「ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調」——フィナーレには3バージョンが準備された大作
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
フィナーレには3バージョンが準備された大作「ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調」
(ヴァイオリン・ソナタは)10曲中9曲が1797年から1803年までの6年間に作曲、初演されている。ヴァイオリン・ソナタの最高傑作といわれる第9番「イ長調」作品47(《クロイツェル・ソナタ》)がこの集中的創作期の末尾を飾り、最後の第10番「ト長調」作品96は《クロイツェル》からほぼ10年の空白をおいて1812年に作曲された作品だ。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)250ページより
——ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、これまではピアノに対する装飾的なオブリガードの役割しか与えられてこなかったヴァイオリンの価値が高められ、書法的にも音楽的にもピアノとの対等性が強められている。
小山 「第6番」Op30-1は演奏機会が非常に少ないですが、大曲だと思います。しかも、この曲の第3楽章には3つ稿があるのですよね。そのうち第2稿がのちの《クロイツェル・ソナタ》に転用されているのはすごいことだなと。
平野 《クロイツェル・ソナタ》はヴァイオリニストのジョージ・ブリッジタワーがウィーンで演奏会を行うために急遽作曲しなくてはならず、時間のない中で書かれたものです。そのため、前年作曲しながらも、結果的に「第6番」には使われなかった楽章が用いられたのです。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)109-110ページより
本日ご紹介する第6番の第3楽章となるかもしれなかった稿が、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタで最高傑作とされる第9番《クロイツェル・ソナタ》に関係していたのは驚きです。
短期間で多くの作品が書かれたヴァイオリン・ソナタ。先行する作品と聴き比べて、ヴァイオリンの活躍を感じてみてください。
「ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調」Op.30-1
作曲年代:1801年〜02年春(ベートーヴェン31歳頃)
出版:1803年5月と6月
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