閉鎖的なクラシックを批判したウィーンの反逆児、フリードリヒ・グルダ作曲の交響曲
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
クラシックだけでなく、クロスジャンル的な音楽活動で数々の名演奏を残したウィーン出身のピアニスト、フリードリヒ・グルダ(1930-2000)作曲の「交響曲」が発掘された。
シュトゥットガルト放送響をグルダ自らが指揮した1970年11月20日のセッション録音で、ビッグバンド・ジャズの艶やかな響きに、クラシックの古典派の交響曲の格調高さをブレンドしたような、いかにもグルダらしい楽しさ満点の楽曲である。
『グルダ:交響曲 ト長調』
今も思い出されるのは、生前のグルダが1993年11月に来日した際の記者会見で、
「シェーンベルクよりもマイルス・デイヴィスやデューク・エリントンのほうがセクシーだし、ホロヴィッツよりもビル・エヴァンスのほうが女性にもてる」
と言い放ったことである。あのときのグルダは旧来のクラシック音楽の閉鎖性を辛辣に批判し、ジャンル横断的な音楽プロジェクト「パラダイス・アイランド」への意欲を語るなど、まるで独演会のようだった。
もちろん、それが許されるのも、グルダが天下無双のモーツァルト弾きだったからだ。
フリードリヒ・グルダのTOPトラック
東京での3回のコンサートにはすべて通った。
エネルギッシュで、自由で、即興的で、スリリングで、ぴちぴちと弾力性ある音楽に酔いしれた。儀礼的な所作は一切なし。熊のようにのそのそと歩き回りながら、演奏の合間に客席に気さくに話しかける。協奏曲では、ゲンコツを突き出したり、手をひらひらさせたり、ガッツポーズをとったりするような滅茶苦茶な指揮なのに、やはり本物の音楽家だからなのだろう、ちゃんとオーケストラがついてくる。
なんて型破りで、かっこいい音楽家だったことだろう!
生前のグルダが絶賛していたジャズ・ピアニスト小曽根真さんが、2018年に東京フィルの定期でグルダの傑作「コンチェルト・フォー・マイセルフ」を演奏したように、いまもなお、グルダの楽曲を取り上げようという動きは後を絶たない。今回の「交響曲」も、いつか日本でも聴けるときが来るかもしれない。
グルダの「コンチェルト・フォー・マイセルフ」 ※映像は1988年ミュンヘン・フィルとの演奏
1993年の来日リサイタルでも、聴衆のリクエストに応じて演奏されたグルダの代表的名曲「アリア」 ※映像は1988年ミュンヘンでの演奏
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