
日本センチュリー交響楽団第1ヴァイオリン奏者・古関奏絵さん「主旋律を弾くだけでなく、アンサンブル力を大切にしたい」

日本センチュリー交響楽団の第1ヴァイオリン奏者・古関奏絵さんは、東京藝術大学大学院を修了後、兵庫芸術文化センター管弦楽団を経て同団に入団。演奏においてもっとも目立つ存在である第1ヴァイオリンの役割や、アンサンブルを大切にするオーケストラにおける役割、オフの日ならではのインプット方法などを伺いました。
「オーケストラの舞台裏」は、オーケストラで活躍する演奏家たちに、楽器の魅力や演奏への想いを聞く連載です。普段なかなか知ることのできない舞台裏を通じて、演奏家たちのリアルな日常をお届けします。

1997年大阪生まれの編集者/ライター。 夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オ...
音楽一家のなかで始めたヴァイオリン
——楽器を始めたきっかけを教えてください。
古関 まず、父がアマチュア・オーケストラでトロンボーンを吹いていて、母はピアノの先生をしていて、そして姉が先にピアノを習っていたんです。そういった環境からか、音楽系のテレビ番組を見ることが多く、そこでヴァイオリンを目にして「これがやりたい」と親に話したそうで。私はまったく覚えていません(笑)。
——小さい頃からクラシックに触れながら過ごすことが多かったんですね。
古関 そうですね。小さい頃からコンサートを聴いたり、父や母の演奏に触れたり、子守唄もクラシックだったり、記憶にありませんが、姉とも共演したりしていました。

——もともと音楽の道を志していたのでしょうか?
古関 高校2年生で意識するようになりました。中学受験と高校受験でたくさん勉強をしてすっかり疲れてしまって、音楽の道もいいのではないか……と思うようになったんです。当時、地元のジュニアオーケストラに通っていて、勉強もかねて仙台フィルさんの演奏を聴きに行くことが多く、オーケストラの演奏者に憧れるようになりました。
——そして無事、東京藝術大学に合格されましたね。当時はどれくらい練習をしていたのでしょうか?
古関 レッスンで叱られたくないと焦ったり、課題に追われていたり、とにかく追われるように練習していましたね。時にはプッツンとやる気が途切れる時期もありましたが、やっぱり本番前は1日中こもって楽器に触れる日々でした。
当時の私は本番に弱く、とにかくステージに慣れないといけないと思い、1ヶ月に一度は舞台に出て、毎度異なる作品を弾く、といった課題を自分で課していました。当時は本当に必死だったので、大学に泊まっているかのような生活でしたね。
日本センチュリー交響楽団は居心地の良い楽団
——修士課程を卒業されて、兵庫芸術文化センター管弦楽団に入団されました。そのタイミングで関西に出てこられたのでしょうか。
古関 そうですね。関西は東京ほど混んでいなくて、特に兵庫県はとても好きな街になりました。自然も利便性もあり、オーケストラの演奏を聴く機会にも恵まれています。とても住みやすいエリアだなと思います。
——改めて、日本センチュリー交響楽団の魅力を教えてください。
古関 とても居心地の良いオーケストラだと思います。先輩方は優しく、おもしろく、楽しい。一方で演奏中は緊張感があるため、バランスよく音楽に打ち込める環境だと思っています。疑問があればすぐ言葉に出される方も多いですし、ヴァイオリンパートで自然と集まって話をする機会も多いです。

——古関さんは第1ヴァイオリン奏者でいらっしゃいます。もっともオーケストラの中でも目立つ存在かと思いますが、改めて第1ヴァイオリンの役割を教えてください。
古関 やはりもっとも目立つメロディを弾く時間が長いので、作品の持つ特徴や表情、雰囲気を直接的に聴き手に伝える役割を担っています。
——その音楽の第一印象を決める存在、ということでしょうか。
古関 その通りです。聴き手の皆さんがまず耳に入るのは、その作品の旋律です。それを弾くことが多いからこそ、聴き手の皆さんへの印象に直結するんです。
また、日本センチュリー交響楽団はアンサンブルを大切にしているので、自分の弾いている主旋律だけでなく、裏で演奏されている旋律や、音楽を支えるベースがどんな動きをしているのかなど、さまざまな音を気にしながら演奏することを心がけています。そうして、一つひとつの層を重ねていくイメージです。
そのため、メロディを弾くだけでなく、常にさまざまな方面にアンテナを張り巡らせていますね。アンサンブルを大切にしているからこそ、力づくで音をわーっと出していくのではなく、ホールの響きに自然と調和させたり、他の楽器に自然と乗せていったり。
エンタメに触れることで仕事への姿勢をかえりみる
——オフの日の過ごし方は?
古関 本当は練習をしないといけないとわかっているのですが、オフの日はゆったりすることが多いと思います。もちろん、追われているときや大切な本番を控えているときは、かなり追い込んで練習をします(笑)。
だから基本的に休みの日は、たくさん寝ています。あと、『名探偵コナン』のアニメも好きで、休みの日は観ることが多いですね。
——『名探偵コナン』はアニメ版がお好きなんですか?
古関 はい、そうですね。第1話から観ていますし、映画版もたくさん観ています。ポップアップショップがあれば、足を運んでしまいますね。
他にも、東京ディズニーランドなどのテーマパークも大好きです。
——アニメやテーマパークなど、楽しいことがお好きなんですね。
古関 そうですね。疲れが癒やされたり、ワクワクさせられたりすることが好きなんですよね。そして、「演奏を通して自分もそんな体験を提供できたらな」と思ったり。やはりクオリティの高いエンタメに触れて感動すると、「自分も生半可な気持ちで仕事をしていたらいけないな」「もっとお客さまを惹きつけるような音楽をしないと」と痛感します。

