8つの歌曲(リート)第2曲「炎の色」——女性詩人メローの麗しい詩にのせた歌曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
女性詩人メローの麗しい詩にのせた歌曲 8つの歌曲(リート)第2曲「炎の色」
機に応じて作曲した数曲の歌曲を、ベートーヴェンは1795年ころまとめて出版する計画をたてた。しかし、結果的にこの「8つの歌曲」Op.52の出版は1805年まで待たなければならなかった。
第2曲「炎の色」は、奇しくもベートーヴェンと同い年の女性作家で詩人のゾフィー・メロー(1770~1806)の詩による。1792年秋にボンで作曲したもので、ウィーンに出てから1794年に第2稿を作っている。この詩人メローは文学者で詩人のクレメンス・ブレンターノ(1778~1842)と結婚することになる。
1節4行の詩が全8節あるが、2節ずつつなげた有節歌曲として作曲されているので、4回繰り返して全節を歌うことになる。
曲はアンダンテ・コン・モート、8分の6拍子のト長調。3小節の前奏で始まり、第11小節で詩の第1節を終え、第13小節から第2節となる(つまり、第4、6、8節も同じ)。この後半では一瞬ト短調への翳りを見せ、第21~24小節の後奏でも減七和音によるかげりがある。
「私は知っている、私が大好きな色のあることを、私はその色を金や銀よりずっと高い価値あるものと思っている。好んで額に飾り、衣装にも使う、私はそれを真実の色と名をつけた。確かに愛らしくたおやかな姿でバラは咲くけど、あっという間に色あせてしまう。だから人はそれを愛の花と呼ぶ、その魅力は素晴らしいのだけど、すぐにしぼんでしまう」と歌われる。そして、大空の青色、雪の色について語られ、最後に「真実の色は土砂降りの雨にも色落ちせず、焼き尽くすような太陽の光にも色あせない」と曲を閉じる。
解説:平野昭
炎の色こそ真実の色というすてきな詩に、ベートーヴェンのメロディがさらに彩りを添えていますね。ボン時代最後の歌曲です。
8つの歌曲(リート)第2曲「炎の色」Op.52
作曲年代:1792年秋(ベートーヴェン22歳)
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