インタビュー
2025.01.22
インターナショナル・ウィンド・サミット『ふたつのグラン・パルティータ』

福川伸陽の呼びかけで世界の名手が集結! ハッピーなライブを詰め込んだ新録音

取材・文
西村 祐
取材・文
西村 祐

音楽レヴュアー・フルート奏者。桐朋学園大学中退。演劇、モダンダンス、日本舞踊などの公演に音楽制作・フルーティストとして多く出演。評論家・レヴュアーとしては、『レコード...

©平舘平

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ソリストとして縦横無尽の活躍を見せるホルン奏者・福川伸陽の発案によって、世界の管楽器奏者たちが結集した「インターナショナル・ウィンド・サミット2024」。東京・名古屋・大阪で3日間にわたって行なわれた演奏会から初日のライヴを収録した『ふたつのグラン・パルティータ』が、このほどリリースされた。モーツァルトの名作「セレナード第10番《グラン・パルティータ》K.361(370a)」に加え、この日に初演された藤倉大による同名・同編成の新曲「グラン・パルティータ」も収録された注目の一作について、福川に話を伺った。

「インターナショナル・ウィンド・サミット2024」公演より
前列左からフィリップ・トーンドゥル、荒木奏美(オーボエ)、小山莉絵、助野由佳(ファゴット)、幣隆太朗(コントラバス)、金子平、松本 健司、(バセットホルン)、橋本杏奈、ニコラ・バルディルー(クラリネット)
後列左から熊井 優、福川伸陽、ユーフイ・チュアン、サボルチ・ゼンプレーニ(ホルン)
©平舘平

——豪華なメンバーですが、福川さんが声をかけて集められたのですか。

福川 全員が素晴らしい演奏家だというのは知っていて、仕事で一緒になった人も何人かいます。でも、クラリネットのニコラ・バルディルーとはSNSで友人になったのが先ですし、オーボエのフィリップ・トーンドゥルは直接の友人ではなかったけれど、コントラバスの幣くんが彼と友だちで間に入ってくれてました。

——ファゴットの小山莉絵さんはじめ、ほかのメンバーもみなさん、素晴らしいですよね。

福川 小山さんとは最初がいつだったか覚えていませんが、その時の衝撃があまりに強かった。うまいだけではなくて、アンサンブルの中にいる時のバランス感覚と、ソロとして出てきた時の存在感が素晴らし過ぎます。

松本健司さんと金子平さんにバセットを吹いてもらえるなんて最高です。幣君はバスからアグレッシヴに発信してくるところが本当に好きで、《グラン・パルティータ》を演奏するなら彼しか考えられないほどです。ちょっとしたハモりとか、1秒くらいのソロでも全部にいい音楽が詰まっています。

——リハーサルや本番の雰囲気はいかがでしたか。

福川 みんなハッピー・オーラ全開ですし、オープン・マインドな人ばかりでした。もちろんリハーサルでは決めなければならないところがたくさんあるのですが、それ以外は自由にという感じ。一流同士なら言葉は少なくても、音楽的に対話ができて、それで充分です。オーボエとクラリネットの1番がフランス人というのもあって、モーツァルトでは即興的な面が強く出ていますね。最終日の大阪公演なんか、ライヴならではの愉しさが最高でした。

福川伸陽
©平舘平

——今回はモーツァルトと同じ編成、同じタイトルの藤倉大さんの新曲が初演されましたね。

福川 藤倉さんとは以前から友人でしたが、この編成のことは知らなかったそうなのです。地味で面白くない編成だと思ったそうなのですが、いざ書き始めてみたら雅楽みたいな音ができたりするので、筆が勝手に進んでいくこともあったらしいです。モーツァルトの《グラン・パルティータ》は演奏される機会が多いので、コンサートで組み合わせるのにすごく良い曲ができたのではないかと思います。モーツァルトとはまったく違った雰囲気の作品なので、好対照でもあります。ホルンには負担が大きいのですが(笑)。

——配信限定でドヴォルザークの《管楽セレナード》も聴くことができますね。

福川 配信というのは手軽で、どこにいても聴けるようになったという意味ではすごくプラスで嬉しいことです。今回のように時間的に1枚のCDに入りきらない場合に、こうして配信という形で聴いていただけるのはとてもありがたい。

そして、配信音源をスマホのスピーカーから出てくる音だけではなくて、ホールで音に包まれる感覚をぜひ体験していただきたいですね。今回は紀尾井ホールの音がそのまま詰め込まれていて、それを配信でも聴けるというコンセプトで音源を作ったので、これを聴いて次はぜひホールにも足を運んでほしいです。

——今後の予定などありましたら。

福川 今年2025年は、「ホルン・サミット」の開催が決まっています。バロック音楽やブラスのサミットを年1回くらいずつ……という野望もあります。あとは今回のようなメンバーで、モーツァルトとベートーヴェンのピアノとの五重奏をレコーディングも含めて演奏できたらと考えています。

ふたつのグラン・パルティータ
アルバム情報
ふたつのグラン・パルティータ

発売日: 2025年1月22日

CD:KICC-1624  配信:NOPA-6521 NOHR-861

レーベル: キングレコード

POSコード: (CD) 003⁻ 4988003643263        

定価: 3,300円

 

CD収録内容 KICC-1624

モーツァルト:セレナード第10番《グラン・パルティータ》K.361(370a)

藤倉 大:グラン・パルティータ

 

配信収録内容 NOPA-6521 NOHR-861

ドヴォルザーク :管楽セレナード ニ短調 Op. 44

モーツァルト:セレナード第10番「グラン・パルティータ」K.361(370a)

藤倉 大:グラン・パルティータ

 

録音:2024年11月18-19日 東京 紀尾井ホール

 

アーティスト

オーボエ:フィリップ・トーンドゥル、荒木奏美

クラリネット:ニコラ・バルディルー、橋本杏奈、松本 健司、金子平

ファゴット:小山莉絵、助野由佳

ホルン:福川伸陽、サボルチ・ゼンプレーニ、ユーフイ・チュアン、熊井 優

中木健二(ドヴォルザークのみ)

コントラバス:幣隆太朗

取材・文
西村 祐
取材・文
西村 祐

音楽レヴュアー・フルート奏者。桐朋学園大学中退。演劇、モダンダンス、日本舞踊などの公演に音楽制作・フルーティストとして多く出演。評論家・レヴュアーとしては、『レコード...

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