プレイリスト
2020.10.16
おやすみベートーヴェン第306夜【不滅の恋人との別れ】

「チェロ・ソナタ第5番 ニ長調」——後期様式の入り口になる作品

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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後期様式の入り口になる作品「チェロ・ソナタ第5番 ニ長調」

「チェロ・ソナタ第5番 ニ長調」は、一昨日ご紹介した「第4番 ハ長調」とともに、気心知れたピアノの名手アンナ・マリア・エルデディー伯爵夫人と、彼女の家庭教師で、チェリストのヨーゼフ・リンケのために書かれた曲です。

この2曲には両者の高度な演奏技巧を前提としながらもベートーヴェン自身の創作様式の転換の試みが見られる。通俗性はなく、内省的で瞑想的でさえある。さらに後期様式への接近の兆しとして対位法的な表現が目立って増えている。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)250ページより

コーダにはとても長いトリルがありますし、こういったところからも後期の要素が見えてきます。

——小山実稚恵、平野昭著 『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)93ページより

この作品の第3楽章には、後期様式の特徴である大規模なフーガや長いトリルなどが現れます。「チェロ・ソナタ第5番」は、ベートーヴェンの後期様式への入り口だといえるでしょう。

作品紹介

「チェロ・ソナタ第5番 ニ長調」

作曲年代:1815年(ベートーヴェン44歳)

出版:1817年

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