「ピアノ・ソナタ第23番 へ短調《熱情》」——ベートーヴェン死後につけられた愛称は誰が付けた?
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ベートーヴェン死後につけられた愛称の由来とは「ピアノ・ソナタ第23番 へ短調《熱情》」
ピアノ曲に限ったことではないが、「愛称」を曲名と思い込んでしまうと、誤った作品イメージを描いてしまうかもしれない。場合によっては、演奏解釈にまで影響を与えてしまうだろう。最近は少なくなったが、LPレコード全盛期にはどのレコード会社も「ベートーヴェンの三大ピアノ・ソナタ《悲愴》《月光》《熱情》」と銘打った商品で競い合っていた。大巨匠の再発盤から若手俊英のデビュー盤まで、好んで「三大ソナタ」がカップリングされていた。
もうひとつ、《熱情》の由来もベートーヴェン死後10年以上を経た1838年にハンブルクの音楽出版社クランツから出版された、「4手連弾版によるベートーヴェンのヘ短調ソナタ」の表紙に印刷されたSonata appassionata が初出で、以後オリジナルのOp57も《アパッショナータ(=熱情)》と呼ばれるようになった。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)71ページより
ベートーヴェンのピアノ・ソナタには「愛称」が付けられているものがたくさんありますが、彼自身が名付けたものは《悲愴》ソナタだけだと言われています。「ベートーヴェンの三大ピアノ・ソナタ」に数えられるこの《熱情》も本人が名付けたものではありませんでした。
「ピアノ・ソナタ第23番 へ短調《熱情》」Op.57
作曲年代:1804〜05年(ベートーヴェン34、35歳頃)
出版:1807年2月美術工芸社
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