【Q&A】令和ファゴット界のパイオニア・保崎佑さん~日本初!ダブルリード奏者で博士号を取得
月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、演奏家たちの素顔を紹介していきます。第4回は、ファゴット奏者で日本初となる博士号を取得した保崎佑さんにご登場いただきました。
1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
1993年生まれ、埼玉県朝霞市出身。2023年東京音楽コンクール木管部門優勝者。「18世紀ボヘミアのモルツィン伯爵に仕えていた音楽家の『ファゴット協奏曲』」をテーマに博士号を取得。現在は母校である東京音楽大学の助教を務めながら、ファゴット奏者としては珍しいソリスト活動を中心に演奏を展開されています。ここでは、“研究のできる演奏家”という挑戦の日々の裏側に迫りました。
健やかでストイックな生活
Q1 ニックネームを教えて。
「博士」かな(笑)。面倒をみてくださった実技の先生にも「博士、しっかりしてください!」など、おもしろがっていわれます。
Q2 出身地(埼玉県朝霞市)はどんなところ?
にんじんが名産品のところです。有名人では尾崎豊さんを輩出しています。
Q3 自身をどんな性格だと思う?
真面目でストイックだと思います。周りからはまっすぐだね、といわれます。不安症で、いつも「対策しなきゃ」と焦っています。
Q4 好きな食べ物は?
牛肉。とくに焼肉が好きです。
Q5 苦手な食べ物は?
青じそ。どうしても食べられません。
Q6 本番前の勝負飯は?
とにかく健康なもの。低血糖にならない程度の消化によいものを考えて食べています。
Q7 気分転換はどのようにしてる?
筋トレ。ウェイトトレーニングで、マシンを使ってスクワットをしたり、ダンベルを持ち上げたりしています。日によって鍛える部位を変えていて、トレーニング・メニューは1週間で5分割するかたちで調整。ちなみに本日(取材日)は背中の日です!
Q8 マイブームは?
遠征先でジムに行くことです。
詩の世界が広がる「歌曲」が好き
Q9 好きな作曲家は?
ジャン=ミシェル・ダマーズ(1928~2013、フランス)がいちばん好きです。歌曲が大好きなので、歌曲を書いている作曲家はみんな好きですね。
Q10 好きな曲は?
フォーレの歌曲《私たちの愛》。旋律と音楽的語法が美しいだけでなく、ポウル=アルマン・シルヴェストルの詩が描く愛のすがたに憧れ、共感します。歌曲はこの作品に限らず、毎日聴いています。オペラはドラマを語る、歌曲は詩の世界だと思っています。
Q11 いつか演奏してみたい曲は?
ダマーズ「ハープとファゴットのための協奏曲」と、R.シュトラウス「クラリネットとファゴットのための二重協奏曲」を死ぬまでに一度演奏してみたいです。
Q12 憧れのアーティストを教えて。
矢野顕子さん。誰にも真似できない、オリジナリティあふれる唯一無二の音楽活動をされているところに憧れます。尊敬している人は、音楽学の武石みどり先生とファゴットの水谷上総先生です。
Q13 自身の世界観を変えた言葉はある?
とある心理学者がおっしゃっていた「ネガティブという感情は人間の優れた機能」という言葉です。僕はすごいネガティブで、おそらく人を不愉快にさせてしまうほどネガティブ(苦笑)。ですが、この言葉を耳にしたときに救われて、生きかたが変わりました。音楽や演奏は、感情すべてが材料になり、それが芸術の真の部分になると信じています。
Q14 最近読んでおもしろかった本は?
レイ・ブラッドベリの短編小説『霧笛(むてき)』。作家・中村うさぎさんがおすすめされていて、手に取りました。同書を通じて孤独との付き合いかたについて学び、考えさせられました。
Q15 最近感動した芸術作品は?
美術家・宮下さゆりさんの鉛筆画です。美術作品でこれまでに感じたことのない感動、共感を覚え、まるでいちばん大好きな洋服を見つけたような感覚でした······ 。自分の芸術的感覚とマッチした美術作品と初めて出合いました。宮下さんとは来年2月に演奏会でコラボレーションする予定です。
がむしゃらで輝いていた日々
Q16 会ってみたい作曲家は?
ロマン派の大作曲家たち——ブラームスやシューマンなど——。というのも、その時期のファゴット作品が全然ないのです!
ファゴットもピアノと同じように楽器が改良され続けているのに、なぜロマン派の時代に名手や作品が誕生しなかったのか。大作曲家たちにファゴットに対する意見をきいてみたいです。
Q17 スタイル維持の秘訣は?
トレーニングと食事! それに勝るものはありません。脂っこいものや炭水化物を多く取った次の日には、フィットネスのコンテストに出ている人と同じ食事をします。血糖値が上がらない炭水化物と、脂質のないたんぱく質(胸肉とブロッコリーなど)を組み合わせたメニューです。
Q18 これまでの人生でいちばん辛いと感じた時期は?
大学院博士課程のときです。私の通っていた大学院は、一人の文系の学者として100パーセントの内容を要求されました。研究授業では先生がたの容赦ない厳しい指摘に落ち込み、夜な夜な自分の研究を進め、論文を執筆する毎日。
それだけでも疲労困憊なのに、私には楽器の練習やレッスン、コンクールもあった。朝6時に起きて、夜中2時に寝られたらラッキーという感じでしたね。でもその日々のおかげで、どこにいっても通じる学術を身に付けられたと感じます。当時を振り返ると気が狂っていたようにも思いますが(笑)、がむしゃらで一所懸命で、輝いていた日々でした。
Q19 「Q18」のころのタイム・スケジュールはどんな感じでしたか。
Q20 これまで音楽、ファゴットを続けてこられた理由は?
ファゴットで自分の表現したいことを実現できたからだと思います。そして、家族、友人、師事する先生がたのお力添えがあったからです。周りの協力があり、博士号を取るという一つの夢を叶えることができました。
日時:11月9日(土)15:00開演
会場:大田区民ホール・アプリコ 大ホール
出演:角田鋼亮(指揮)、保崎佑(fg)、東京都交響楽団
曲目:モーツァルト「ファゴット協奏曲」 変ロ長調、他
問合せ:チケット専用電話03-3750-1555
公演詳細はこちら
日程:2025年2月8日15:00開演
会場:としま区民センター 8階 多目的ホール
出演:保崎佑(fg)、小林遼(p)、坂本伽耶(fl)
曲目:シャルル・ケクラン「ファゴット・ソナタ」、ジャン・ミシェル・ダマーズ「演奏会ソナタ」、他
作品提供:宮下さゆり(美術家)
問合せ:事業企画グループ03-3590-7118
公演詳細はこちら
『音楽の友』10月号(9月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、保崎佑さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!
「音楽の友」2024年10月号記事詳細はこちら
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