このオーケストラ、何をしでかすか?! 生まれたて「ジェネオケ」の型破りな挑戦
2022年の締めくくりとなる12月、新しいオーケストラの音色が響く。オーケストラの名前は「Japan General Orchestra(ジャパン・ジェネラル・オーケストラ)」(通称:ジェネオケ)。今年の3月に発足したばかりだが、メンバーには現在活躍中の若手奏者の名前も並び、指揮者として大植英次、ソリストには神尾真由子といった世界的アーティストがゲストとして登場する。
一体何が起こるのか、ぜひ詳しく伺いたい……ということで、今回は「ジェネオケ」の創設者である結月美妃さん、コンサートマスターを務めるヴァイオリニストの佐久間聡一さん(元広島交響楽団第1コンサートマスター)にオーケストラや公演、今後の展望を尋ねた。
国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...
オーケストラ発足のきっかけはマーラーの「交響曲第6番」だった
――結月さんは、これまでコンサートのプロデュースやマロオケに携わってこられましたが、突如オーケストラを立ち上げたのはなぜだったのでしょうか。
結月 年明けに、在京のプロオケ(プロのオーケストラ)に、マーラー「交響曲第6番」の演奏依頼をしたことがきっかけでした。残念ながらそれはスケジュールの問題などがありうまくいかなかったのですが、それで“自分でオーケストラを作ったほうが早いのでは”と思い立ったのです。すぐに20年来のお付き合いがあり、絶大な信頼を寄せる佐久間さんにコンサートマスターをしていただこうと思い、電話をかけました。
佐久間 3月末に退団したオーケストラの引退公演後、すぐのタイミングでお電話をいただきました。オーケストラをゼロから作ると聴いて驚きましたが、結月さんの行動力とスピード感で、あっという間に実現していきましたね。
――メンバーにはすでにソリストやオーケストラで活躍している若手奏者も集まっています。
結月 以前も「マロオケ」(NHK交響楽団第1コンサートマスター篠崎史紀が率いる、国内プロオケのトップ奏者によるオーケストラ)を主催していたことがあったので、その時のメンバーや佐久間さんの推薦で集まっていただきました。
佐久間 新しいことを一緒に楽しんでくれる、また刺激的な音を一緒に奏でられるメンバーに集まってもらいました。
――「Japan General Orchestra」という名前の由来を教えてください。
佐久間 あまり凝り過ぎず、一般になじみやすい名前にしたいというのはありましたね。
結月 そこで出てきたのが”general”でした。様々な意味を持つ言葉ですが、“普遍的な”というところに惹かれました。色々なことに臨機応変に対応したいという想いも込めています。
神尾真由子さんに書いた“ラブレター”
――記念すべき第1回の曲目は神尾真由子さんをソリストに迎えてのヴィヴァルディ《四季》、ピアソラ《ブエノスアイレスの四季》ですね。
結月 私は神尾さんのことが大好きで、どうしてもソリストにお迎えしたかったんです。生まれたばかりのオーケストラに迷われたのか、依頼を出したところ、最初はなかなかお返事をいただけませんでした。
そこで、“ぜひあなたの音を新しいお客様に届けていきたい。そうしていくことがこれからのクラシック音楽界にはとても重要なことだから”と熱烈なラブレターを書いたところ、了承のお返事をいただけたのです。この10年だけでも一番嬉しい出来事でしたね。
また今回はコレルリの協奏曲もプログラムの最初に入れており、この曲のソリストは佐久間さんにお願いしました。純粋な響きの美しい楽曲で、お客様に“ジェネオケの音色はこれだ!”というものを伝えられるかなと思います。
《第九》は年末の“風物詩”ではない! 最高の演奏者と共に真っ向勝負で挑む
――二つ目の公演は《第九》ですね。12月は日本中で多くのオーケストラがこの曲を演奏していますが、あえて挑戦されたのはなぜですか。
