2020.10.19
おやすみベートーヴェン 第309夜【不滅の恋人との別れ】
「憧れ」——希望に呼びかける、ライシッヒの詩による歌曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。
ONTOMO編集部
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
希望に呼びかける、ライシッヒの詩による歌曲「憧れ」
1815年暮れか16年はじめの、クリスティアン・ルートヴィヒ・ライシッヒ(1784~1847)の詩に作曲。6節の詩による通作歌曲なのだが、全34小節中で、ほぼ12小節毎に伴奏音形がガラッと変わる、変奏的な趣があり、詩の気分の変化を感じさせる。
ホ長調、4分の3拍子、感情をこめて、でも、遅くなりすぎないように。「静かな夜が、涼しい谷や空を闇で包む。愛の星は、優しく揺らめく湖の波間に輝く。自然の歌い手たちは小枝で黙し、神秘の沈黙が花咲く野に安らいでいる」。そして、最後には「優美な人、私の愛する人、どれほど憧れていることか、詩型を見せてくれ、私に微笑みかけてくれ、希望よ」と結ぶ。
解説: 平野昭
「はるか遠くからの歌」をはじめ、ベートーヴェンがかなりの数を曲付けしたライシッヒの詩。この「憧れ」が、ベートーヴェン最後のライシッヒによる歌曲です。短いながらも、工夫が凝らされた作品です。
作品紹介
憧れ WoO146
作曲年代: 1815年末/16年初頭(ベートーヴェン45歳)
出版:1816年6月
おやすみベートーヴェン
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