金子三勇士がハイリスクな挑戦?「第九」ピアノ版を自分の演奏録音との2台ピアノで
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
デビュー10周年を迎えたピアニストの金子三勇士さんが、「原点×挑戦」をテーマとしたリサイタルを3月5日(土)に行ないます。会場は、サントリーホール。
デビューの頃から、「日本を代表するサントリーホールで初めてリサイタルをするなら、そこにふさわしい充実した活動を重ねられたときにしようと決めて、大事にその機会をとっておいた」といいます。
取り上げるのは、日本とハンガリーにルーツを持つ彼が敬愛するリスト、そして、リストにとって特別な存在だった、J.S.バッハとベートーヴェン。パンデミックで社会活動がストップし、演奏会が不要不急といわれるなか、音楽家の存在意義について改めて考えるなかでたどり着いたプログラミングだそうです。
金子三勇士さんのトップトラック
テーマのうち、まず「原点」にあたる作品のひとつが、J.S.バッハの「インヴェンション」。
「久しぶりに弾いたら、その美しさに涙が止まらなくなりました。私自身もいろいろなフラストレーションや心配を溜め込んでいたのかもしれません。人はストレスを抱えたとき、無意識に“原点”を求めるのでしょう」
加えて、モーツァルトからピアノ・ソナタ第11番。「終楽章の《トルコ行進曲》もいいけれど、特別な美しさに癒される第1楽章をサントリーホールの響きでみなさんに聴いてほしい」という想いからの選曲です。
そして後半は、ベートーヴェンの交響曲第9番より《歓喜の歌》。リストのピアノ編曲版をさらに金子さんがアレンジしたものを、なんとスタインウェイの自動演奏ピアノ「SPIRIO | r」に収録した自らの演奏との2台ピアノで披露します。
ハイレゾで録音・再生が可能なスタインウェイの自動演奏ピアノ「SPIRIO | r」とは?
「正統派のクラシックピアニストとして活動していくなかでも、やはり時代とともに変化していく部分、チャレンジする姿勢は必要です。昨年末、コロナ禍で合唱付きの『第九』が演奏しにくくなったとき、それならピアノ版の『第九』で《歓喜の歌》だけでも皆さんにお届けできたらと大至急練習し、コンサートで演奏しました。
ただ、この編曲版って、とにかく尋常でない難しさで、精一杯演奏して聴いた人に残るのは『大変そうだった』という印象だけ。
そこでいっそ、最新テクノロジーの力を借りることにしました。さらに、ベートーヴェンの時代とは異なる現代ピアノならではのアレンジを加えて、より原曲を思い浮かべていただけるような音楽を目指します」
まさに世界初の「挑戦」。当日どうなるか、ご本人にもまったく想像がつかないそうで、「大舞台でそんな挑戦をすることで、多くの方が何かを感じてくださるきっかけになったらいいなと思います。ハイリスク、ハイリターンです(笑)」。
社会における音楽家としての役割を果たそうとする生き方は、まさに金子さんが敬愛するリストのスタイルそのもの。10周年の節目に、その心意気を見せてくれます。
日時: 2022年3月5日(土)19:00開演
会場: サントリーホール 大ホール
出演: 金子 三勇士(ピアノ)
曲目:
~ 原点×挑戦 ~
- バッハ:インヴェンション(全15曲)BWV772~786
- モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調《トルコ行進曲付き》K.331(300i)
- ベートーヴェン(リスト/金子三勇士編曲):フロイデ~交響曲第9番 ニ短調 Op.125《合唱》から第4楽章(特別編・2台ピアノ)※世界初演
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