結月 ある意味、クラシック界に“殴り込み”をかけるようなつもりです。日本はあまりにも《第九》を消費しすぎている。本来この作品は複雑で深いメッセージが込められたものですから、何回も連続で演奏するような楽曲ではないと思うのです。だからこそ、我々はたった1回の公演にすべてを注ごうと。
佐久間 年末の《第九》、本当に多いですよね。もちろん私自身、これまで毎年すべての演奏会で全身全霊をささげた演奏をしてきましたが、それにしても当たり前のように多くの公演が行なわれすぎています。
そこに、生まれたばかりで、どんな音が生まれるのか未知数のオーケストラだからこそできるものを投げかけたいなと。“こいつら何をしでかすんだ!?”と面白がってほしいですね。
結月 やるからには、最高のものをお届けしなくては意味がありません。だからこそ指揮者には圧倒的なカリスマとエネルギーをもつ大植英次さん、ソリストには日本を代表する歌手である馬原裕子さん(ソプラノ)、富岡明子さん(アルト)、渡辺康さん(テノール)に山下浩司さん(バリトン)をお招きします。そして合唱も一流のソリストたちによる合唱団、東京オペラシンガーズの皆さんにお願いしました。
「生きてることに、歓喜しよう」――《第九》にジェネオケが込める想い
――“本当にいいもの”を届けることでクラシック音楽を多くの人に愛されるものにしたい、というお二人の想いが伝わってきました。
結月 今、クラシック音楽を普及させるために、有名曲をやわらかい雰囲気で演奏して“敷居を下げる”ことに躍起になっている風潮がありますよね。しかし本来クラシックを聴いて感動するのはそこではない。仮に曲を知らなくても、本物の良い演奏を聴けば誰もが“ゾクッ”とするはず。我々はその瞬間を味わうための“接点”を作っていきたいのです。
辛いこと、苦しいことが多い現代ですが、そういう時だからこそ、音楽に触れて、生きていることの喜びを味わっていただけたらと思っています。
Japan General Orchestra の2つの旗揚げ公演のうち、世界的指揮者の大植英次が登壇し、ソリストと合唱にも一流の歌手が集って一夜限りの《第九》を上演する、「大植英次 第九2022」に10組20名をご招待します。
新しいオーケストラの誕生を、一緒に祝福しよう!
日時:2022年12月12日(月)19:00開演
会場:東京オペラシティコンサートホール
出演:大植英次(指揮)、Japan General Orchestra(コンサートマスター:佐久間聡一)、馬原裕子(ソプラノ)、富岡明子(アルト)、渡辺康(テノール)、山下浩司(バリトン)、東京オペラシンガーズ
曲目:ベートーヴェン《エグモント序曲》「交響曲第9番《合唱付き》」
応募方法:2022年11月28日(月)23:59までに必要事項をご記入のうえ、こちらからご応募ください。
日時:2022年12月7日(水)19:00開演
会場:紀尾井ホール
出演:神尾真由子(ヴァイオリン)、Japan General Orchestra 弦楽チーム(コンサートマスター:佐久間聡一)
曲目:コレルリ「合奏協奏曲第4番、第8番《クリスマス協奏曲》」、ヴィヴァルディ《四季》、ピアソラ《ブエノスアイレスの四季》
チケット:SS席¥9,500/S席 ¥8,000/A席¥7,000/B席¥6,000
問合せ:ジェネオケ窓口:070-2015-2694/support@japan-go.tokyo
日時:2022年12月12日(月)19:00開演
会場:東京オペラシティコンサートホール
出演:大植英次(指揮)、Japan General Orchestra(コンサートマスター:佐久間聡一)、馬原裕子(ソプラノ)、富岡明子(アルト)、渡辺康(テノール)、山下浩司(バリトン)、東京オペラシンガーズ
曲目:ベートーヴェン《エグモント序曲》「交響曲第9番《合唱付き》」
チケット:SS席¥9,500/S席 ¥8,000/A席¥7,000/B席¥6,000
問合せ:ジェネオケ窓口:070-2015-2694/support@japan-go.tokyo
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