「星空の下の夕べの歌」——ベートーヴェンの力作! 来る死を想う歌曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ベートーヴェンの力作! 来る死を想う歌曲「星空の下の夕べの歌」
大変な力作。自筆譜が残されていて、1820年3月4日に作曲・完成されたことは明らかなのだが、この歌曲の詩人ハインリッヒ・ゲーブルに関しては、生没年を含めまったく知られていない。
この作品は、1820年ころからベートーヴェンとの交流が知られているウィーン大学医学部教授アントン・ブラウンホーファー(1780~1845)に献呈されている。
「日が沈み、1日が憩うとき、帳が降りる。魂はこの世から放たれ、あの世から届く密かな予感に身を震わせる。地上での巡礼はそう長くは続かない」と歌われる。
「かなり音を保つように(ドイツ語アンハルテンド=ソステヌート)」ホ長調、4分の4拍子。全81小節の通作歌曲。基本的には和声伴奏であるが、強い主張は分厚い3連音符和音の伴奏の上で高音域で歌われる。
解説: 平野昭
「あの世から届く密かな予感」「地上での巡礼」など、死を連想させる歌詞が、美しいメロディに載せて歌われます。この時期、ベートーヴェンはリウマチ熱で寝込んでおり、体調の悪化も詩の選択に影響しているかもしれません。
晩年の卓越した表現技法とベートーヴェンの内に秘められた想いを味わってみましょう。
「星空の下の夕べの歌」WoO150
作曲年代:1820年3月4日(ベートーヴェン50歳)
出版:1820年3月28日
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