咲妃みゆの原動力「自分に飽きたくない」~『空中ブランコのりのキキ』や歌について語る
注目の舞台人が、ミュージカルの魅力を語る連載。第12回は、華やかなサーカスを舞台にした音楽劇『空中ブランコのりのキキ』に出演する、俳優の咲妃みゆさんが登場。ミュージカルからストレートプレイまで幅広く活躍する咲妃さんに、役作りのために挑戦した空中ブランコ体験や「歌」への想い、人生を変えたミュージカルについて聞きました。
大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE JAPAN(エル・ジャパン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...
役者としてキキの不安や葛藤に共感しつつも、自分に引き寄せすぎずに稽古を重ねる
『空中ブランコのりのキキ』は、劇作家・別役実の傑作童話からサーカスをテーマにした数作品を再構成し、演劇・ダンス・サーカス・アクロバットなど、多彩な要素を詰め込んだ音楽劇。サーカス界のトップスターであるキキ(咲妃みゆ)が、「社会から求められる自己」と「自分自身が自覚する自己」との間で葛藤する姿を描く。
出演は咲妃みゆ、松岡広大、玉置孝匡、永島敬三、田中美希恵、瀬奈じゅんほか。8月6日から東京・世田谷パブリックシアターで開幕する。
——音楽劇『空中ブランコのりのキキ』に出演を決めた理由は?
咲妃 世田谷パブリックシアターの舞台に立つことが夢だったので、お話をいただいたときは「ついにかなう!」と喜びいっぱいで「出演したいです」とお返事しました。作品が別役実さんの『空中ブランコのりのキキ』だと知って、新しい挑戦の機会をいただけることをありがたく思いました。
——サーカスを舞台にしたこの作品で、咲妃さんはサーカスの花形スター・キキを演じられます。初めて台本を読んだときのご感想は?
咲妃 初めて読んだとき、最後に不思議と涙が出たんですよね。この作品の持つ温かさと切なさに心が揺り動かされて、ますます携われる嬉しさを感じました。
1991年、宮崎県出身。2010年に宝塚歌劇団に入団し、2014年に雪組のトップ娘役になり、多くの舞台で人気を博す。2017年に退団後は、ミュージカル、舞台のほか映像など、幅広いジャンルで活躍。代表作(舞台)として『ラブ・ネバー・ダイ』『NINE』『少女都市からの呼び声』『ゴースト』など。2021年には第46回菊田一夫演劇賞(演劇賞)、2024年には第31回読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞している。
——役作りのために挑戦した「空中ブランコ」はいかがでしたか?
咲妃 私は初心者レベルの体験でしたが、キキが空中ブランコの虜になる気持ちがわかった気がしました。最初はとても怖かったし、自分の体がコントロールできなくて悔しい気持ちにもなりました。すべてのタイミングがうまくいったときは体がフッと軽くなって、思い描いていたフォームになれるんです。
さらにキャッチしてくださる方の腕に無事に飛び込めたときの達成感は、体験しないと知り得ないものでした。キキが空中に飛び出していくときに感じるであろう独特の高揚感と覚悟と集中力を、稽古が始まる前に体験できてよかったなと思っています。
——唯一「3回転宙返り」ができるスターのキキは、自分を脅かす存在が現れたとき、命の危険があっても新たな技に挑もうとします。そんなキキをどう思いますか?
咲妃 キキは“自分のことを自分がいちばん信じられていない子”なんですよね。お客さんやサーカス団の仲間たちに褒めてもらうことが何よりも大切で、それがなくなると「誰からも必要とされないんだ」という不安に苛まれてしまう。そんなキキの気持ちは同じ表現者として共感する部分が多いです。ただ、気持ちがわかりすぎると自分ごとにひきよせて物語を考えてしまいますから、そこは客観的に捉えるよう努めながらお稽古を重ねています。
——確かに、サーカスという「鳥かご」で育ち、他者からの「拍手と喝さい」をもらうことが自身の存在理由になってしまったキキの葛藤は切ないですね。そして、そんなキキのラストシーンには、今から期待が高まります。
咲妃 そうですね。最終的にキキは、成功することよりも大切なことに気づきます。そこに至るまでの成長や周りの方たちとの交流など、一つひとつのシーンを大切に積み重ねて、クライマックスを迎えられたらと思います。
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