「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調《皇帝》第2、3楽章」——協奏曲の醍醐味カデンツァをなくし作品に統一感を
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
協奏曲の醍醐味カデンツァをなくし作品に統一感を「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調《皇帝》第2、3楽章」
《皇帝》協奏曲は、全3楽章をシンフォニックな構成で有機的に統一感のある音楽として仕立てたものである。自らソリストとして初演するのではなく、はじめから第三者のピアニストが演奏することを想定していた。どれほど優れたピアニストであろうと、どんなにヴィルトゥオーゾ的技巧をもっていようと、また、それによって聴衆が大喝采するかもしれないとしても、自由即興のカデンツァにより作品の構成バランスや主題の意味、さらには全曲の有機的統一性が崩されることを嫌い、その結果、協奏曲として必要なカデンツァ風の楽段をあらかじめ作品の構成の中に準備したのである。第1楽章冒頭に華麗なピアノ独奏が鳴り響くことで、聴衆を一瞬にして魅了できるという自信があった。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)110、111ページより
第1楽章の冒頭の即興風ともいえるピアノ独奏は、確かに一瞬で引き込まれてしまいます。初演での聴衆の反応も気になりますよね。
ベートーヴェンは作品に統一性を持たせるため、協奏曲の醍醐味である完全即興のカデンツァをなくしました。第1楽章から聴いて、新しい作曲スタイルを感じてみてくださいね。
「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調《皇帝》」Op.73
作曲年代:1809年(ベートーヴェン38歳)
初演:1811年11月28日
出版:1811年2月ブライトコップフ&ヘルテル社(ライプツィヒ)
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