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2019.12.18
名物楽団員にもアンケート! 大阪フィルハーモニー交響楽団

「感動を倍返しにしてくれる“ええ人たち”のオーケストラです」~音楽監督・尾高忠明が語る、大阪フィルのカラーとは?

グローバル化が進むなか、ローカルを大切にしたい! と思わせてくれるオーケストラの代表格かもしれない。大阪人が誇る老舗、大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽とは? 来たるシーズンのイチオシとは? 名物楽団員にもアンケート!

取材・文
池田卓夫
取材・文
池田卓夫 音楽ジャーナリスト@いけたく本舗

1958年東京都生まれ。81年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業、(株)日本経済新聞社へ記者として入社。企業や株式相場の取材を担当、88~91年のフランクフルト支...

写真:ヒダキトモコ

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目次

音楽監督・尾高忠明にきく!

「朝比奈のオーケストラ」のDNAが流れる老舗

日本を代表するマエストロの一人、尾高忠明(1947~)は、1998年から2015年まで札幌交響楽団のシェフ(常任指揮者→音楽監督、現在は名誉音楽監督)を務めたあと、「東京も名古屋もすっ飛ばして大阪に来た」と笑う。大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)では2017年4月から1年間のミュージック・アドヴァイザーを経て2018年4月、第3代音楽監督に就いた。

大阪フィルハーモニー交響楽団の第3代音楽監督、尾高忠明。

大フィルは1947年、第二次世界大戦の終結を受けて満州(現在の中国東北部)から引き揚げてきた朝比奈隆(1908~2001)を中心に京阪神のミュージシャンが集まり、関西交響楽団として発足した。朝比奈は2001年に93歳で亡くなるまで音楽監督(最後は音楽総監督、没後は創立名誉指揮者)の地位にあった。2003~2012年に米国で頭角を現した大植英次(1956~)が第2代音楽監督(現在は桂冠指揮者)として君臨したあと、2014~2017年は井上道義(1946~)が首席指揮者でつなぎ、盟友の尾高へと引き継いだ。70年あまりの歴史の間に音楽監督は3人、しかも朝比奈が54年間を占めるので、大フィルは今も「朝比奈のオーケストラ」の風情を色濃くたたえている

朝比奈隆 指揮・大阪フィルのトップトラック

尾高忠明の柔軟さで、大フィルの個性を残していく

尾高は朝比奈時代に客演したとき、「DNAが流れているな。しかも良いDNAが、と思った」という。「老舗というのは難しい面もあるけど、素晴らしい枠組みは尊重しなければならない」と考える尾高は、音楽監督就任後も「朝比奈カラーを“当分”ではなく、“ずうっと”残す」を基本に「長い歴史の良いところは残し、悪いところは直す」と、柔軟な構えで新たな音楽づくりに取り組んだ。

幸いなことに、戦前の京都帝国大学在学中に亡命ロシア人音楽家の薫陶を受け、ドイツとロシアの音楽を中心に据えた朝比奈と、ウィーンに留学した尾高のレパートリーは重なる部分が多い。ショーマンシップにも秀でた大植、井上のあとに「僕がやってきて、大人しくなるとの予想は見事に覆ったと思います」

尾高はその理由を「大フィルの楽員たちが朝比奈時代から脈々、自分たちの力で育んできた個性」に求め、「普通のオーケストラよりもダイナミックレンジが広く、フェスティバルホールの大空間を鳴らし切る気持ち良さがあるのです」と指摘する。

大阪フィルの本拠地、フェスティバルホール(大阪・中之島)。座席数2700とスケールが大きく、エントランスから続く内装も贅沢な雰囲気。写真は2019年10月の第532回定期演奏会。©飯島隆

大阪ならではの“国民性”が、ええ音楽を支えている

実は、朝比奈も尾高も大阪ではなく、首都圏、東日本の出身だ。

大フィルのサウンドは「もしかして関西人気質、関西弁と深く関係しているのではないだろうか?」と、尾高は考える。「大阪の住まいであるタワーマンションのエレベーターに乗っても、沈黙はありえません。東京では皆、黙って天井を見ていますが」

同席した福山修演奏事業部長は自身が関西人だけに「黙っていられないサービス精神なんですよ。寝ているお客様がいらしたら、ドカーンと大きな音を出して目覚ましてあげようとか、いつも考えています」と、パワフルな大フィル・サウンドの意外な震源を説明する。「指揮者が何か仕掛けたら倍返しで応える“国民性”が、ええ人のええ音楽を支えているのです」と、尾高も全然サマにならない関西弁で同意した。

「今年(2019年)5月から2か月間、前立腺癌の治療で休養すると発表した直後、ザ・シンフォニーホールで大フィルの指揮台に現れると、客席から『頑張って!』の声が飛んできました。復帰演奏会で『お帰りなさい!』を期待したけど、それはなかったなあ」と尾高。

福山部長によれば「大阪でも珍しい光景」であり、いかに大阪の聴衆が「尾高時代の大フィル」に期待しているかの証しだろう。

尾高忠明 指揮・大阪フィル

楽団員にきく! 新シーズンのベスト・プログラム

「休日は何をしていますか?」「とっておきの練習方法は?」「本番前のジンクスは?」のいずれかの質問にお答えいただく形で自己紹介。そして、来たる2020/2021年シーズンに楽しみにしているプログラムをご紹介いただきました。

プライベート写真にもご注目!

