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2020.10.09
おやすみベートーヴェン 第299夜【不滅の恋人との別れ】

悲劇《レオノーレ・プロハスカ》のための音楽——実在した男装兵士の悲劇に寄せて作曲

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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実在した男装兵士の悲劇に寄せて作曲  悲劇《レオノーレ・プロハスカ》のための音楽

レオノーレ、と言ってもオペラ《フィデリオ》主人公の本名ではない。

ウィーン会議の開催されていた1814年秋から翌15年初夏までのあいだにウィーンを訪れたのは会議参加者ばかりではなく、多くの文化人もいた。プロイセン王ヴィルヘルム三世に同行してきた枢密院第1秘書官のJ.F.レオポルト・ドゥンカー(c.1768~1842)はベートーヴェンと交渉して、1813年に起きた戦時中の悲劇を描いた《レオノーレ・プロハスカ》という劇をベートーヴェンの音楽付きでウィーンで上演しようと考えていた。

ポツダム生まれの正義感の強い勇敢な少女レオノーレ・プロハスカは男装し、レンツと名乗って自由志願兵として解放戦争に出征。1813年9月16日のゲルデ近郊の戦闘で重症を負い、10月5日にダンネンベルクの町で死亡したのである。『エグモント』のクレールヒェン、《フィデリオ》のレオノーレにも相通ずる勇気ある女性を主人公とした悲劇にベートーヴェンも共感を覚え、1814年暮れから15年春にかけて4曲の音楽を書き上げている。

1曲「兵士の合唱」変ロ長調、4分の2拍子。わずか13小節の歌だが、3節が繰り返し歌われる。「われらは築き、そして死ぬ」と力強く歌われる。

2曲「ロマンツェ」歩くような速さで、ト長調、8分の6拍子。ハープによる序奏のあとにソプラノが「私の庭に花が咲き」と歌う22小節のロマンス。

3曲「メロドラマ」荘重に、しかし重くなりすぎずに、ニ長調、4分の3拍子。ハルモニカという楽器名は、口で吹くのではなくリードオルガンでの演奏だ。「かつてあの花は、お前を飾っていた」という語りと音楽で進む。

4曲「葬送行進曲」ロ短調、4分の4拍子。これは1801年に作曲したピアノ・ソナタOp.26の「葬送行進曲」変イ短調を調を変えてオーケストラ用に編曲したもの。

解説:平野昭

《フィデリオ》の主人公と同名、男装して戦いに挑むところまで同じ境遇の少女レオノーレ。彼女にベートーヴェンが何も感じなかったはずはありません。レオノーレは「ポツダムのジャンヌ・ダルク」と呼ばれ、ベートーヴェンが関わった悲劇のほかにも、リュッケルトをはじめ多くの詩人や劇作家の創作を刺激しました。

マリー・クリスティアーネ・レオノーレ・プロハスカ(1785〜1813)
作品紹介

 悲劇《レオノーレ・プロハスカ》のための音楽 WoO96

作曲年代:1814年暮~15年初春(ベートーヴェン44歳)

出版:1888年

ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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