——本番前のルーティンはありますか?
古関 深呼吸と屈伸をします。かなり緊張をしてしまう体質なので、まずは体の重心を下にするようにします。
——緊張しやすいんですね。まずは物理的に体を下にする。
古関 そうです。落ち着こうと思って椅子に座ったとしても、なんだか落ち着かないんです。だから、深呼吸や屈伸をしながら、冷静になろうと努めています。
——普段、特に愛聴している作品や作曲家は?
古関 ブラームスは好きですね。弾くのは大変で難しいのでむしろ古典派の方が好きなんですが、聴くだけならばブラームスが好きです。
あとは、ディズニーの音楽や『名探偵コナン』の主題歌もたくさん聴いています!
楽器以外でもさまざまなアプローチで音楽に触れたい
——音楽は生活においてどれくらいを占めていますか?
古関 やっぱり、6〜7割は占めていますね。朝起きてから夜寝るまで、常に音楽に触れている状態なんです。オーケストラのリハや本番はもちろん、個人的に控えているコンサートもありますし、練習以外にも音源を聴いていたり。完全なオフの日以外はずっと音楽と関わっている状態です。
これからはもっと、本を読むなど楽器を持つこと以外の勉強も深めていきたいと思っています。周囲の人から、「楽器に触れる以外にももっとできることはあるよ」とアドバイスをいただくことも多くて。
——そうなんですね。
古関 やっぱりそういうことを言われるときは、音楽に集中しすぎて塞ぎ込んでいたり、うまくいかずに凹んだりしているときなんです。
そんなときは、一旦楽器を離れて楽譜を眺めるだけにしてみたり、いつもとは違う参考音源を聴いてみたり、オーケストラスコアを俯瞰してみたりすることも大事。これからは、積極的にそういった時間を増やしていきたいです。
——今後の目標を教えてください。
古関 日本センチュリー交響楽団の名前が、もっと日本全国に知れ渡ったらいいなと思っています。このオーケストラには素晴らしいメンバーが集まっているので、そんな魅力が伝わるような活動を展開していきたいですね。
——近年では久石譲さんが音楽監督に就任され、テレビ出演などの機会もありましたね。
古関 はい。そういった機会ももっとあればいいなと思っています。個人的な目標としては、もっとオーケストラ奏者として耳を使い、視野を広く持つこと。
たとえば日本センチュリー交響楽団はアンサンブルを強みとしているため、もっと周囲の音を聴いたり、実際に室内楽の機会を増やしたりしながら、自分もアンサンブル力を鍛えていきたいです。もっと個人的な目標を言うならば、もっと心を広く持つこと(笑)。
——周囲と協調する必要のあるアンサンブル力を身につけることと、心を広く持つことは、少し似ていることかもしれませんね。
古関 そうですね。心の器を広げて、周囲の人がどんな呼吸で演奏しているのか、何がしたいのか、それをできるだけキャッチでき、自分も音で返事できるような状態でありたいですね。
自分のやりたい音楽を、周囲や聴き手に伝わるように努力することを今後の課題にしたいと思います。
センチュリー豊中名曲シリーズ Vol.36 「月」冬の満ち欠け
日時:2025年12月13日(土) 15:00開演
会場:豊中市立文化芸術センター 大ホール
曲目:
ドビュッシー(クロエ、カプレ編):ベルガマスク組曲
ベーメ:トランペット協奏曲 作品18 ヘ短調
チャイコフスキー:交響曲 第1番 ト短調 作品13 「冬の日の幻想」
出演:
指揮:大友 直人
トランペット:児玉 隼人
第295回 定期演奏会
日時:2026年01月17日(土) 14:00開演
会場:ザ・シンフォニーホール
曲目:
久石 譲:Encounter for String Orchestra
久石 譲:ハープ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
出演:
指揮:久石 譲
ハープ:エマニュエル・セイソン
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