ソロ・コンサートマスター 崔 文洙(チェ・ムンス)

Q. 休日は何をしていますか?

オーケストラでの活動は、精神的にも肉体的にもとてもタフで、絶妙なバランス感覚が常に求められます。良いコンディションを維持するためにも、しっかり食べて、なるべく睡眠時間を確保することを心がけています。

趣味は鉄道(乗り鉄、鉄道模型)。最近は車輌を走らせて楽しむ時間がほとんどありませんが、たまの休みの日に走らせて癒されています。

写真:崔 文洙

Q. あなたにとって、新シーズンのベスト・プログラムは?

第537回 定期演奏会

日時:2020年4月10日(金)19時開演、11日(土)15時開演

会場:フェスティバルホール

曲目:ベートーヴェン/ミサ・ソレムニス ニ長調 作品123

指揮:尾高忠明

独唱:並河寿美(ソプラノ)、清水華澄(アルト)、吉田浩之(テノール)、加藤宏隆(バリトン)

合唱:大阪フィルハーモニー合唱団

詳しくはこちら

すべての定期がとても魅力的なプログラムだと思いますが、あえて一つのプログラムを選ぶとしましたら、4月のシーズンオープニングの定期、ベートーヴェン作曲「ミサ・ソレムニス」を推したいと思います。

大阪フィルは来年4月、尾高マエストロが音楽監督に就任して3年目を迎えますが、ベートーヴェン・ツィクルスでの全曲演奏会を経て、この崇高なるベートーヴェン最晩年の最高傑作の一つである「ミサ・ソレムニス」を演奏いたします。

また、共演する大阪フィル合唱団も、福島章恭さんの指導の下、素晴らしい飛躍を遂げています。

記念すべきベートーヴェン・イヤーでの大阪フィルの定期演奏会で「ミサ・ソレムニス」を演奏することは、僕ら楽員にとっても最高に幸せなひと時ですし、会場の皆さまとこの貴重な時間を共有できるのをとても楽しみにしております。

フルート 1番奏者 野津 臣貴博(のづ・みきひろ)

Q. とっておきの練習方法は?

最近ハマっているのは、通勤中に350mlの紙パックの牛乳を飲み干したあと、そのストローを口にくわえて、できるだけ時間をかけて息を長く吸い、そしてまた、できるだけ長い時間を掛けて息を吐き出す呼吸訓練です!

強弱や音程のコントロールに関わる唇の筋肉のウォームアップにも大変役立ち、何よりも他の事をやりながら集中せずにできるのが嬉しいです! 注)電車の中ではやりません!

Q. あなたにとって、新シーズンのベスト・プログラムは?

第541回 定期演奏会

日時:2020年9月25日(金)19時開演、26日(土)15時開演

会場:フェスティバルホール

曲目:武満徹/オーケストラのための「星・島」、三善晃/交響詩「連禱富士」、マーラー/交響曲「大地の歌」

指揮:沼尻竜典

独唱:クリスタ・マイヤー(アルト)、シュテファン・ヴィンケ(テノール)

詳しくはこちら

沼尻さんの振る定期です!

今後10年~20年先までを、確実に期待できる指揮者の大フィル定期初登場が今から楽しみでなりません!

マーラーの「大地の歌」は、言うまでもなくマーラー最晩年の最高傑作の内の一つであり、ありとあらゆる歌曲に通じていて酸いも甘いも味わい円熟味を増して来た沼尻さんが、どんな解釈(料理)をしてくるのかが本当に楽しみです♪

沼尻さんは学生時代、作曲科に在籍をしていました! そのときに師事していたのが、当時最も活躍していた三善晃氏です。作曲家としてもたぐいまれな沼尻竜典が、満を持して挑むこの三善作品、果たしてどんな景色を見せてくれるのか?

たまたま同世代を生きる一音楽家として、これまた楽しみである事この上ありません!

トランペット 1番奏者 篠﨑 孝(しのざき・たかし)

Q. 本番前のジンクスは?

演奏前の決まりごとは特に決めていません。

昔は決まったパンツを履く、などしていましたが、洗濯の都合などで生乾きで演奏しなければならなくなったりするので、今はできるだけいつも通りを心がけています。

最近は子どもと一緒に遊ぶのが、とてもリラックスできる時間です。子どもの無邪気な笑顔は大人のダークな世界から解き放ってくれます(笑)。

Q. あなたにとって、新シーズンのベスト・プログラムは?

第543回 定期演奏会

日時:2020年11月13日(金)19時開演、14日(土)15時開演

会場:フェスティバルホール

曲目:グレース・ウィリアムズ/海のスケッチ、マーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調

指揮:尾高忠明

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来年度の大阪フィル定期のラインナップですが、シャルル・デュトワさんの「ペトルーシュカ」、尾高忠明音楽監督の「マーラー5番」、大植英次さんの「ツァラトゥストラはかく語りき」など、トランペット吹きとしては、なかなかしびれるプログラミング。

出番の関係で僕がどの曲を吹くことになるかわかりませんが、やはり尾高音楽監督のマーラー5番は、とても重要なプログラムだと思います。

尾高監督が就任されて大阪フィルが変わってきているのはもちろん、ここ数年、木管楽器、金管楽器に新しいメンバーがたくさん入ってきたことによって、大阪フィルはさらに成長しています。伝統のサウンドを継承しつつ、新しいことにチャレンジしていくことはとても大切なことです。

マーラー5番は、トランペット吹きにとって特別なレパートリーのひとつです。トランペットのソロはもちろん、現在の大阪フィルのサウンド、大阪フィルの音楽を、お客様にお届けできればと思います。

取材・文
池田卓夫
取材・文
池田卓夫 音楽ジャーナリスト@いけたく本舗

1958年東京都生まれ。81年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業、(株)日本経済新聞社へ記者として入社。企業や株式相場の取材を担当、88~91年のフランクフルト支...

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