インタビュー
2019.02.20
東京ピアノ爆団が起こすクラシック・ムーブメント!?

静かにクラシックを愉しみたい方はご遠慮下さい。ピアニスト・三好タケル × クラシカルDJ・Aoi Mizuno

クラシック業界に、今、変革が求められている。クラシカルDJ、Aoi Mizunoが提言する、新しいクラシックの形とは? ミレニアル世代のクラシック・ミュージシャンによるムーブメントを目撃せよ!

「静かにクラシックを愉しみたい方はご遠慮ください」と謡う東京ピアノ爆団。そのパフォーマンスとはいかなるものか? ピアニスト・三好タケルと、Aoi Mizunoが、ミレニアル世代視点からクラシックのあり方を語った。

ナビゲーター
水野蒼生
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水野蒼生 指揮者・クラシカルDJ

2018年にクラシカルDJとして名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからクラシック音楽界史上初のクラシック・ミックスアルバム「MILLENNIALS-We Will C...

写真:安宅真樹

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ONTOMOで取材を受けたのは昨秋のこと。それから数ヶ月後、まさか自分が書く側になるとは嬉しい驚きだ。「ミレニアル世代の音楽家」として、僕らの世代ならではの視点で、音楽やカルチャー、またはその未来について綴っていけたら、と思っている。

今この記事を読んでくれてる人の中にはきっと、このONTOMOらしからぬ(クラシックらしからぬ?)不思議な風貌の2人が気になってこのページに来てくれた人もいるだろう。

金髪のほうが僕、クラシカルDJのAoi Mizuno。そして横のサングラスが、ピアニストの三好タケル。高校の2つ上の先輩であり、僕とともに「東京ピアノ爆団」を作り上げた同志。そして留学仲間という共通点もある。僕がオーストリアで、彼がベルギー。僕らは、会えばいついかなるときも音楽の話をする。カフェでも、電車でも、仲間で海に行ったときも。

せっかく書く機会を頂いたので、まずはそんな彼との「いつものお喋り」を記事にしてみることにした。

職業:三好タケル

水野 まず、最近タケルはどんな活動をしてるの?

三好 今はね、作曲もするし、ミュージカルの地方公演に向けてコーラスアレンジとか。ピアノ演奏がメインだけれど、いろんな活動をしてる。

水野 かなりマルチにやってるんだね。いろいろな依頼が来ると思うけど、基本的になんでもやりますってスタンス?

三好 僕の仕事を選ぶモットーは、僕以外の人間がやっても同じ結果になることはやらないということ。例えばコンクールの伴奏とか、一定のテンポで完全にクライアントのオーダー通りにやって下さいって話だったら、もうテープでいいじゃんって(笑)。僕が仕事をすることでお互い面白くなって、相乗効果が生まれるもの、が基準かな。

水野 三好ブランドってことだね。

三好 でも逆に、何かと融合することで新しいものが生まれるような、そういう基準で仕事を選んでいるから、ジャンルは問わない。レベルも問わない。女優さんの歌の伴奏をしたりとかね、歌のプロではなくても、そのステージ力がすごいのよ。

水野 なんかそれわかる。面白そうな仕事してるなあ。そもそもタケルはどうしてピアノを始めたの?

三好 物心つく前から歌ったり、何かを叩いたり、とにかく音を出すのが好きな子どもだったんだよね。それで親が何か習わせてやろうってことで音楽教室に行って、いろいろな楽器があったけど、ピアノの先生だけ女性だった(笑)。
たまたまピアノを選んだって感じかな。でも今そのピアノを使ってクリエイティブなことができて、クリエイティブな人とも繋がれるのはすごくありがたい。

水野 ある種コミュニケーションツールだ、タケルにとってのピアノって。

三好 そうそう。音楽単体にはこだわっていない感じかな。

ピアノってつまんない。

三好 前から言ってるけど、ピアノってつまんないなって。ピアノは楽器の王様って言われて同時に10声以上出せるすごい楽器だけれど、誰もが思っている「ピアノの音」しか出ない。
管や弦は同じ楽器使っても演奏家によって音色が全然変わるし、気持ちの流れみたいな表現がすごく見える。声も本当にいいなって。

