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2021.10.22
10月の特集「映画と音楽」

映画音楽の名曲24選~ 音楽・舞台・映画の著者8名がおすすめ! 2021版

10月は「映画と音楽」特集。膨大な名曲の中から、特に音楽ファンなら一度は聴いてほしい映画音楽を、8名のONTOMOナビゲーターに3曲ずつ選んでもらいました。おすすめの理由を読みながら聴いてみよう!

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音楽が素晴らしい映画作品は、まるでオペラやミュージカルの舞台のように感じたり、サウンドトラックのみをクラシック音楽のように鑑賞したくなったりしませんか。今回は、作品を盛り上げる映画音楽の魅力をONTOMOナビゲーターがご案内します。また、番外編「この作曲家がおすすめ!」「特にクラシック音楽ファンにおすすめの映画音楽」もお楽しみに!

参加したONTOMOナビゲーター:
飯尾洋一岩崎由美桒田萌東端哲也NAOMI YUMIYAMA室田尚子山崎浩太郎よしひろまさみち(敬称略)

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ハリウッド映画編

『グレイテスト・ショーマン』より「This is Me」(2017年/監督:マイケル・グレイシー/アメリカ )

『グレイテスト・ショーマン』はヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画。ヒュー・ジャックマンのエンタテイナー性が、あますところなく味わえる作品。音楽は『ラ・ラ・ランド』のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールの作詞作曲チーム。レティ役のキアラ・セトルの歌う「This is Me」が圧巻だ。ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞。「お前など見たくないと言葉の刃で傷つけられても心の誇りは失わない。居場所はきっとあるはず。ありのままでいよう。これが私」という歌詞。彼女の魂の歌声は涙なくして聴けず、全身から勇気が湧きあがってくる。(岩崎由美

『スター・ウォーズ』メイン・タイトル(1977年/監督:ジョージ・ルーカス/アメリカ )

最高の映画音楽は、映画本体が古びても音楽だけが生き残る。これは昔のオペラで本体がほとんど上演されなくなっても一部の曲が演奏され続けるのと同じこと。マスネのオペラ《タイス》を観たことのある人は少ないが、「タイスの瞑想曲」は誰もが耳にしている。「スター・ウォーズ」も同じ領域に達しつつあるのでは。ウィーン・フィルもベルリン・フィルも演奏する古典になった。(飯尾洋一

イントロ部分だけで作品名が出てくるほどのインパクトと、一気に作品に没入させるパワーは、その後のフランチャイズにも影響を与えた一作。オーケストラによるスコア/サントラ黄金期を復活させた功績は大きい。(よしひろまさみち

『美女と野獣』(1992年/監督:ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイズ/アメリカ)

ディズニー・ミュージカルの定番中の定番となった楽曲群、プラス主題歌もキャッチー。スコアのパートもドラマチックで、その後のテーマパークでアトラクションやパレードで使える汎用性の高さもパーフェクト。(よしひろまさみち

『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021年/監督:スティーブン・スピルバーグ/アメリカ)

“作曲家”バーンスタインの最高傑作ミュージカル、2度目の映画化で監督は子どもの頃からこの音楽を愛してきたという巨匠スピルバーグ。舞台背景や物語はよりリアルに当時を再現し、音楽も名曲の宝庫であるミュージカル・ナンバーはそのままに、名門ニューマン・ファミリーの長男デヴィッドがオリジナル・スコアにアレンジを加えたものを使用。おまけにオーケストラの指揮はグスターボ・ドゥダメルって……これ文句なしに第1位では?(東端哲也

*2021年12月10日公開予定

『アラモ』(1960年/監督:ジョン・ウェイン/アメリカ)

1836年のテキサス独立戦争でメキシコの大軍を引き受けて果敢に戦い、全滅するアラモ砦の物語。ジョン・ウェインが主演と監督をつとめた大作で、作品の評価はあまり高くない。しかしティオムキンの音楽はとても魅力的。故国ウクライナの民謡を借りた「遥かなるアラモ」(The Green Leaves of Summer)は物哀しく美しく、ブラザース・フォアの歌で有名。メキシコ軍の軍歌「皆殺しの歌」は、西部劇の快作『リオ・ブラボー』でも効果的に使われた名旋律。(山崎浩太郎

