《これほどまでに神は世を愛された》BWV68——聖霊降臨節第2日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
おはようございます。本日は聖霊降臨節第2日。1725年のこの日(5月21日)にライプツィヒの教会で演奏されたカンタータ第68番です。
朗読された聖書は「ヨハネの福音書」第3章16節から21節。ファリサイ派に属するユダヤ人たちの議員ニコデモと論争をするイエスが、神は独り子を与えたほど世を愛された」、世を救うために独り子を遣わしたと語ります。ここでいう神の独り子とは、イエス・キリストのことです。
03:16神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。 03:17神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである。 03:18御子を信じる者は裁かれない。信じない者は既に裁かれている。神の独り子の名を信じていないからである。 03:19光が世に来たのに、人々はその行いが悪いので、光よりも闇の方を好んだ。それが、もう裁きになっている。 03:20悪を行う者は皆、光を憎み、その行いが明るみに出されるのを恐れて、光の方に来ないからである。 03:21しかし、真理を行う者は光の方に来る。その行いが神に導かれてなされたということが、明らかになるために。」
編成はソプラノ、バス 合唱、ツィンク(コルネットとも。リコーダーのような指孔のついた木管楽器。マウスピースで演奏する)、トロンボーン3、オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、ヴィオロンチェロ・ピッコロ(小型チェロ)、弦楽と通奏低音。シンプルですが、とても魅力的なカンタータです。
1曲目はコラール(賛美歌)合唱。シチリアーノ(バロック期に流行した、付点音符が特徴の舞曲)風の揺れるようなリズムで、合唱がコラール「これほどまでに神は世を愛された。その一人子をわたしたちに差し出されるほどに。彼に信仰とともに身をゆだねる者は彼の地で主と共に永遠に生きるように定められ、自分のために主イエスが生まれたと信じる者は永遠に滅びない」と歌います、とても優雅な音楽です。続いてソプラノ(アリア)が弦楽と通奏低音の踊るような伴奏で、「わたしの信じる心よ、喜べ、歌え、戯れよ、おまえのイエス様がいらしたのだ! 悲しみよ去れ、わたしはお前たちに、わたしのイエスがすぐそこに着たと言おう」と歌います。小型のチェロのソロが活躍して、どこかユーモラス。
今度はバス(レチタティーヴォとアリア)が、「わたしはペトロに倣い思い上がったりしない。わたしの慰めや喜びは、わたしのイエスがわたしを決して忘れないこと、主がこの世に来られたのは、この世を裁くためではない。主は神と人の仲介者として、罪と咎を調停するため」といい、「わたしはあなたがわたしのためにお生まれになったと信じているので、幸福な気持ちです。あなたはわたしのために成し遂げられたから。たとえこの地が崩れようが、サタンが攻めてきても、わたしはただあなたを拝するだけ」と歌います。ダンス風の音楽に、オーボエ属の楽器が独特な音色を添えます。最後の合唱曲も聖書のイエスの言葉「御子を信じる者は裁かれない。しかし、信じない者はすでに裁かれている。神の独り子の名を信じていないからである」。力強く確信に満ちた対位法的な音楽です。
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