「ピアノ三重奏曲 変ロ長調《大公》」——唯一の作曲の弟子に献呈された人気作
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
唯一の作曲の弟子に献呈された人気作「ピアノ三重奏曲 変ロ長調《大公》」
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の中では、もっとも演奏機会が多い人気作のひとつ。ルドルフ大公に献呈されたことから、ズバリ《大公》の愛称で親しまれています。
小山 この曲の初演ではベートーヴェン自身がピアノ・パートを担当しましたが、献呈したルドルフ大公が演奏することもベートーヴェンは想定していたのでしょうか。ピアノ・パートはかなりスッキリと印象がありますが。(中略)
技巧的には激しく高度のものは要求されませんが、音楽的にはとても高度なものを要求される作品だと思います。規模も大きく力強さにも満ちていて、演奏する喜びがあります。だからこそ人気があるのでしょうね。ベートーヴェンがルドルフ大公という人物を本当に大切に思っていたことが伝わってきます。
平野 ルドルフ大公はベートーヴェンにとって唯一の作曲の弟子でもあります。ピアノの弟子はたくさんいましたが、作曲の弟子は彼だけ。ですからルドルフのために書いた曲や献呈した曲は、その作品を通して作曲の勉強もしてほしいという思いも込められていると思います。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)88ページより
この作品のほかにも、ピアノ・ソナタ《告別》や晩年の大作「ミサ・ソレムニス」など重要作の献呈を受けているルドルフ大公。本人の作品も少なからず残されており、録音を聴くこともできます。
ルドルフ大公作曲 クラリネット、チェロとピアノのための三重奏曲
神聖ローマ皇帝レオポルト2世の末子。ベートーヴェンの作曲とピアノの弟子であり、生涯にわたって親交があった。
「ピアノ三重奏曲 変ロ長調《大公》」Op.97
作曲年代:1811年(ベートーヴェン41歳)
出版:1816年9月
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