『ゴッドファーザー』より「愛のテーマ」(1972年/監督:フランシス・フォード・コッポラ/アメリカ)

映画『ゴッドファーザー』のサントラを聴くと、まだこの時代の映画はオペラの後裔なのだと感じる。ニーノ・ロータの音楽があまりに雄弁で、音楽と物語が密接に結びついている。この音楽抜きの『ゴッドファーザー』を想像できるだろうか。あまりに名曲すぎて、うっかりすると店内BGMなどで流れてくることがある。一瞬にして気分はコルレオーネ・ファミリーの一員だ。(飯尾洋一

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021年/監督:スティーブン・チョボスキー/アメリカ)

トニー賞6部門に輝くヒット・ミュージカル待望の映画化。『ラ・ラ・ランド』の「City of Stars」をハーウィッツと共作し『グレイテスト・ショーマン』の「This is Me」を作曲した名コンビ、パセク&ポールの書いたナンバーが登場人物の台詞や心の叫びとして、銀幕の世界と完全融合。主役を続投したベン・プラットも素晴らしいが映画キャスト陣の歌唱も素敵。特にエヴァン母役のジュリアン・ムーアが歌う「So Big/So Small」に涙。(東端哲也

『ジョーカー』(2019年/監督:トッド・フィリップス/アメリカ)

『ジョーカー』バットマンシリーズの悪役、ジョーカー誕生の物語。ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技力が炸裂する傑作だ。音楽は、アイスランド出身のチェロ奏者で作曲家のヒドゥル・グドナドッティル。ジョーカーの孤独をうつしだすチェロのソロから始まるが、徐々に彼の怒りが大きくなりその怒りに飲み込まれると、オーケストラのボリュームが上がる。また、挿入される往年の名曲がストーリーの造詣を深める。アカデミー作曲賞を受賞。うとまれ、蔑まれ、排他される絶望と悲しみが、人を悪にする。(岩崎由美

『インセプション』(2010年/監督:クリストファー・ノーラン/アメリカ)

比較的近年の映画で音楽が効果的だと思ったのが、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』。着々と時を刻む重厚なサウンドはどこか空虚で、現実感を希薄にする。登場人物が夢の階層を深く潜り、そこでは時の流れも変化するという設定にふさわしい。夢の中で流れている背景の音楽とはこういったものかもしれない。(飯尾洋一)

『アベンジャーズ』シリーズ(2012年/監督:ジョス・ウェドン/アメリカ)

アラン・シルヴェストリといえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)を塗り替え、さらに60代後半〜70代にして大現役ということを「アヴェンジャーズ」シリーズで見せつけてくれた。ジョン・ウィリアムズのオーケストレーションと似てるなんて、もう言わせない。(よしひろまさみち

『リスペクト』(2021年/監督:リーズル・トミー/アメリカ)

2018年に亡くなった最強ディーヴァの伝記映画だけに、誰がアレサ・フランクリンを演じ、「Respect」や「Think」といった(単なるヒット曲にあらず、アフリカ系アメリカ人の尊厳を象徴し、女性の権利や自由を強烈に訴えるシンボルとして社会を変える大きな力となった)スーパー・ソングを歌えるかが鍵となるが、ジェニファー・ハドソンの起用は生前に本人が指名していたらしく超納得。キャロル・キングも参加して完成させた渾身のオリジナル曲も鮮烈。(東端哲也

『指輪物語』(1978年/監督:ラルフ・バクシ/アメリカ)

同じ原作による映画では『ロード・オブ・ザ・リング』3部作が圧倒的に有名だが、これはその20年ほど前のラルフ・バクシ監督のアニメ版の音楽。映画は不評で物語の前半だけで終わってしまったが、音楽に関していえばこちらのほうが魅力的だと思う。テーマ曲の印象的なマーチ、不気味なナズグルとバルログ、勇壮なローハン騎士団、手に汗握る角笛城の合戦など、『エデンの東』の名旋律を書いた名匠が存分に才能を発揮している。(山崎浩太郎

ヨーロッパ映画編

『ロシュフォールの恋人たち』より「双子の歌」(1967年/監督:ジャック・ドゥミ/フランス)