水野 なるほど。確かにピアノって、他の楽器に比べると奏者と音の間に距離があるかもね。

三好 あとは、ピアニストあるあるかもしれないけれど、やっぱりオケに対する憧れがある。なかなか参加できないし。ピアノ協奏曲やるか、大編成の曲とかでたまにオケの中に入っているか、みたいな。いやー、オケの中でパート弾きたいな。

水野 それはピアニストならではの視点かもね。俺としてはピアノに対する憧れが大きい。自分一人で、あそこまでの完成された世界観を表現できるってやっぱり羨ましい。指揮者は楽器を演奏しないからオケありきだし、今やってるDJだって音源ありきだから、個人で完結できるっていう強みは羨ましく思う。

三好 そういう点でいったら、ダンサーのほうがすごいと思う。彼らは手ぶらでどこでも表現ができて、その場の空気を支配できる。羨ましいなって思う。まあ無い物ねだりの憧れってのは皆あるんだろうな。確かにピアノも楽しいし、オケの曲をピアノに編曲して連弾するとか、表現する達成感や、楽しさとかはあるけど、つまらなさも同居してる。自分はピアニストだけどピアノ万歳ってわけではない。面白さとつまらなさが対立してる感じは常にある。

フレッシュ過ぎる視点で語る「今ココ」のクラシック

頭で聴くな、心で聴け

水野 ベルギーではオペラ座に入り浸っていたとか、色々聞いてるけど、帰国して日本のクラシックの印象ってどんな感じ?

三好 まず、「価値観や評価基準を具体化しなくてはいけない」っていう強迫観念をすごく感じる。国民性なのかもしれないけど、なんかはっきりさせないと嫌なんだよね。

水野 こうでなければいけない! って意識はみんな強いよね。こだわりが強いことは悪いことではないと思うけれど、自分の視野を狭めることにも繋がると思う。それは奏者側も、往年のクラシックファンも、両方に言えるかも。

三好 僕もピアノを弾いてると感想をいただく。例えば、「三好さんのピアノ、グールドみたい」って。それはすごく嬉しいんだけど、中にはこういうのがあって。「19XX年のグールドのコンサートはこうで、でもホロヴィッツはこうだった」って僕に言ってそのまま帰っちゃう。で、結局僕の今日の演奏はどうだったの? みたいな(笑)。

スマート化するクラシックとその代償

三好 最近はいろんな人から伴奏を頼まれたりしてるけど、リハーサルのときにテンポのこととか、すごく的確にインフォメートしてくれる。一見それって生産性があってわかりやすいリハーサルなんだけど、なんか違うなって。前にブリュッセル四重奏団とブラームスのクインテットやらせてもらったときの話なんだけど、奏者みんな、自分の思っていることをわざわざ言わないの。みんなやりたいことをやる。テンポがどうこうみたいな細かいところではなくて「ここを目指す」っていう、抽象的な感覚を共有して、そこに寄り添っていく感じ。実際に正確かどうかをあまり問題視しない。

水野 音楽だけの話じゃないけど、今世の中全体が「スマート」な方向に移行していってるじゃない?「正解はこれ、合理的なのはこれ」ってところにどれもが進もうとしていて。クラシックの世界もある意味徐々にそうなってきてると感じる。だからこの世界でも違った解釈のものがどんどん受け入れられにくくなっている気がする。

三好 僕が言っているリハーサルの話もそうで、無駄があっていいんだよ。というか本当は無駄じゃないんだよね。作曲家だって、いろいろグルグル悩みまくって曲書いてるんだから、僕らも演奏する段階でもっと色んな感情があっていいと思う。

もっとローカルなクラシックの未来を

水野 じゃあ少し話を広げて、未来について。クラシック界全体、これからどうなっていくべきだと思う?

