「ピアノ協奏曲第4番 ト長調」——ピアノ協奏曲の歴史を変えた革新性
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ピアノ協奏曲の歴史を変えた革新性「ピアノ協奏曲第4番 ト長調」
平野 モーツァルトに「ピアノ協奏曲第9番《ジュナミ(従来はジュノーム)》」K271という作品があります。第1楽章冒頭からオーケストラのみが奏したと思ったら、すぐさま独走ピアノが応答する、というものです。それまでの協奏曲は本来、オーケストラの提示部があって、その後にピアノがもう一度主題提示するので、これはなかなか新鮮な内容なのですが、ベートーヴェンの「第4番」Op58のように、完全にピアノ独奏で開始、いきなり主題を提示するというのは初めての試みでした。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)32ページより
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番《ジュナミ》」K271〜第1楽章
突然ピアノの和音で開始されるピアノ協奏曲は当時としては異例なことで、こうしたベートーヴェンの革新性が新しい時代の音楽を切り開くことになるのですね。
このほかにも、演奏者によって即興されることが通例だった「カデンツァ」部分を自ら作曲、楽譜に書き残しています。
平野 ベートーヴェン自身がピアノ協奏曲をよりシンフォニックに捉え、長いカデンツァによって音楽のバランスが崩れるのを嫌ったことからきているのだと思います。次の《皇帝》では、もう楽曲の中に書き込んでいますからね。「自分以外のピアニストの即興によるカデンツァは厳禁!」というメッセージですね。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)37ページより
「ピアノ協奏曲第4番 ト長調」Op.58
作曲年代:1805年〜1806年(ベートーヴェン35歳〜36歳)
出版:1808年美術工芸
「ベートーヴェンとピアノ」続巻 発売中!
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