ヴァイオリン石上真由子が語るデュオの醍醐味~“揺るがぬ土台”があるから羽ばたける
石上真由子さんは、医師免許をもつ異色のヴァイオリニストとして知られ、国内外でソロ・室内楽・オーケストラなど幅広い演奏活動を行なっています。心から信頼する「ベスト・パートナー」であるピアニストの江崎萌子さんと「デュオM&M」としても活動しており、8月6日に初の小品集『他人の顔』をリリース。デュオの醍醐味や、その魅力が詰まったプログラミングについて伺いました。
国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...
“この人だ!”~ デュオ・パートナーとの運命の出会い
——ピアノの江崎萌子さんとは2019年のフォーレ「ピアノ四重奏曲第2番」以来、さまざまな曲で共演されてきましたね。
石上真由子(以下、石上) 初めて音を重ねたときから、細かい間の取り方や大事に奏でたいところなど、音楽的な感覚がとても合うのを感じました。また一緒に弾いている時のお互いの空気感とか、呼吸などもすぐに察知できるところがあって、“この人だ!”というものがありました。
——演奏をお聴きして、ほんとうに隅々まで重なり合っているのを感じました。
石上 もともと言葉を介さずとも瞬発力のようなものでアンサンブルができていたのですが、この5年間でベートーヴェンやブラームス、シューマンなどのソナタを演奏するなかで、“なんとなく”で合っていたところをお互いに話し合っていくようになり、より密度の濃い共演ができるようになっていったと思います。
話し合ってみると、改めて感じていることや考えが似ているということも分かりましたし、揺るがない部分を二人でシェアできているので、本番では自由にできることも増えました。
日本音楽コンクール等、国内外で受賞多数。国内外でオーケストラとの共演も重ね、メディア出演も多数。長岡京室内、アンサンブル九条山メンバー。Ensemble Amoibe主宰。Music Dialogueアーティスト。[主な受賞歴] 2008年 第77回日本音楽コンクール第2位、2011年 第7回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽部門第1位、2015年 第5回宗次エンジェルヴァイオリンコンクール第4位、2016年 第14回チェコ音楽コンクールヴァイオリン部門第1位、2017年 バルトークコンクール特別賞、2019年 京都市芸術新人賞、大阪文化祭賞奨励賞、 2019年 第29回青山音楽賞 青山賞、2021年 クリティック・クラブ賞 奨励賞、2023年 第42回藤堂音楽賞、2022年 文化庁芸術祭大賞、2025年 京都府文化賞奨励賞
デュオの魅力が詰まったエネスコ《協奏的即興曲》はどうしても入れたかった
——これまでのデュオ・リサイタルではベートーヴェンやドイツ・ロマン派の作曲家を中心としたプログラムでしたが、今回のCD『他人の顔』では小品を中心とした内容になっていますね。
石上 ヴァイオリンとピアノの“デュオ”であることにこだわって演奏してきたので、今回も二つの楽器が対等に関わりあう作品を集めました。これまでリサイタルなどで披露してきたものがほとんどですが、エネスコの《協奏的即興曲》が今回のために新しくとりいれた曲です。デュオの魅力が詰まった曲で、どうしても入れたい曲でした。
——あまり知られていない曲ですが、アルバムの最初を飾る曲としてオープニングにふさわしいですし、アンサンブルの魅力がつまった曲ですよね。
石上 綺麗ですが、変化に富んでいて、お互いに“合わせよう”としてしまうと不自然になってしまう難しさがあります。もともと波長が合う奏者同士でないとうまくいかない部分がたくさんありますね。シマノフスキの《神話》もそうです。
——グリーグの《2つの悲しき旋律》はおふたりの編曲ですが、それぞれの旋律をかけあったりして、やはりデュオの魅力がより強調されたものになっていますね。また、タイトルにもなった武満徹の《他人の顔》が最後を飾るなど、プログラミングも素敵だなと感じました。
石上 曲順やタイトルは、レコーディングするときにはほぼ固まっていましたね。曲想や調性などを考慮して配置したのですが、やっぱりエネスコを最初にしたいというのは強くありました。
アンサンブルがとにかく好き
——幅広く活動されている石上さんですが、アンサンブルに対してのこだわりを強く感じます。
石上 アンサンブルがとにかく好きで、その魅力が伝わればいいなと思って活動しているところがありますね。どんな編成も好きなのですが、実はまだ弦楽四重奏に固定のメンバーでしっかりと向き合ったことがなくて。いつかベートーヴェンの弦楽四重奏曲をやるのが夢なのです。
また、活動の初期からアウトリーチ活動もしていて、江崎さんともいろいろな所でたくさん演奏してきました。そこでもやはり、それぞれの楽器の特徴やデュオならではの魅力などをお伝えしています。今回のアルバムでも楽器同士のさまざまなやりとりを通して、改めて曲や楽器の魅力も感じていただけたら嬉しいです。
ヴァイオリン:石上真由子 ピアノ:江崎萌子
[KICC-1631]
【収録曲】
1. ジョルジュ・エネスコ:協奏的即興曲
カルロ・シマノフスキ:「神話」作品30
2. 第1曲:アレトゥーサの泉
3. 第2曲:ナルシス
4. 第3曲:ドリアードとパン
5. エドワード・エルガー:カリッシマ
エドヴァルド・グリーグ:2つの悲しき旋律 作品34(Duo M&M編)
6. 傷ついた心
7. 過ぎにし春
8. マヌエル・デ・ファリャ:歌劇「はかなき人生」- 第2幕 スペイン舞曲 第1番(F.クライスラー編)
9. ワーグナー:アルバムの綴りイ長調(A.ヴィルヘルミ編)
10. フランツ・シューベルト:エレンの歌 第3番「アヴェ・マリア」
フリッツ・クライスラー:
11. 愛の喜び
12. 愛の悲しみ
13. 美しきロスマリン
武満徹:
14. 妖精の距離
15. 弦楽オーケストラのための「3つの映画音楽」 「他人の顔」 ワルツ(松﨑国生編)
定価:¥3,300(税抜価格 ¥3,000)
詳細はこちら
楽曲配信はこちら
石上真由子&江崎繭子 デュオ・リサイタル
2026年
3月4日(水)刈谷市総合文化センター(愛知)0566-21-7430
6日(金)浜離宮朝日ホール(東京)03-5541-8710
8日(日)アルカス佐世保(長崎)0956-42-1111
10日(火)いずみホール(大阪)06-6944-2828
15日(日)CREEK HALL(北海道) 011-795-5268
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