インタビュー
2025.03.18
特集「ホールへ出かけよう! 2025」

ヤマハホール~今年も人気アーティストの素顔や挑戦に出あえる 銀座で上質な音楽時間を

ヤマハ銀座店のビル内にある、木の温もりを感じさせるヤマハホールは、ホールそのものが楽器のよう。試奏した楽器がアーティストにインスピレーションを与えることもあるそうで、楽器メーカーが運営するホールならではの特徴があります。ビル内のカフェを使用する企画もあり、音楽を多方面から楽しめるのも魅力。企画の山田美輪子さんに、アーティストとホールの特別な関係や、2025年の注目企画を伺いました。

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

写真:横田敦史

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銀座の目抜き通りでひときわ存在感を放つヤマハ銀座店。その7~9階にあるのがヤマハホールだ。木のぬくもりが感じられる333席の親密な空間は、アコースティックな楽器の魅力を最大限に引き出すことでも知られている。日々多彩なラインナップの公演が行なわれているこのホールの2025年について、企画の山田美輪子さんにお話しいただいた。

ヤマハ株式会社コーポレート・マーケティング部主事の山田美輪子さん
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ジャンルにとらわれず、アーティストの“挑戦”を刺激するホール

山田「楽器メーカーの運営するホールだからこそできる企画が多く生まれています。ヤマハならではの楽器の開発、販売などの活動を通じ、国内はもちろん、海外のアーティストとも接点が多く、試奏や調整にいらしてくださる方も多いです。その中で自然といろいろなお話をさせていただく機会があり、企画が生まれていくといったこともありました。ホールの響きや試奏していただいた楽器の音色からインスピレーションを得られることもあるようです」

アーティストの本音に接し、彼らの“挑戦”を形にしてきた公演も少なくない。ヤマハはブランドプロミスとして“Make Waves”を掲げているが、まさにそれを体現している。

山田「たとえば、ヤマハホールの10周年で行なったアコースティックギターフェスティバルで沖 仁さん、大萩康司さん、そして小沼ようすけさんにご出演いただいた際、“ぜひ今度一緒にコンサートをしたい”というお声をいただいたことから公演が生まれ、現在では『TRES(トレス)』というユニットで他のホールなどでも広く活動されています。楽器の音色を引き出せる親密な空間ということもあり、ジャンルを超えた共演が多く実現してきましたね。沖 仁さんは塩谷 哲さんとのデュオ(6/7)でも今年の6月にご登場くださる予定です」

ヤマハホール10周年で行なわれた沖 仁(フラメンコ・ギター)、大萩康司(クラシック・ギター)、小沼ようすけ(ジャズ・ギター)のジャンルを超えた共演。これがきっかけで、3人によるTRES(トレス)というユニットが生まれた

終演後のパーティが人気の名物企画「エレガント・タイム・コンサート」

ホールを擁するヤマハ銀座ビルでは、楽器や楽譜フロアのほか、音楽家のエピソードや公演にちなんだメニューも提供するカフェが入っており、音楽をさまざまな角度から楽しむことができるようになっている。その魅力を最大限に発揮しているのが「エレガント・タイム・コンサート」だろう。クラシックはもちろん、ジャズやラテンなど多様なジャンルのアーティストが出演するコンサート・シリーズだ。公演前後にはパーティと呼ばれる、アーティストとのトークとティータイムを2階のカフェでたのしむことができる。

山田「昨年、このシリーズで福間洸太朗さん、成田達輝さん、伊藤悠貴さんの初共演が実現したところ、お三方から“ぜひまたこの3人で演奏したい”とおっしゃっていただきました。アーティストの皆様にはじめての挑戦をしていただける空間を提供し、心震える瞬間をつくりだしていける、というのは我々にとっても幸せなことです。今年の12月にはこの共演がふたたび実現します(12/5、ラヴェルが中心のプログラム。終演後にはカフェでのパーティもありますので、アーティストの素顔にも触れられる機会です。ぜひ多くの方にお越しいただきたいですね」

「エレガント・タイム・コンサート」の終演後には、パーティと呼ばれるカフェでの出演アーティストによるトークショーが開かれる。お茶をしながらアーティストの素顔に触れられるというのもなかなかない機会だろう(昨年の様子:左から成田達輝、福間洸太朗、伊藤悠貴)

ベンジャミン・グローヴナー、リーズ・ドゥ・ラ・サール……世界的ピアニストの息づかいを聴く

2025年も、上記の公演はもちろん、多彩なラインナップが予定されている。

山田「ジャンルの枠を超えた多彩な公演を行なっていますが、もちろんクラシックの公演も充実しています。まず、4月にはベンジャミン・グローヴナー(4/23)のリサイタルがあります。イギリスの音楽家としては史上最年少、ピアニストとしては約60年ぶりにデッカ・クラシックスと契約したことで注目を集めて以来、世界的に活躍されています。今回はシューマンの《幻想曲》にムソルグスキーの《展覧会の絵》という、技術、内容ともにひじょうに濃い作品を演奏してくださる予定です。

ベンジャミン・グローヴナー。N響のソリストとして来日するが、リサイタルが聴けるのはヤマハホールのみ

そして7月にはリーズ・ドゥ・ラ・サール(7/17)のリサイタルがあります。ドレスデン・シュターツカペレやベルリン放送響、ミュンヘン・フィル、N響など世界的なオーケストラと共演を重ねているピアニストで、今回はショパンやリストのロマン派プログラムを披露される予定です。オーケストラとのツアーで来日することが多いこの二人の演奏を、息づかいが感じられるようなヤマハホールでお聴きいただけるのはとても貴重だと思います。

さらに、今年はそれぞれチャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門、ヴァイオリン部門の優勝者である上原彩子さんと神尾真由子さんのデュオ(11/19)もお楽しみいただけます。ドラマティックで感動的な共演となること間違いなしです。ぜひ間近でお楽しみください」

ヤマハホールでの公演はもちろん、買い物やティータイムをあわせて堪能することもできる。ヤマハ銀座店を、音楽をいろいろな角度から気軽に、それぞれの楽しみ方を見つけられるような場所にしてほしい。

上)ヤマハ銀座店2階の「NOTES BY YAMAHA」は、ふだんは通常のカフェ営業を行なっており、だれでも気軽に利用できる。山田さんのおすすめは、ノン・アルコールのカクテル「ウィリアム・テル」とブラームスの好物と言われたコケモモのジャムを添えたバスク風チーズケーキだそう

右)ヤマハ銀座店。ヤマハホールはこの7~9階にある
ヤマハホール

[運営]ヤマハ(株)

[座席数]333席

[オープン]1953年

[住所]〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14

[問い合わせ]Tel.03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)

取材・文
長井進之介
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長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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