹さんがナビゲートしてくれました。

ナビゲーター
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家
林田直樹
ナビゲーター
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

30年変わらない柱とは

いよいよ今年で第30回を迎えるパシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)は、日本のみならずアジア・環太平洋全域、ひいては世界でもっとも重要な音楽祭のひとつである。なぜならPMFは単なるクラシック音楽のお祭りではなく、音楽と人間の未来にかかわる、壮大な取り組みなのだから。

「国際教育音楽祭という、時間がかかるけれど意義のある柱はぶれていないと思います。バーンスタインが創始したときから掲げたものは、いまも引き継がれています」(PMF制作スタッフ)

バーンスタインが描いた未来の姿

20世紀最大の指揮者・作曲家・教育者のレナード・バーンスタイン(1918-90)が、人生に残された限りある時間を何のために使うかを考え抜いたあげく、そこで出した結論が、「若い人たちと音楽について自分が知っていること、人生と音楽の関係について、すべてを分かち合うこと」であった。その献身と情熱の対象こそがPMFである。

PMFの最大の特徴は、毎年、世界各国からオーディションによって選ばれた若手の精鋭演奏家を集め、ゼロからPMFオーケストラを作り、ひと夏の間、世界の一流指揮者やオーケストラ奏者たちと一緒になって、音楽づくりに集中することにある。

世界中からオーディションを経て集まった若者たちで構成されるPMFオーケストラ。

それは普通の学生オーケストラとは根本的に異なる、とてつもない可能性に満ちた共同体である。国も言葉も考え方も違う、初めて会う若い人たち同士が、コミュニケーションの取り方ひとつにも苦労しながら、意見交換をし、話し合いながら、やがてまとまり、ひとつの音楽を作っていき、友情を育んでいく。その現場に接して、ウィーン・フィルやベルリン・フィルをはじめとする世界的オーケストラ奏者たちが、そして指揮者が、持てるすべてを伝えていく。

するとその瞬間、世代や民族を超えて受け継がれていくべき、かけがえのない音楽の本質が、聴衆にもはっきりとわかる形で現れるのだ。

「ここで学んだ若手音楽家たちが、世界で活躍し始めて、PMF以外の場所でどんどん広くつながっていっていますが、音楽でつながる=平和、これこそバーンスタインが描いていた未来の姿のきっかけなのだと思います」(PMF制作スタッフ)

30回記念はマーラーの大作“千人の交響曲”を

今年の聴きどころとして、第一に、バーンスタインの死後、PMFを守り育てた功労者の一人で、PMFアカデミー生たちからも人格・知性・音楽のすべてにおいて尊敬の的となってきたクリストフ・エッシェンバッハが久しぶりに登場し、得意のマーラー「交響曲第8番」を指揮することが挙げられる(PMFプレミアム・コンサート/7月20日21日)。

ピアノの名手でもある指揮者のクリストフ・エッシェンバッハ ©LucaPiva

“千人の交響曲”というニックネームを持つほど巨大な編成を誇る本作の演奏には、400名以上の合唱団、声楽ソリスト8名が必要となるが、日本が誇る世界的メゾソプラノ藤村実穂子、そしてロシア最高のバス、ミハイル・ペトレンコを含む、強力な布陣が組まれている。

PMFにとってマーラーは特に大切である。バーンスタインがもっとも得意にしていたというだけではない。若い魂が世界の真実に触れたときの“おののき”という意味で、マーラーほどPMFの本質に近い作曲家はいないからだ。これまでPMFは何度もマーラーを取り上げてきているが、「第8」は史上初めてであり、まさに第30回記念にふさわしい。

グスタフ・マーラー:交響曲第8番
レナード・バーンスタイン指揮 ロンドン交響楽団

なお、エッシェンバッハは、自ら強く推す若手気鋭のフルート奏者スタティス・カラパノスとのデュオ・リサイタルでピアノを弾く(7月17日)ので、これも楽しみである。

ギリシャ生まれのフルーティスト、スタティス・カラパノス @Miroslava Dermendjieva

札幌の新ホールhitaru、サントリーホール、ミューザ川崎でも楽しめるPMF

PMFは、北海道という涼しい土地柄、野外コンサートにふさわしい。本当の意味で夏フェスを楽しみたいと思ったら、PMFのピクニックコンサートで、緑の芝生に寝そべりながら演奏を聴くのが一番である。

今年は、PMF第1回でバーンスタインの招きで参加した女性指揮者マリン・オルソップが、2004年に改修された札幌芸術の森・野外ステージでのピクニックコンサートに29年ぶりに登場する(7月13日)。

バーンスタインの教えを受けたマリン・オルソップ ©Grant Leighton

第30回記念のGALAコンサートも札幌コンサートホールKitaraで行なわれる(PMF GALAコンサート/7月14日)。KitaraはいまのPMFのメイン会場で、中島公園の美しい緑のなかに佇む、日本最高のコンサートホールのひとつ。札幌に行ったら、クラシック音楽ファンは必ず訪れるべき場所だ。

なおPMFの会場のひとつとして、昨年オープンして話題の札幌文化芸術劇場hitaruも加わった。PMF hitaru スペシャル・コンサート7月28日)もぜひチェックしておきたい。

最後には、芸術監督ワレリー・ゲルギエフが登場、この6月にチャイコフスキー国際コンクールの新設された木管部門優勝者をソリストにした協奏曲、そしてショスタコーヴィチの最強のエネルギーが炸裂する問題作、「交響曲第4番」というコンサートを指揮する(PMFオーケストラ演奏会7月31日:札幌コンサートホールKitara8月1日:サントリーホール2日:ミューザ川崎シンフォニーホール)。例年にもまして熱い演奏が繰り広げられることは間違いない。

メイン会場である札幌コンサートホールkitaraでは、オーケストラ公演のほかにも、オープンリハーサルや、指導者として参加するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバーによる室内楽公演などが行なわれる。

札幌から世界へ、未来に繋がるPMF

PMFは昔もいまも札幌の誇りである。

かつて1972年の札幌オリンピック以来、札幌には国際的なイベントというものがほとんどなかった。そこへやってきたのがPMFである。札幌の名を世界に発信することができる、しかも平和の使徒であり20世紀を代表する偉大な音楽家でもあるバーンスタインの精神を道しるべとしながら——。

これを継続し守り育てていくことは、札幌が世界に名の知れた平和文化都市として存在感を高めていくうえで、またとない未来への投資にもなりうるのである。札幌の誇りとしてのみならず、日本が世界に誇れるPMF、ぜひ一度は夏の北海道旅行を兼ねて訪れてみてはいかがだろうか。

音楽祭information
PMF2019

会期: 2019年7月6日(土)~8月2日(金)

会場:  札幌コンサートホール Kitara、札幌芸術の森・野外ステージ、苫小牧市民会館、函館市芸術ホール、えぽあホール(江別市)、幕別町百年記念ホール、札幌市清田区民センター、奈井江町文化ホール、札幌文化芸術劇場hitaru、サントリーホール、ミューザ川崎シンフォニーホール ほか

詳細はこちら

ツイートする
シェアする

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