三好 僕はやっぱりどんどんミニマムな方向で良質なものにしていきたい。地域活性化みたいなローカル感が必要だと思ってる。要はグローバリゼーションの逆だよね。あれをしないと。

水野 狭く深い音楽文化をそれぞれの地域に根ざして作る、みたいな?

三好 そういう感じ。例えば東京コンサートホール多すぎ問題とかね、世界中どこ歩いてもこんなにコンサートホールだらけの街はないよ。多いほうがビジネスは動きやすいんだけど、でもあまり広げすぎると、結局どこにコミットしてるんだかわからなくなる。

水野 プロオケも東京だけで9つとかあるからな(笑)。

三好 演奏家は世の中にたくさんいる、その人たちがまずは自分の近しい人たちに音楽を届けて、音楽を聴く習慣を作っていく感覚かな。

水野 なんていうか、ボトムアップ式のクラシックの未来だよね。タケルが言ってるのって。自分でいかに外から仕事をもらうかではなくて、いかに仕事を生み出すかってことだよね。

東京ピアノ爆団という居場所

「毎回フレッシュ」な僕らのラボ

三好 東京ピアノ爆団(以下「ピア爆」)って同じことを全然やらないよね、今回で5回目だけれど毎度違うことをやっていて、なんていうか、違うことをやってもいい場という感覚がある。自分の思うこだわりを存分に発揮できる場。

水野 ピアニスト3人にとってのラボ、実験の場みたいな感じあるよね。普段弾く機会ないけど弾きたい! 挑戦したい! みたいなことを毎回モチベーションにしている。それでもお客さんを置いてきぼりにすることは、絶対にしない。その意識があるから成り立っているし、続いているって思う。

三好 お客さんも、そんな新しさを楽しみにしてる人も多いと思っていて。

水野 うん、今度はどんな新しいことが待っているんだろうみたいな。4公演やって、そんな「毎回新鮮」みたいなピア爆らしさが定着してきたなって思う。

三好 今は、正直ノリノリでイケイケ! みたいに始めた当時の新鮮感はなくなって、一周回って落ち着いてきた感じがあるね。

水野 本当にそう、もはや安心して帰ってこれる場所、居場所になったみたいな感覚がある。メンバーみんな仲良いし、企画してるときなんて全員ソロなのに一つのバンドやってる気分。

ピア爆にCDは必要ない

水野 ピア爆の1番の面白さって、お客さんとの距離が近くて、コミュニケーションが取りやすいことだと思うんだけど、ピアニスト的にどう? 俺はDJだからさ、多分ちょっと捉え方違うのかなって思うんだよね。

三好 他の2人はわからないけど、僕はコンサートホールとか、どんな会場でもお客さんの顔見てるのが好きで、でもピア爆はやっぱり反応のケタが違う。お客さんの顔って奏者にとって大きなバロメーターなんだよね。演奏後にどんな感想もらうよりも、リアルタイムの反応が一番大きな指針で、ピア爆はそれがすごくわかりやすい。

水野 その相乗効果があって、あのエネルギーが生まれるのか。

三好 そうだと思う。後は単純にあの大音量で、バーン! て弾けるのは気持ちがいい。弾き方も普段とは変わってくるかな、生の残響とは違うから、PA通してこその普段はできない表現ができて、それが楽しい。こんなドビュッシーでいいの? って感じもするんだけど(笑)。

水野 後から録音聴いて、これがあのドビュッシーなの? みたいな。他のCDやら聴いても全然違う曲に聴こえる楽しさがあると思う。

三好 ピア爆のライブ録音って売れないと思う。僕的にあまり売りたくないなって。音響面もめちゃくちゃライブ特化してるから、僕はそれをアーカイブしたくないな。レコーディングを聴くくらいなら、もう一回来てほしいって思う。

もっとアイデンティティを強く持たなくちゃ

水野 クラシックの音楽家って、前回はこれを弾いたから今回はこの曲って感じで、同じ曲だけを弾くってことがあまりないよね。でも例えばロックバンドやポップスのシンガーだったら、絶対にやる定番曲ってあるじゃん。クラシックのアーティストにもそういったアイデンティティがあっていいと思うんだよね。

三好 あれでしょ? 僕の弾くドビュッシーの《喜びの島》は絶対にセットリストから外せないでしょ? 

