
ジョイス・ディドナートが11年ぶりに来日「複雑な時代に美しい人間の本質を共有したい」

グラミー賞を3回受賞し、世界の名だたる歌劇場で数々の主役を歌ってきた世界屈指のメゾソプラノ、ジョイス・ディドナート。来る5月に11年ぶりに来日し、日本で初めて、しかも1回だけのリサイタルを行ないます。来日を前に、プログラミングの意図や役作りの秘密、オペラ芸術への献身的な活動の背景にあるものを詳しく語っていただきました。

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
プログラムは私のオペラのキャリアをよく表すものを選びました
――プログラムには《カルメン》より「ハバネラ」ほか、多彩な作品が並びます。今回、日本におけるリサイタルということで、どのようなコンセプトで選曲されたのでしょうか?
ディドナート とても美しい日本の皆様のために、たったひとつのリサイタル・プログラムを選ぶのは、ほんとうに難しい作業です。私は数回しか来日したことはありませんが、温かく迎えてくださる日本の皆さまのためにパフォーマンスできる名誉に、いまも心が喜びであふれています。
4つの異なるプログラムを歌うことができたらと思います。今回は私のオペラのキャリアをよく表すものを選ぶように努め、初期のイタリア音楽と愛されるフランス作品にも焦点を当てます。
まずは私の大好きな作品のひとつである、ハイドンの小さな1幕ものの、劇的で美しいカンタータを選びました。またロッシーニやビゼー、さらに日本の素晴らしい皆様のために、いくつか追加でサプライズもお届けします! もう待ちきれません。

Academy of Vocal Artsで 声楽を学んだ後、1995年、サンタフェ・オペラで賞賛を浴び、1996年、ヒューストン・グランド・オペラに、1997年、サンフランシスコ・オペラに参加。2000-2001年シーズンにはミラノ・スカラ座でロッシーニの「チェネレントラ」のアンジェリーナ役でデビュー、2005-2006年シーズンにはニューヨークのメトロポリタン・オペラでモーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノ役でデビューし大絶賛されて成功をおさめる。2012年第54回グラミー賞でベスト・クラシカル・ヴォーカル・ソロをアルバム「ディーヴァ・ディ―ヴォ」で受賞。2015年4月には、ベルリン・フィル・デビュー。また、2015年発売のアントニオ・パッパーノとの共演の録音「ディドナート&パッパーノ:ライブ・アット・ウィグモア・ホール」で2回目のグラミー賞(ベスト・クラシカル・ヴォーカル・ソロ)を受賞。3回目は2020年:「Songplay」最優秀クラシック・ヴォーカル・ソロ・アルバム受賞。
――メゾソプラノは、ソプラノよりもずっと多様な役が演じられるとおっしゃっていますが、これまで歌ってこられた中でとくに好きな役は? また、オペラの役柄を「演じる」のではなく、「生きる」ために、いつもどのような過程をたどられるのでしょうか。
ディドナート 私にとってとくに好きな役を選ぶことはほとんど不可能です。というのも、アグリッピナ、チェネレントラ、ケルビーノ、オクタヴィアン、ディドンなど、素晴らしく多様な傑作の役に恵まれてきたからです――挙げればきりがありません!
またオペラの役を「生きる」ためには、テキストに完全に没入し感情の核心に深く入り込むことで、音楽の魂すべてが聴衆に届くようにすることが重要です。
私は常に、自分の技術と声の熟達のために最大限の努力をし続けなければなりません。そうすることで、本番では、すべての瞬間/音/音節を自分の全存在で生きることだけを考えられるようになるのです。
美がどれほど深く人々の心を開くことができるのかを感じてほしい
――ディドナートさんがオペラへの信頼を語る言葉には、勇気を与えられます。今後もオペラという素晴らしい芸術が生き残り、多くの人に感動を与え続けるために、どのようなことが必要だと思われますか?
ディドナート しっかりとした信頼できる声楽技術によって深く真実味のある演奏を行ない、聴衆に、忘れられない唯一の体験を与えたいという深い願いをもつこと。そうすれば、聴衆が今後もオペラを求め続けてくれると信じています。
しかし、おそらく変わりつつあるのは、私たちがそれをどのように共有するかということでしょう。人々を劇場へ招き入れ、どのようにして、この偉大な芸術形式の一部になり参加していると感じてもらえるか。 私はオペラを刑務所へ、難民キャンプへ、学校へと届ける活動をしてきました――心を開いて招待すれば、聴衆はその体験に歓喜し、もっと求めてくるようになるのです!
――4世紀にわたる作品を歌い、受刑者や難民の方々との音楽を通した交流など、多岐にわたるパワフルな活動を展開されているディドナートさん。そのいちばんの原動力となっているものは?
ディドナート みなさんに、美がどれほど深く人々の心を開くことができるのかを感じてほしいと思っています。 私は何百人、あるいは何千人もの見知らぬ人々に集ってもらうことがとても好きです。その短い時間のあいだに、愛や情熱や問いかけ、絶望や希望という人間の深い経験を旅することを選んでもらうのです。 それは、ひじょうに複雑な時代にあって、私たちが美しい人間の本質を共有していることを思い出させてくれます。
――11年ぶりの来日になりますが、2015年に来日された際に印象に残っていることは? また、今回の1度限りの来日公演について、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
ディドナート 私は、美しく、思いやり深く、寛大な日本の皆さまを心から恋しく思っていました(あれから11年も経ったなんて信じられません!)。 そして日本でのすべての経験を大切にしてきました――人々とのふれあいやあらゆる体験が美しい優雅さに包まれていたこと、息をのむような歌舞伎、比類のない食の体験、忘れがたい庭園と自然――しかし何よりも、私を迎えてくださる、深く寛大で温かい人々。 私は日本をほんとうに愛していますし、戻るまでにまた11年も経たないことを願っています!
日時:2026年5月31日(日)19:00開演
会場:サントリーホール
出演:ジョイス・ディドナート(メゾ・ソプラノ)、クレイグ・テリー(ピアノ)
曲目
ジョルダーニ :「カーロ・ミオ・ベン(いとしい人よ)」
パイジエッロ:「もはや私の心には感じない」
トレッリ:「あなたは知っている」
ハイドン:カンタータ《ナクソス島のアリアンナ》
***
ロッシーニ:歌劇《アルジェのイタリア女》より「ひどい運命よ!」
サン=サーンス:歌劇《サムソンとデリラ》より「私の心はあなたの声に開く」
ハッセ:歌劇《アントニオとクレオパトラ》より「恐ろしい顔をした死神は」
ビゼー:歌劇《カルメン》より「ハバネラ」
チケット:S席 19,000円 A席 16,000円 B席13,000円 C席9,000円(全席指定・税込)
問い合わせ:楽天チケット
TEL 050-5893-9366(受付時間 10:00~17:00 )
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