「ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調」——もはや「ソナタ」ではない? 最後のソナタ集の1曲目
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
もはや「ソナタ」ではない? 最後のソナタ集の1曲目「ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調」
「ピアノの新約聖書」とも呼ばれるベートーヴェンのピアノ・ソナタ32曲。最後の3曲は、ベートーヴェン自身が3曲セットで構想している旨を、出版社に宛てた手紙に書いています。
1曲目となる第30番は3楽章構成。3楽章のピアノ・ソナタによくある「急(ソナタ形式)-緩-急」という構成からは大きく外れ、2つの短い「急」楽章のあとに、15分にも及ぶ長大な「変奏曲」が置かれるという変則的な構成です。
平野 現在の普通の見方から考えれば、「ピアノ・ソナタ」といえば、ソナタ形式の使われた楽章を含む作品ということになり、ピアノ・ソナタの研究はソナタ形式理論に基づいて行われています。でも、私は最近それにしっくりしないものを感じているのです。あまりにも既成概念にとらわれてしまっていて、後世に作られた理論(ソナタ形式という名称と形式の定義は1830年代後半から40年代前半に確立)に基づいて、「これは例外」とか「これは革新だ!」といったことを述べるのは、作品の本質を捉えきれていないのではないかと。
小山 確かに……そもそもベートーヴェンがこれらのソナタを書いた頃は、「ピアノ・ソナタ」という概念が定まっていない時期でしたものね。
平野 むしろ、まったく別な形式構成というふうに捉える必要があるのではないかと思っています。形式名称はさておくとして。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)123ページより
「ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調」op.109
作曲年代:1820年(ベートーヴェン50歳)
出版:1821年11月アルタリア社、シュタイナー社同時出版
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