水野 そうそう、絶対に外せない。このアーティストだからこそ聴けるものってのが一人に一つはあったら、それがアーティストの個性にも繋がると思うんだよね。

三好 なんか今ってそういう時代な気がするんだよね。曲のクオリティが高ければ、そりゃ多くの人が感動できると思うんだけど、例えばシューマンのトロイメライで僕が一番感動したのって、有名なピアニストの演奏とかじゃなくて、知り合いのおじいちゃんの演奏なのね。全然楽譜通りじゃないんだけど、それが世界で一番感動した。
後で聴いたら、戦死してしまった彼の友人が一番好きだった曲がそのトロイメライだった。心が通ったものが一番感動するんだなって。たしかに「それはビジネス的に局所的なものだよ」っていう意見もわかるけど、でもプロの演奏家が起こすムーブメントだって、最初はすべてそんな局所的な所から始まってると思う。

友だちの友だちのパーティに来る感覚

三好 僕もピア爆、もう少し大きくやってもいいかなとは思うけど、あんまり組織化してビジネスの波には乗せたくないかなって。お金も絡むからそうも言ってられないところはあるけど。やっぱりスターパインズカフェのマックス150人くらいの空間ってのはずっと続けたいと思ってる。ただ頻度を増やしていきたいって気持ち。アオイはデカい箱でやりたいって気持ちが強いと思うけど。

水野 もちろん外に飛び出したい気持ちはあるけれど、それはピア爆じゃなくてもいいのかなって最近は思う。ピア爆って全然メジャー志向じゃないんだよね(笑)。ノリもちょっと内輪的だし。でもそのローカルな感覚がうちらの色でもあると思っていて。友だちの友だちのパーティに来てくれたような感覚で楽しんでもらえたらって思う。みんながファミリーになれる空間になったらなって思う。

集中して聴かないで

水野 んじゃタケルくん、最後にこれを機に東京ピアノ爆団を知ってくれた人にメッセージをお願いします!

三好 僕らがピアノ弾いてるときに、集中して聴かなくて全然いいです。お喋りしてても、スマホ触っててもいいんだよね。例えば、いま僕らがいるカフェやバーでも喋ってる後ろには音楽があるじゃん。この音楽があるかないかで心の温度感が全然違う、僕はそういうピアノが弾きたいんだよね。だから、確かに僕らはステージの上で弾いてるけど、全然関係ない話をしていてもいいし、僕のピアノが会話のきっかけになればいい。そういう意味で本当に自由にしていて欲しいな。

水野 OK、いいね。じゃあ今日はこんな感じで。ありがとう。

 

僕と三好。たしかに長いこと共に面白いことをやって来た仲だけれど、その考え方は常に一緒なわけではない。それでも僕らの居場所「東京ピアノ爆団」を作る上では同じ方向を向いている。そもそもクラシックって呼ばれている古典音楽なんて最初は貴族の宴会のBGMだったりしたんだから。これを読んでくれたあなたが、ちょっと贅沢な月曜日の夜を誰かと飲んでおしゃべりして過ごすために、「東京ピアノ爆団」という友達の友達のパーティに足を運んでくれたら、僕らはそれが本望だ。

東京ピアノ爆団 vol.5
イベント情報
東京ピアノ爆団 vol.5

日時 2019月2月25日(月) 19:00開場/20:00開演
出演 高橋優介 鶴久龍太 三好タケル Aoi Mizuno
前売り券 ¥3,000 当日券¥3,500
前売り予約  https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

ナビゲーター
水野蒼生
ナビゲーター
水野蒼生 指揮者・クラシカルDJ

2018年にクラシカルDJとして名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからクラシック音楽界史上初のクラシック・ミックスアルバム「MILLENNIALS-We Will C...

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