フランスの港町を舞台に、双子の姉妹(当時「世界一美しい姉妹」と呼ばれたカトリーヌ・ドヌーブと姉のドルレアック)が運命の恋人を想って歌うデュエット曲。多幸感に満ちたミシェル・ルグランの楽曲をカラフルなドレスで歌って踊る2人のシーンは、何度見ても夢の世界に浸れます。ルグランは『シェルブールの雨傘』も素敵ですが、巣籠り生活が続く今、元気が出るのはこれですね。(NAOMI YUMIYAMA

『ベニスに死す』(1971年/監督:ルキノ・ヴィスコンティ/イタリア・フランス合作)

厳密には「映画音楽」ではないけれど、この作品におけるマーラーの交響曲第5番第4楽章はあらゆる「映画音楽」を凌駕していると思う。ヴィスコンティの凄さがわかるし、マーラーの凄さもわかる。(室田尚子

*オリジナルはフランコ・マンニーノ指揮 サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の演奏

『最強のふたり』(2011年/監督:エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ/フランス)

『最強のふたり』は、身体が不自由な主人公と介護人として雇われた男性との心温まる物語。全編に流れる優しく繊細な音楽は、観客の心の奥底に語り掛けてくる。現代のサティと言われるイタリアの作曲家、ピアニスト、映画音楽家ルドヴィコ・エイナウディは、ヨーロッパを中心に世界中で絶大な人気を誇っている。彼の作品は、いつも魂の旅を味わわせてくれる。2020年アカデミー賞作品賞『ノマドランド』の音楽も手掛けているが、ここではアメリカの大自然を走る主人公の心のありようが音楽で映し出されている。(岩崎由美

『軽蔑』の「カミーユのテーマ」(1964年/監督:ジャン=リュック・ゴダール/フランス、イタリア)

 『勝手にしやがれ』のゴダールが、フランスの大スターだったブリジッド・バルドーを主演にしたメロドラマ。甘美で壮大なムードを持つ楽曲が、青いターバンが似合うバルドーと「オデュッセア」の神話的な世界観を際立たせます。作曲は“フランス映画のモーツアルト”と呼ばれたジョルジュ・ドルリュー。彼の楽曲では野田秀樹の舞台『半神』で使われた「アグネス」も忘れられません。(NAOMI YUMIYAMA

『炎のランナー』(1981年/監督:ヒュー・ハドソン/イギリス)

1924年のパリ・オリンピックで優勝した2人のイギリスの短距離走者の物語。ギリシャ人ヴァンゲリスによるテーマ曲は、シンセサイザーによる響きが当時は新鮮だったし、現代ではスポーツ映画の音楽の古典といっていい地位を確立している。サントラ盤はヴァンゲリスのシンセサイザーの響きだけだが、映画ではヒューバート・パリーの合唱の名曲《エルサレム》がラストで感動的に歌われる(原題もその歌詞からとられている)。(山崎浩太郎

『ピアノ・レッスン』より「楽しみを希う心」(1993年/監督:ジェーン・カンピオン/オーストラリア)

有名な曲ですが、数年前、アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリー映画で久しぶりに聴いて、改めて良さを実感しました。『ピアノ・レッスン』はニュージーランド出身のジェーン・カンピオン監督によるフェミニズム映画の先駆け的な名作。保守的な時代から飛び立とうとするヒロインの心を代弁し、背中をそっと押してくれるようなピアノのメロディに勇気がもらえます。(NAOMI YUMIYAMA

『太陽がいっぱい』(1960年/監督:ルネ・クレマン/フランス、イタリア)

ミュージカル映画以外で「映画音楽」というものの素晴らしさを初めて意識した作品のひとつ。ニーノ・ロータの名前もこれで覚えた。映画の衝撃のラストとともに冒頭のトランペットは忘れられない。(室田尚子

『ひまわり』(1970年/監督:ビットリオ・デ・シーカ/イタリア)

ある時期、自分の中のベスト・チューンだった。ヘンリー・マンシーニのメロディラインは本当に映画向き。ピアノで練習もしました。(室田尚子

邦画編

『竜とそばかすの姫』(2021年/監督:細田守/日本)

傷を抱えた女子高生が、全世界から人々が集まる仮想空間に足を踏み入れ、歌姫として成長する物語。ストーリーで音楽が重要な存在を担っていることもあり、その音楽制作のスケールの大きさに度肝を抜かれます。中村佳穂とmillenium parade、岩崎太整、Ludvig Forssell、坂東祐大など、まさに「今」聴くべき音楽家が結集し、クリエイティブなエネルギーが溢れる映画。圧倒せざるを得ません。(桒田萌

