《皇帝ヨーゼフ2世の死を悼むカンター夕》——演奏時間、編成ともにベートーヴェン初めての大作!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
演奏時間、編成ともにベートーヴェン初めての大作! 《皇帝ヨーゼフ2世の死を悼むカンター夕》
1790年2月20日、ウィーンで皇帝ヨーゼフ二世が逝去した。皇帝の実弟マックス・フランツが統治するボンにこの知らせが届くと、啓蒙主義と自由主義の象徴的存在であったボン読書協会がヨーゼフ二世の追悼式を企画し、1か月後の3月19日に行うことを決定した。当日はシュナイダー教授による追悼演説と、追悼カンタータの上演が決定され、そのカンタータの作曲者としてベートーヴェンが指名される。カンタータのテキストは神学を学ぶ学生であったセヴェリン・アントン・アヴェルドンク(1768~)が作詞した。アヴェルドンクは、ベートーヴェンの父親ヨハンの声楽の弟子で、少年ベートーヴェンが7歳で演奏会デビューしたときの共演者、宮廷コントラルト歌手、ヨハンナ・へレーナ・アヴェルドンクの実弟である。おそらく少年時代からの知己であったと思われる。
しかし、作詞の出来上がるのを待って作曲に取り掛かったものの、3月19日までには完成できなかったようだ。フル編成オーケストラに四重唱と混声合唱を必要とするおよそ40分前後の初めての大作《皇帝ヨーゼフ二世の死を悼むカンタータ》WoO87は、演奏されることもなく、およそ1世紀後の1884年に発見されるまで眠り続けることになる。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)29ページより
今日と明日は初期の大作、オーケストラ付きのカンタータ(レチタティーヴォとアリア、重唱と合唱からなる作品)2作品を紹介します。連載開始以降、最大規模の作品です。厳かな雰囲気をお楽しみください。
《皇帝ヨーゼフ2世の死を悼むカンター夕》WoO87
作曲年代:1790年3~6月(ベートーヴェン20歳)
初演:1884年11月
出版:1888年
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