「ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調」——新たなステージに進む前の集大成
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
新たなステージに進む前の集大成「ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調」
小山 弦楽四重奏曲に書き直されたOp14(ピアノ・ソナタ第9番)と同様に、Op22もパート間でのやりとりがとても緻密ですよね。自立した声部が交錯する感じがあって、そのまま管弦楽作品にも編曲できるような作風だと思うのですが……。
平野 テクスチャーには18世紀の特徴が見えますし、モーツァルトのピアノ協奏曲に近いテクニックが随所に用いられています。しかも主調が変ロ長調、第2楽章が下属調の変ホ長調で書かれていて、ベートーヴェンには珍しいほど古典的な構成感があります。ただし、全体は18世紀のソナタにはない4楽章構成です。
小山 (略)この「第11番」のソナタはOp2(第1〜3番)やOp7(第4番)のソナタでやってきたことの集大成のような位置づけにあると言ってもいいですね。
平野 そうですね。ベートーヴェンの古典的なスタイルに対する考え方を統合し、総決算した作品だと言えるでしょう。ちょうど1800年から翌年にかけて、ベートーヴェンは「実験期」に入っていました。今までにないことをやろうとしていたのです。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)88-89、91ページより
ベートーヴェンはこの作品を区切りとして、ピアノ・ソナタにおける新たな表現を模索しはじめます。この曲は、これまで書かれたピアノ・ソナタのまさに集大成。ベートーヴェンの進化を感じながら聴いてみてください。
「ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調」Op.22
作曲年代:1800年(ベートーヴェン29〜30歳)
出版:1802年3月ホフマイスター社
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