プレイリスト
2020.11.29
おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—第23回

「さあ来てください、異邦人の救い主よ」BWV61——待降節第1日曜

音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノやオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏。音...

中世後期のイタリア人画家ジョット・ディ・ボンドーネ作「イエルサレム入城」。

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おはようございます。今日は教会暦の1年の始まりの日、待降節(降臨節とも)第1日曜日。

ドイツではクリスマス(待降祭)の前の4週間前の日曜日から、町のマルクト(広場)にクリスマス・マーケットが立ち、もみの木やお菓子、手工芸品などが売られます。夜もあかあかと明かりが灯り、そのようなお店で食べるソーセージや、さまざまな香辛料や赤ワインのお燗(グリューワイン)には格別な味わいがあります。

19世紀ニュルンベルクのクリスマスマーケットの様子が描かれたリトグラフ。

また、家では丸く編んだ常緑樹の枝に4本のろうそくを立てたリース飾りのアドヴェント・クランツを作り、日曜ごとにろうそくを一本ずつ灯し、子どもたちはアドヴェント・カレンダー(クリスマスまでの日数の小窓があり、中に小さなお菓子や玩具が入っている)の小窓を空けていきます。それはまさにドイツの冬の風物詩であり、寒くて暗い冬の心温まるひと時です。

1903年に作られたアドヴェント・カレンダー
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そこで本日は、バッハがヴァイマールの宮廷楽団の楽師長を務めていた1714年の待降節第1日曜(12月2日)に初演されたカンタータ第61番をお届けします。

この日の礼拝の聖書の朗読箇所は「マタイによる福音書」第21章1~9節「エルサレムに迎え入れられる」。イエスが子ロバに乗って群衆の祝福の大歓声に迎えられてエルサレムに入る場面です。

21:01一行がエルサレムに近づいて、オリーブ山沿いのベトファゲに来たとき、イエスは二人の弟子を使いに出そうとして、 21:02言われた。「向こうの村へ行きなさい。するとすぐ、ろばがつないであり、一緒に子ろばのいるのが見つかる。それをほどいて、わたしのところに引いて来なさい。 21:03もし、だれかが何か言ったら、『主がお入り用なのです』と言いなさい。すぐ渡してくれる。」 21:04それは、預言者を通して言われていたことが実現するためであった。 21:05「シオンの娘に告げよ。『見よ、お前の王がお前のところにおいでになる、柔和な方で、ろばに乗り、荷を負うろばの子、子ろばに乗って。』」 21:06弟子たちは行って、イエスが命じられたとおりにし、 21:07ろばと子ろばを引いて来て、その上に服をかけると、イエスはそれにお乗りになった。 21:08大勢の群衆が自分の服を道に敷き、また、ほかの人々は木の枝を切って道に敷いた。 21:09そして群衆は、イエスの前を行く者も後に従う者も叫んだ。「ダビデの子にホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように。いと高きところにホサナ。」

新共同訳聖書より「マタイによる福音書」21章1〜9節

編成はソプラノ、テノール、バスに合唱、弦楽と通奏低音ですが、弦楽器の各パートが2群に分かれているのが特徴的です。

カンタータは序曲(合唱)で幕を開けます。これは、当時のドイツの宮廷で流行していた、フランスの劇音楽の「フランス風序曲」のスタイル(付点音符をもつ荘重な部分と対位法的な速い部分からなります)に、ルターによるカンタータと同名のコラールの第1節が組み込まれています。イ短調の悲劇的な調子を帯びているのは、イエスのその後の十字架刑を暗示しているためです。

続いてテノール(レチタティーヴォとアリア)が、「救い主が来て、その身に私たちの貧しい血と肉を受け、私たちを血縁としてくださった。最高の善よ、あなたが私たちにしてくださらないことがありますか。あなたは日々、私たちのもとに来て私たちのために善きことを行ない、あなたの光を溢れる祝福で輝かせるのです」と語り、「来てください。イエスよ、あなたの教会に。幸多き新年を与えてください。御名の栄光を引き立て、健やかな教えを行ない、説教壇と祭壇を祝福してください」と歌います。

今度はバス(レチタティーヴォ)が、弦楽のピツィカートを背景に「ヨハネの黙示録」のイエスの言葉を語ります。「見よ、私は戸口に立って叩いている。誰か私の声を聴いて戸を開ける者があれば、私はその者のところに入り、晩餐を共にしよう」。

それに応えるのはソプラノ(アリア)。チェロに伴われて、ソプラノが夢見るようなまなざしで、「開けよ、わたしの心よ。イエスが来てお入りになるのだから。わたしが塵や土に過ぎなくても、蔑むことなく顧みてくださり、わたし自身を隅かにしてくださる。おお、そうなればなんと幸福なことでしょう」と歌います。

最後はニコライ作のコラール「いとも麗しき明けの明星」の一節で曲を閉じます。「アーメン、アーメン。来てください。美しい喜びの王冠よ、もう待たせないで。あなたの到来を心からお待ちしています」。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノやオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏。音...

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