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2022.10.04
新国立劇場バレエ団の新シーズンが新制作で10月21日に開幕!

吉田都芸術監督が《ジゼル》で演出デビュー〜日本発、正統なイングリッシュ・バレエを

左から池田理沙子、木村優里、吉田都、アラスター・マリオット、福岡雄大、速水渉悟。

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2022年で開場25周年を迎えた新国立劇場。この記念すべき年に、劇場専属の新国立劇場バレエ団がオープニングに選んだのは古典バレエの名作《ジゼル》。1841年の初演以来、改訂を経ながらロマンティック・バレエの代表作として世界中で愛されてきた名作を、新国立劇場バレエ団芸術監督として2年目のシーズンを迎えた吉田都が演出、新制作上演することが話題となっている。

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元英国ロイヤルバレエ団プリンシパルとして輝かしい舞台経験をもつ吉田は、演出に初挑戦。改訂振付には吉田のロイヤル時代の旧友で、2003年からは振付家としても活躍するアラスター・マリオット。衣裳にはメトロポリタン・オペラ、イングリッシュ・ナショナル・オペラ、シェイクスピア・グローブ座などで活躍し、新国バレエ《火の鳥》、《アラジン》で好評を博したデザイナーのディック・バードが名を連ねる。

「チーム・イングランド」といった様相のクリエイティブ陣がどんな舞台を生み出すのか。制作発表の様子をお届けする。

吉田 都
9歳でバレエを習い始め、1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞受賞。同年、英国ロイヤルバレエ学校に留学。84年、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ(現バーミンガム・ロイヤルバレエ)へ芸術監督ピーター・ライトに認められて入団。88年にプリンシパル昇格。95年に英国ロイヤルバレエへプリンシパルとして移籍、2010年に退団するまで英国で計22年にわたり最高位プリンシパルを務める。 日本国内では97年の開場記念公演『眠れる森の美女』をはじめ、新国立劇場バレエ公演での99年『ドン・キホーテ』『シンデレラ』、00年『ラ・シルフィード』、04年『ライモンダ』ほか、数多くの公演に主演している。 ローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務めるほか、後進の育成にも力を注いでいる。バレリーナとしての功績と共にチャリティ活動を通じた社会貢献が認められ、04年「ユネスコ平和芸術家」に任命される。12年には国連UNHCR協会国連難民親善アーティストに任命。 01年芸術選奨文部科学大臣賞、06年英国最優秀女性ダンサー賞、11年第52回毎日芸術賞など受賞多数。07年に紫綬褒章並びに大英帝国勲章(OBE)受賞、17年文化功労者、19年菊池寛賞。

吉田は、記念すべきシーズンに《ジゼル》を選んだ理由についてこう語った。

「(バーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督)サー・ピーター・ライトに一から教えていただいた作品。若いときから主役をいただいたり、すべての役を踊ってきて、とても大切に思っています。日本に戻ってきてからも、ジゼルを踊ってほしいというリクエストが一番多い役でした」(吉田)

《ジゼル》あらすじ

村娘ジゼルは、恋人アルブレヒトが実は貴族で婚約者もある身と知って衝撃を受け、錯乱のうちに死んでしまう。

後悔の念にうちのめされたアルブレヒトはジゼルの墓を訪れる。そこは若くして亡くなった乙女の精霊であるウィリたちが支配する夜の森。ウィリたちにとらえられ死ぬまで踊り続けるよう命ぜられたアルブレヒトを、ウィリとなったジゼルが身を挺して守り通す。

「これほど長く、原型を留めたまま踊り継がれている作品はなかなかない。それは《ジゼル》に、いま現在でも共感できる部分がたくさん入っているからだと思います。ダンサーにとっては、1幕の「生」と2幕の「死」、がらりと変わるので踊り甲斐があります。現在、アラスター(・マリオット)に1幕の演技を力を入れて指導いただいているが、1幕があってこその2幕。それぞれの登場人物の思いが伝わる。

サー・ピーター・ライトに《ジゼル》を開眼させたダンサー、ガリーナ・ウラノワは著書の中で、《ジゼル》には詩情、純潔、人間の知性、信頼、勇気などといったものがあると書いている。だからこそ、観客に力強いメッセージが伝えられる作品ではないでしょうか」(吉田)

マリオット、バードそれぞれ、膨大なリサーチをして今回の新制作に臨んでいるとのこと。吉田にとっても、お互いに意見が言いやすいチームで、吉田がこだわりをもつ「クラシックバレエ」を作り上げている最中だという。