『海獣の子供』(2019年/監督:渡辺歩/日本)

ジュゴンに育てられた少年たちに出会った少女が、海の生物に出会うひと夏の海洋冒険物語です。私たち人間には見えない、海中のさまざまな事象。その真髄を示すのが、美しく躍動感ある映像や、それと一体化しながら海の深淵さを伝える久石譲の音楽です。感傷的ではなく、ミニマル作曲家としての本領が発揮されています。作品の神秘性に見事に合致したエンディングの米津玄師『海の幽霊』にも、思わず息を飲みます。(桒田萌

『罪の声』(2020年/監督:土井裕泰/日本)

1984〜85年に起きたグリコ・森永事件を題材に、脅迫電話に使われた子どもの「声」の謎に迫る作品です。音楽担当は佐藤直紀。物語の骨格を浮き立たせるドラマチックな劇伴が印象的な佐藤さんの音楽ですが、『罪の声』ではメロディアスな雰囲気よりも、ミステリアスな作風を徹底。事件に関わってしまった人々の悲しみをより際立たせるという意味で、物語に一途に寄り添うような、佐藤さんの職人技に魅せられます。(桒田萌

番外編1:この作曲家がおすすめ!

ジョン・ウィリアムズ

『シンドラーのリスト』ヴァイオリンソロの演奏が秀逸。テルアビブ生まれのユダヤ人であり、20世紀における最も偉大なヴァイオリニストの一人イツァーク・パールマンの演奏が楽しめる。(岩崎由美

佐藤直紀

映画ではありませんが、現在放送中の大河ドラマ『青天を衝け』は素晴らしいです。メインテーマが壮大で美しく、また「ここを観るべし!」と抑えるべきシーンが音楽でわかります。おまけでおすすめなのは、2011年放送の連続テレビ小説『カーネーション』。佐藤直紀さんが音楽担当だと、それだけで作品への期待が一気に高まります。(桒田萌

ベアー・マクレアリー

映画と云うより『エージェント・オブ・シールド』や『アウトランダー』、『ウォーキング・デッド』ら大ヒット・TVドラマ・シリーズの音楽を手掛けていて、ファンの間ではカリスマ的な人気を誇る作曲家。牧歌的な旋律と打楽器とかを多用して畳みかけるような勇ましいサウンドが特徴。映画では2019年公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』での伊福部昭(ゴジラ・テーマ)と古関裕而(モスラ・テーマ)両巨匠の世界と融合した大スペクタクルなスコアが最高。(東端哲也

番外編2:クラシックファンにおすすめの映画

『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年/監督:エメラルド・フェネル/アメリカ)

アラサー女性が男たちに復讐する人間ドラマ、『プロミシング・ヤング・ウーマン』。この作品に登場する「愛の死」の使い方をクラシックファンに見て欲しいです。ブリトニーやパリス・ヒルトンのポップな曲がかかる中、不意打ちのように流れるこの曲がヒロインの想いを代弁して魂を揺さぶります。(NAOMI YUMIYAMA

『ダウントン・アビー』(2020年/監督:マイケル・エングラー/イギリス)

映画よりも、世界中を席巻した英国のテレビ・シリーズ『ダウントン・アビー』の音楽で知られる作曲家ジョン・ラン。スコットランドの出身で実はオペラも手掛ける実力派です。2019年に公開された映画版『ダウントン・アビー』にも、高鳴る胸の鼓動を思わせるドラマティックで格調高い(※20世紀初頭の英国貴族の生活を描いた物語なので!)TVオープニング・テーマの耳に残る旋律が度々登場するので、クラシック・ファンにもお勧めしたい。(東端哲也

『独裁者』(1940年/監督:チャールズ・チャップリン/アメリカ)

チャップリンの『独裁者』。世界征服を夢見る独裁者が地球儀をもて遊ぶ場面で使われるワーグナーの《ローエングリン》第1幕への前奏曲が、ラストの演説後の場面では感動的に鳴り響く。音楽は使われる場面によってまったく意味が違ってくることを、わかりやすく教えてくれる。(山崎浩太郎

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