インタビュー
2026.01.23
オーケストラが語るショパンコンクール vol. 4

ワルシャワ・フィルのオーボエ奏者が語るショパンコンクール「ファイナリスト全員に対して柔軟にアプローチを変える」

ショパン国際ピアノコンクールのファイナルステージでは、コンテスタントがピアノ協奏曲を披露します。それまでのソロ演奏から一転、舞台にはワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団が登場。舞台をともにするオーケストラのメンバーに、ステージ上から見たコンクールの姿を伺いました。第4回はオーボエ奏者のアレクサンドラ・ロイェクさん。
*2025年10月23日の第2回入賞者コンサート前にインタビューさせていただきました。

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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心から寄り添って、すべてを捧げて演奏したい

——ショパンコンクールには何回参加されていますか?

ロイェク これまで5回参加しています。2005年からです。

——ショパンの協奏曲はこれまで何回くらい演奏されてきましたか?

ロイェク とてもたくさんです(笑)。コンクールのある年に、年間でどれくらい演奏したか書き留めようと思ったこともあるんですが……たぶん50回くらい?

来年2月に日本ツアーがあり、そこでも何回も演奏しますし、リハーサルと本番を合わせれば、数えきれないですよね。でも、私はショパンがとても好きなので、何回演奏しても毎回とても良い経験だと思っています。

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14歳からオーボエを始め、ショパン音楽院を卒業されたロイェクさん。2003年からワルシャワ・フィルの楽団員を務めています。

——コンクールと通常のコンサートの違いはどのように感じますか?

ロイェク もちろん、私たちは音楽家なので、常にどんなコンサートも尊重します。プログラムや指揮者が誰であるかに関係なく、毎公演を大切にしています。

ただ、コンクールでコンテスタントと演奏するので、特別なことですね。私は、ピアニストに心から寄り添って、すべてを捧げて演奏したいと思っています。それが特別な時間であり、特別な関係性です。

コンクールではより柔軟に、開かれた姿勢で

——11名のファイナリストと演奏するということで、気をつけていることなどはありますか?

ロイェク ファイナルのピアニストは11人いましたが、私たちは全員をそれぞれ個別の音楽家として捉えています。全員が完璧で美しく、それぞれ違う方式で演奏するからです。

ですから、私たちはいつも以上に柔軟であるべきだと思っています。1回、2回、3回、4回……と、ピアニストが変わるたびに演奏のアプローチを変えなければなりません。とくに、協奏曲の第1番と第2番を行き来するときには、素早く切り替えて、より開かれた姿勢で臨む必要があります。

——コンテスタントの緊張を感じることはありますか?

ロイェク 今回は感じませんでした。みんなとにかく素晴らしくて。もちろん内側にはストレスがあるはずですが、それを見せる人はいませんでした。震えたり、不安そうだったりということはまったくありませんでした。

ただ、これまでの20年を振り返ると、第1ステージでとても緊張している人はいましたよ。皆、次のラウンドに進みたいので、どうしてもストレスは大きいんです。でもファイナルでは、皆とても自信があるように感じます。

——これまで、一緒に演奏していて「この人が優勝する」と感じたピアニストはいましたか?

ロイェク もちろんです。観客の多くも、そう感じる瞬間があると思います。ただ、結果が違うこともあります。2005年には、ポーランドのラファウ・ブレハッチの演奏を聴いて、「彼が優勝するだろう」と強く感じました。ファイナルだけでなく、マズルカやポロネーズなど、すべてのラウンドで聴いた演奏が美しくて素晴らしかったです。

まるでひとつの生命体のように一体となって演奏した

——今年のコンクールはいかがでしたか?

ロイェク 今年のピアニストたちは信じられないほどレベルが高かったです。全員が本当に素晴らしくて、「誰が一番良かったか」を選ぶのは大変なことだと改めて感じました。

一人ひとりが膨大な時間をかけて準備してきたことも伝わってきました。彼らと音楽を共にできたのは本当にかけがえのない経験です。

日本が大好きで日本語を少し勉強したこともあるけど、漢字が難しかったと教えてくれました!

——今回のコンクールでもっとも印象深かった瞬間は?

ロイェク 今回……そうですね、結果が出た今だから言えますが、私は日本の桑原詩織さんのファンでした。彼女が私の“優勝者”でした。演奏するときには、全員が優勝! と思っていますが。

一昨日、彼女とファイナルの協奏曲を演奏できて、本当に嬉しかったです。本当に胸を打つ演奏でした。彼女の音は本当に美しくて、ピアノに触れるタッチが雲のように柔らかい。メカニックな音がまるでしません。私には説明できないほど美しいんです。

協奏曲ではオーケストラを聴き、共に演奏してくれました。本当に、「寄り添う」というよりも「一体となって」演奏している感覚でしたね。まるでひとつの生命体のようで、本当に素晴らしい時間でした。

桑原詩織さんのファイナルでの演奏

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

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