会見にはアラスター・マリオットも登場した。

「MIYAKOとは親戚のような仲ですよ。舞台上でわたしは彼女の継母、姉、お父さん、結婚式の神父にもたくさんなりましたから(笑)。滅多に訪れない、よく知られたクラシック作品に新しく振付をする機会を与えてくれたことに感謝し、何より彼女の求めるものを具現化できることにワクワクしています。私たちは舞台・音楽的にも同じバックグラウンドを持っているので、とても仕事をしやすいのです」

アラスター・マリオット (Alastair MARRIOTT)
1988年に英国ロイヤルバレエに入団、92年ソリスト昇格。2003年よりプリンシパル・キャラクター・アーティストとなり、振付家としての活動を始める。ロイヤルバレエではフレデリック・アシュトン、ケネス・マクミランの振付作品や古典などに幅広く出演し、19年に振付に専念するため退団。ロイヤルバレエのために7つの一幕作品を振り付け、最新作である19年『アンノウン・ソルジャー』は、オリヴィエ賞候補となった。ロンドンの舞踊批評家協会最優秀クラシック振付家賞に3度ノミネートされ、15年『ツァイトガイスト』でロシアのゴールデン・マスク賞候補となる。英国ロイヤルバレエ学校でも3作品を振り付け、英国ロイヤルオペラ『ロシア皇后のスリッパ』でも振付を手掛けた。他に10年のロイヤル・バラエティー・パフォーマンスのためのパ・ド・ドゥの振付や、ダーシー・バッセルへの『キス』『赤い靴』の振付も手掛け、12年のロンドン・オリンピックの閉会式ではクリストファー・ウィールドンとも協働した。近年は、アンソニー・バンクス演出『アフター・ミス・ジュリー』でヘレン・ジョージへの振付を手掛ける。

「新国立劇場では初めての仕事ですが、ダンサーたちは新しいアイデアに熱心に対応してくれます。振付家の人生は、皆が同じゴールに向かって、一生懸命働けば、とても楽なものです。この劇場ではダンサーだけでなく、スタッフの皆さん全員が、一生懸命になってくれるのを嬉しく思っています。

今回の《ジゼル》には明確なゴールがあります。演技をすること、踊ること、衣裳から舞台装置に至るまで、すべてに正統なイングリッシュ・スタイルを受け継ぎながら作ること。そして、すべての人が舞台上のそれぞれの人物のことを知っているような、そんなしっかりとした、このバレエ団だからこそ創られる作品が出来上がってきていると感じています」(マリオット)

会見にはジゼルとアルブレヒトを踊る4人のダンサーも登壇、それぞれ意気込みを語った。

左から木村優里、福岡雄大、池田理沙子、速水渉悟

今回、プリンシパルに昇格して初めての主演となるのは、新国立劇場バレエ研修所出身の木村優里。

「マリオットさんのご指導によって舞台上の人物のキャラクターが明確になった気がしています。村人たちの境遇や生活感、アルブレヒトとジゼルの掛け合いがよりナチュラルで、古典的な部分は残しつつ、日常に近く演じられています。

吉田芸術監督と話していると自分の未熟さや、課題が見えてきます。理想はすべての物語の真髄を伝えられるようなダンサーになりたい。今回の《ジゼル》も、お客さまに共感していただき、物語をより深く理解していただける作品創りに努めたいと思います」(木村)

マリオットが「イギリスのスター」と評する吉田が演出する初めての作品。日本から世界に発信する、正統なイングリッシュ・スタイルを持った記念碑的な舞台を、ぜひ体感してみてはいかがだろうか。

2022/2023シーズン 新国立劇場開場25周年記念公演 新国立劇場バレエ団「ジゼル<新制作>」
公演情報
2022/2023シーズン 新国立劇場開場25周年記念公演 新国立劇場バレエ団「ジゼル<新制作>」

日時: 2022年10月21日(金)~30日(日)
会場: 新国立劇場 オペラパレス

振付: ジャン・コラリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ
演出: 吉田都
改訂振付: アラスター・マリオット
音楽: アドルフ・アダン
指揮: アレクセイ・バクラン、冨田実里
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト

ジゼル:小野絢子、柴山紗帆、木村優里、米沢唯、池田理沙子
アルブレヒト:奥村康祐、井澤駿、福岡雄大、渡邊峻郁、速水渉悟
ヒラリオン:福田圭吾、中家正博、木下嘉人、中島駿野
ミルタ:寺田亜沙子、根岸祐衣、中島春菜
ペザント パ・ド・ドゥ:池田理沙子、速水渉悟、奥田花純、中島瑞生、五月女遥、佐野和輝、飯野萌子、山田悠貴ほか新国立劇場バレエ団

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