音大入試の楽典、「演奏時間」問題の解き方のコツは?――公式を覚えて代入!
音大(音高)入試の楽典に悩む人は多いと思います。テキストを読んだけれど問題は解けない。解くスピードが遅い。どうすれば良いかわからない。そこで今回、2022年7月27日刊行の『音大入試の「楽典」 解き方のコツ&過去問トレーニング』から、論点別に解き方のコツをお伝えします。第5回は「演奏時間」。出題パターンに仕掛けられた罠をスマートにスピーディーに攻略しましょう!
*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。
問題
テンポが♩=72、拍子が4分の4拍子、小節数が120小節の楽曲がある。この楽曲の演奏時間は何分何秒か答えなさい。ただし、テンポ、および拍子は、最初から最後まで一定、変わらないものとする。
今回は演奏時間の問題です。「小学生の時から時間の計算が大好きだった!」という人ならともかく、数字ばかりを扱うこの手の問題は、なんとなく解答の手が進まないかもしれません。でも、気を取り直して考えてみましょう。計算問題である以上は、何か解答への近道になる公式のようなものがあるのではないでしょうか?
演奏時間の計算式
「全体の演奏時間」=「1拍の演奏時間」×「1小節の拍数」×「小節数」
この式さえ覚えてしまえば、演奏時間の計算に怖いものなしです。例題の場合は4拍子なので、「1小節の拍数」は4(拍)ですね。それが120小節あるわけですから、「小節数」は120(小節)です。ちょうど下の図のようなイメージになります。これを式に代入すればいいわけです。
あれ? ところで、計算のはじめの「1拍の演奏時間」には、どんな数を代入すればいいのでしょう。そもそも、問題文にある「♩=72」というのは、どういう意味でしたっけ?
「1拍の演奏時間」はどのくらい?
メトロノーム表示の♩=72は、「1分間に4分音符が72個入る速さ」という意味です。例題は4分の4拍子なので、「1拍」の単位は4分音符ですね。ということは、公式に入れる「1拍の演奏時間」は……さて、次のうちどれでしょうか?
A 72(秒)
B 0.72(分)
C 1/72(分)
D 72/60(分)
まず、Aの場合。考えてもみてください、このとてつもなく長い1拍を。1拍演奏するだけでなんと1分を超えてしまいます!
Bは、「1分を100に分けたうちの72」という意味になってしまって、メトロノーム表示の意味とは異なります。そのうえ、これも1拍が40秒近い演奏時間になってしまいます。
DはAとまったく同じ意味で、単に、表し方の単位が異なっているだけです。
もうおわかりでしょう。「1分間に72個入る」ということは、1個の演奏時間は1分間を72に分けたうちの1。つまり、正しい選択肢はCの1/72(分)です。
式に代入してみよう
これで「1拍の演奏時間」もわかったので、代入する数字が出そろいました。あとは1/72(分)×4(拍)×120(小節)を計算して、全体の演奏時間を出すだけです。頭のなかだけで解こうとしないで、問題用紙の空白などを使って、たとえば下の図のように過程をどんどんメモしながら計算しましょう。
解答は問題文の要求に合わせて
ここまでくればあと一息! もし、問題文や解答欄に「何秒か答えなさい」や「____秒」のような指示があったら、「秒」を単位にして解答することになります。
問題文を思い出してみると……「何分何秒か答えなさい」と書いてありましたね。ここまで「分」を単位にして計算を進めてきたので、「秒」にあたる部分は「分」の単位に直して解答しましょう。
正解は、6分40秒です。
演奏時間の問題は、式に数値を代入して正しく計算すれば、確実に正しい解答に到達できます。ただ、式のなかのどの項を問う問題になっているのか、また、どのような単位での解答を求めているのかによって、式の使い方や代入の仕方、解答の方法が変化します。より複雑な問題やほかのパターンに出会ってさらにスキルを磨くには、『音大入試の「楽典」解き方のコツ&過去問トレーニング』の第9章「演奏時間」をどうぞ。
本書は、楽典の基本知識をインプットした人が入試問題を効率的に解けるようになるために、出題パターン別に解き方のトレーニングを行う、これまでになかった画期的な一冊です。
菅原真理子(監修・著)、井上ゆり子、堀優香、辻田絢菜(著)
2022年7月27日発売、B5判、176ページ、税込1870円
本書は、25年にわたり『音楽大学・高校 入試問題集』楽典問題の解答・解説執筆の中心人物であり、音大附属音楽教室で多くの受験生の指導も長年行うことで、音大の入試問題に精通している「受験生の味方」菅原真理子氏監修によるものです。
これまで楽典の入試対策書籍は、基礎知識の本と問題集は刊行されていたものの、これを繋ぐ入試対策のための「アウトプット・トレーニング」が効率的にできる書籍が見当たりませんでした。
本書はそこを解消すべく、菅原氏はじめ執筆陣の総力による知識体系と指導経験をベースにして、解き方や間違えやすいポイントを「まるで隣りで教えているように」わかりやすく解説しています。
特長は、近年の出題傾向に対応・実際に出題された近年の問題を使用、難問・奇問・レア問を排しオーソドックスな出題のすべてに対応、スムーズに学習が進む出題パターン別のアウトプット練習、「あるあるミス」「解き方のポイント」など工夫を凝らしたレイアウトなどです。
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