プレイリスト
2021.05.16
おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—第56回

《彼らはあなた方を追放し》BWV183——復活後第6日曜日

音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...

19世紀のフランス人画家ジェームズ・ティソ作『最後の説教』。

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復活後第4日曜(主日)から1725年の教会カンタータをお送りしています。復活後第6日曜の今日は、同年5月13日にライプツィヒの教会で演奏された183番を聴きましょう。

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福音書は「ヨハネ第15章26節から第16章4節」。実は復活後第4日曜に読まれた朗読箇所の前の部分にあたり、イエスが弟子たちに迫害の預言について語るところです。ここでいう弁護者、真理の霊とは聖霊のこと。

15:26わたしが父のもとからあなたがたに遣わそうとしている弁護者、すなわち、父のもとから出る真理の霊が来るとき、その方がわたしについて証しをなさるはずである。 15:27あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのだから、証しをするのである。 16:01これらのことを話したのは、あなたがたをつまずかせないためである。 16:02人々はあなたがたを会堂から追放するだろう。しかも、あなたがたを殺す者が皆、自分は神に奉仕していると考える時が来る。 16:03彼らがこういうことをするのは、父をもわたしをも知らないからである。 16:04しかし、これらのことを話したのは、その時が来たときに、わたしが語ったということをあなたがたに思い出させるためである。」「初めからこれらのことを言わなかったのは、わたしがあなたがたと一緒にいたからである。

新共同訳聖書より「ヨハネによる福音書」15章26〜16章4節

台本はマリアーネ・フォン・ツィーグラー。編成はソプラノ、アルト、テノール、バスの独唱に合唱、オーボエ・ダモーレ2、オーボエ・ダ・カッチャ2、ヴィオロンチェロ・ピッコロ(小型のチェロ)、弦楽に通奏低音です。

冒頭、バス(レチタティーヴォ)が「ヨハネ第16章第2節」のキリストの言葉「彼ら(人々)はあなた方を会堂から追放するだろう。しかも、あなたがた殺す者が皆、自分は神に奉仕していると考える時が来る」と告げます。4本のオーボエ属の楽器とオルガンが神々しい響きを添えます。非常に厳しい言葉ですが、テノール(アリア)が柔らかなヴィオロンチェロ・ピッコロとともに、「わたしは死の脅かしも恐れないし、どのような災厄にもひるまない。イエスがその守りの腕でかばってくださるから。わたしは喜んでそれに従う。お前たちが自分で神に仕えていると思っていても、神御自らがお前たちに報いるだろう。だからすべてをゆだねるのだ」と歌います。なお、この演奏では腕で支える小型のチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラが用いられています。

するとアルト(レチタティーヴォ、アリア)も「わたしは血とささやかな生命をあなたに捧げる準備ができています。わたしのすべてはあなたに捧げられるべきもの。どれほどひどいことが起ころうとも、あなたの霊が傍にいてくださるのでわたしの心は安らいでいます」と言い、力強い伴奏とともに「いと高き慰めのお方、聖なる霊よ。わたしに道を示して下さるお方。わたしはその道に従って歩みます。わたしの弱さをお助けください。あなたの気遣いはわたしの幸福のためであることをわたしは知っています」と歌います。豊かな装飾音が心の喜びを表現するたいへん美しい歌です。

そして聖霊を讃美する四声体のシンプルなコラールで曲を閉じます。「あなたは、どのように正しく祈るべきかを教えてくださる霊。あなたの祈りは聞き届けられる。あなたの歌声は天にまで届き、私たちを助けてくださるまでその上昇は止まることはない。それができるのはあなただけ」

来週の日曜日は、いよいよその聖霊が降臨する聖霊降臨日(ペンテコステ)です。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...

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