プレイリスト
2021.04.18
おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—第51回

《汝イスラエルの牧者よ、お聴きください》BWV104——復活後第2日曜日

音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...

バロック期スペインの画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作『善き羊飼い』。

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おはようございます。本日は復活祭から2度目の日曜日。1724年のこの日(4月23日)にライプツィヒの教会の礼拝で演奏されたカンタータ第104番を聴きましょう。

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この日の朗読箇所はヨハネ10章、12から16節。羊は信徒、羊飼いはイエスの喩えですね。羊のために命を捨てるのがよい羊飼い。

10:12羊飼いでなく、自分の羊を持たない雇い人は、狼が来るのを見ると、羊を置き去りにして逃げる。——狼は羊を奪い、また追い散らす。——10:13彼は雇い人で、羊のことを心にかけていないからである。 10:14わたしは良い羊飼いである。わたしは自分の羊を知っており、羊もわたしを知っている。 10:15それは、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。わたしは羊のために命を捨てる。 10:16わたしには、この囲いに入っていないほかの羊もいる。その羊をも導かなければならない。その羊もわたしの声を聞き分ける。こうして、羊は一人の羊飼いに導かれ、一つの群れになる。

新共同訳聖書より「ヨハネによる福音書」10章12〜16節

バッハがこの日のために書いたのは、小規模ですが、牧歌的な趣がチャーミングなカンタータです。編成はテノールとバス、合唱、オーボエ2、オーボエ・ダモーレ(愛のオーボエ)2、オーボエ・ダ・カッチャ(狩のオーボエ)、弦楽と通奏低音。

第1曲は合唱。リード楽器のオーボエ属の素朴な響きや、バクパイプを思わせる持続低音が、羊飼いたちのパストラーレ(田園牧歌)の世界にぴったり。旧約聖書の詩篇80の聖句をもとにした歌詞を伸びやかに歌います。「イスラエルの牧者よ、聴いてください。ヨゼフを羊のように守られる方よ、来てください。ケルビムの上に座る方よ」。

続いてテノール(レチタティーヴォとアリア)が、「いと高き羊飼いが、私を守ってくださる。私が不安に思ったところで何になるのか。毎朝、羊飼いの善き業は新たになる。私の心よ、神は誠のお方と知るがよい」と語り、「私の羊飼いは長い間隠れ、荒野は私を脅かしている。それでも私の弱い足取りは前に進む。私の口はあなたに向かって叫ぶ。私の羊飼いよ、あなたは私の中に働きかけ、アッバと呼ばせてくださる」と歌います。アッバとはアラム語で父のこと。新約聖書「ガラテヤの信徒への手紙」第4章に、「あなたがたが子であることは、神が『アッバ、父よ』と叫ぶ御子の霊を、私たちの心に送ってくださった事実から分かります」とあります。

これを受けてバス(レチタティーヴォとアリア)が、「そうです。この言葉は私の魂の糧なのです。私の胸を元気づけてくれる。私の喜びの野原。すでに天国を味わせてくれる、私のすべて! ああ、よき羊飼いよ、今こそ、私たち惨めにも迷う者たちを集めてください。苦しみの道を終わらせ、あなたの牧場に導いてください」と語り、安らぎに満ちた管弦楽の伴奏で「羊飼いイエスの幸福な群れよ。この世はお前たちの天国。イエスの善き業を味わい、信仰の報いを待ち望め、穏やかな死の眠りの後で」と歌います。

そして合唱によるコラールで曲を閉じます。「主は真実の羊飼い。私は心から信じます。主はご自分の羊を緑の水のほとりの草地に導き、聖なる恵みの御言葉で、私の魂を元気づけてくださる」

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...

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