「この暗い墓の中で」——激しく苦悩を訴えるイタリア語歌曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
激しく苦悩を訴えるイタリア語歌曲「この暗い墓の中で」
イタリアの詩人ジュゼッペ・カルパーニ(1751-1825)の詩によるベートーヴェンの代表的な歌曲(アリエッタ)のひとつ。
「この暗い墓の中に、眠らせておいてくれ。冷酷な人よ、私が生きているときにこそ私を思うべきだったのに。冷酷な人よ」。
変イ長調、4分の2拍子、レントの遅いテンポで37小節からなる通作形式(歌詞が進むごとに異なる旋律を付け、繰り返しなどがない形式)。大変に充実した和声が深みを演出する。歌唱声部はレチタティーフ的(オペラの中で喋るように歌う部分)であったり、モノローグのように苦悩を訴えるが、激しい和音のトレモロ奏が感情の高まりを見事に表現する。
解説:平野昭
サリエーリに作曲を師事していた時期(1799年後半から1801年)以降、ドイツ語歌曲の作曲が多くなっていたベートーヴェン。久しぶりのイタリア語歌曲です。
ジュゼッペ・カルパーニは、オペラや歌曲の詩作家として活躍し、音楽家とも交流が深かった人物。ハイドンやモーツァルトとも面識をもち、後の1822年には同郷の天才作曲家ロッシーニとベートーヴェンの唯一の面会の仲介をしたりもしています。
「この暗い墓の中で」WoO133
作曲年代:1807年(ベートーヴェン36歳)
出版:1807年暮、1990年(第1稿)
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