ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの延期とアメリカ事情
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先日、2021年開催予定だったヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが、1年延期となることが発表されました。新しい日程は、2022年6月2日〜18日。
ピアニスト、ヴァン・クライバーンとコンクールの紹介動画
クライバーン財団CEOのジャックさんが、早々に決断した理由にあげているのは、まず、参加者の目標を明確にしてあげるため、また、コンクールがキャリアを築く場であることを考えれば、入賞者ツアーをちゃんと行なえる2022年としたほうがよいため。
加えて、ピアニストにとっては「パッションを分かち合う聴衆の存在」が大切なので、お客さんが入れられる状況を待って開催したいため。
延期により、スポンサーやパトロン、そしてもちろんピアニストにとって、十分な価値のあるレベルで開催できる、ということだそうです。
クライバーン財団CEOのジャックさんによるコメント
パトロンという言葉が出てきて、地元の富裕層に支えられているこのコンクールならではの事情も想像しました。多くのコンクールは国や地方自治体の資金中心に運営されていますが、クライバーンは少し特殊です。
期間中は、パトロンなどを招いた豪華なパーティやイベントがたびたび開催されます。ソーシャルディスタンスを気にしている間は、パーティもままならないですし、そもそも、経済的打撃をうけて過去同様の支援ができないパトロンもいるかもしれない……。
アメリカのワクチン供給に関しては、大統領選挙を前にしたトランプ氏の発言がたびたび取りざたされていますが、選挙への影響はさておき、いち早く、ワクチンや薬によって状況が落ち着くことを祈るばかりです。
それで思い出したこと。
前回のクライバーンコンクールは2017年、トランプ氏が大統領に就任して半年後だったんですね。当時はまだ、本当にトランプさんになっちゃった! という雰囲気だったように思います。
このコンクール中、私はアメリカ人の知人宅に居候していました。この家主氏、以前日本に赴任していたこともあるジャーナリストで、ときどき妙な日本語を口走り、私が遠いホールに歩いて行くといったときには、「ヒザクリゲですねー」と言ってきたことも。膝栗毛を日常会話で活用してる人、日本人でも見たことない……。
さて、家主は当時アンチ・トランプ派でした。ある日、トランプ大統領が何かの法案を無理に通したことを批判し、でも施行は4年後だから、その頃もうトランプはいない、というので「でも、あなたたちアメリカ人は次も彼を選ぶかもしれないでしょ?」と言ったら、しばし黙ったあと、「オヌシ、イヤな日本人!!」と言ってきました。日本刀で斬られるかと思いました。
当時はちょっと意地悪な冗談に聞こえたこの言葉も、再選の可能性も大アリの今となっては、冗談でもなんでもないわけで。世の中、先のことはわからないものです。
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