田所 光之 マルセルに訊きたい5つのこと〈後編〉コンクール、芸術家というしごと
田所 光之 マルセルさんに今ききたいことをすべてぶつけたインタビュー。後編では、チャイコフスキー国際コンクールの第2次予選で演奏したプログラムのこと、そしてこれからの時代を生きる芸術家の姿について尋ねました。
2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...
4.コンクール
ベートーヴェンの「ソナタ第16番」はオペラだと思って演奏しています
――ベートーヴェンと言えば、6月に開催されたチャイコフスキー国際コンクールで、マルセルさんは「ピアノ・ソナタ第16番」を演奏しました。
マルセル(以下、M) 古楽器と現代のピアノで演奏するのは、奏法などずいぶん違いますよね。古楽器の奏法では本来それほどノンレガートではないのに、
6月にモスクワへ行って思ったのが、コンクールの会場となったホールの審査員席のエリアは、何も聞こえないんですよ。配信で聴くとまた違って聞こえるのかもしれませんが。だから、ノンレガートで思い切り弾いても、審査員席には少しだけ届くぐらいです。その点はとても勉強になりました。1,500席のホールでしたが、試しに2階で聴いてみたら、よく聞こえるのです。
――ベートーヴェンのピアノ・ソナタのなかで、第16番を選曲した理由を教えてください。
M とても気に入っている作品だからです。ベートーヴェンにはドイツ的なイメージがありますが、一方で、イタリアのオペラ・ブッファのようなイメージも持っています。第16番のピアノ・ソナタはおどけていて、まさにそのような音楽! オペラだと思って演奏しています。
――チャイコフスキー国際コンクールに出場するかどうか、ずいぶん悩まれたこととお察しします。コンクールに関するインフォメーションは、わりと直前に発表されていたと思います。
M 本当は、もう少し様子を見たいと思っていました。
――このコンクールについて、以前から憧れをもっていたのですか。
M そうですね。チャイコフスキー国際コンクールには、特別な感情を持っていました。コンクールによって、入賞者がびっくりするほど違います。このコンクールの過去の入賞者は、パワフルでマルチな才能をもった音楽家が多く、良いなと思っていました。
――出場を決意されたのは、いつごろですか?
M インフォメーションを知ったのが2月か3月。申し込みの締切は3月末。ちなみに、参加費は無料です。
――費用について、コンクールはどこまで支援してくれましたか。
M 飛行機のチケットやモスクワでの滞在費もコンクール持ちでした。それから、1日3,000円くらいの日当が支給されました。コンクールが終ったら、帰りの飛行機のチケットも取ってくれました。
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