プレイリスト
2020.08.09
おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—第5回

「私はこの世に何を求めよう」——三位一体後第9主日

音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノやオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏。音...

17世紀オランダの詩人、画家ヤン・ルイケンによる「不正な管理人」のエッチング。

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今日ご紹介するのはカンタータ「私はこの世に何を求めよう」BWV94。

作品が初演されたのは、1724年の三位一体後第9主日(その年は8月6日でした)。この日、ライプツィヒの礼拝で朗読されたのは、新訳聖書「ルカによる福音書」16の1から9。イエスが弟子たちに語った「不正な管理人」の話です。

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主人の財産を無駄遣いしていることが発覚したお金の管理人が、失業しても助けてくれる友人を作ろうと、債務者の借金を少なくしてあげた。それを知った主人が、その管理を賢いと褒めた。このような話をしたあとで、イエスは不正にまみれた富で友だちをつくりなさい。そうしておけば、金がなくなったとき、あなたがたは永遠の住まいに迎え入れてもらえる、というものです。

イエスのたとえ話は難しいですね。

16:01イエスは、弟子たちにも次のように言われた。「ある金持ちに一人の管理人がいた。この男が主人の財産を無駄使いしていると、告げ口をする者があった。 16:02そこで、主人は彼を呼びつけて言った。『お前について聞いていることがあるが、どうなのか。会計の報告を出しなさい。もう管理を任せておくわけにはいかない。』 16:03管理人は考えた。『どうしようか。主人はわたしから管理の仕事を取り上げようとしている。土を掘る力もないし、物乞いをするのも恥ずかしい。 16:04そうだ。こうしよう。管理の仕事をやめさせられても、自分を家に迎えてくれるような者たちを作ればいいのだ。』 16:05そこで、管理人は主人に借りのある者を一人一人呼んで、まず最初の人に、『わたしの主人にいくら借りがあるのか』と言った。 16:06『油百バトス』と言うと、管理人は言った。『これがあなたの証文だ。急いで、腰を掛けて、五十バトスと書き直しなさい。』 16:07また別の人には、『あなたは、いくら借りがあるのか』と言った。『小麦百コロス』と言うと、管理人は言った。『これがあなたの証文だ。八十コロスと書き直しなさい。』 16:08主人は、この不正な管理人の抜け目のないやり方をほめた。この世の子らは、自分の仲間に対して、光の子らよりも賢くふるまっている。 16:09そこで、わたしは言っておくが、不正にまみれた富で友達を作りなさい。そうしておけば、金がなくなったとき、あなたがたは永遠の住まいに迎え入れてもらえる。

新共同訳聖書より「ルカによる福音書」第16章1~9

バッハが1724年8月6日の礼拝のために作曲したこのカンタータは、むしろ朗読箇所に続くイエスの言葉を読むと理解できるような気がします。

「……どんな召使も二人の主人に仕えることはできない、一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。あなたがたは、神と富とに仕えることはできない」。

同名のコラールに基づく冒頭の合唱曲は、「この世の宝の山に何を求めよう。わたしは、ただあなただけを喜びとしているし、あなたこそが私の平安」と歌い、その後に続く曲でも、現世的な富や栄誉は虚しく儚い。だからこそ私の魂はイエスを求める、イエスこそ私の命、私の財産と述べているのです。

この曲の最大の特徴は、フルートが大活躍することでしょう。冒頭の合唱や、第4曲のアルトのアリアなどはフルート協奏曲といえるほどです。当時のフルートはイタリア語でフラウト・トラヴェルソと言いますが、木管に指孔が6つにキーが1つという素朴な作りの楽器で、柔らかく甘美な音色が人気でした。

バッハの時代の楽器による、トン・コープマンとアムステルダム・バロック管弦楽団らの演奏をお楽しみください。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノやオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏。音...

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