「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」 第1、2楽章——ロシアの侯爵を待たせに待たせて14年ぶりの四重奏曲!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ロシアの侯爵を待たせに待たせて14年ぶりの四重奏曲! 「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」 第1、2楽章
「第九」と「6つのバガテル」以降、ベートーヴェン最後の日までに完成された作品は、すべて弦楽四重奏曲です。これらを出版順ではなく、作曲された順に並べると第12番、15番、13番、14番となります。第12番はオーソドックスな4楽章構成。ここから、番号を追うごとに楽章がひとつずつ増えていきます(詳しくは「作曲順にコンプリート・ベートーヴェン! 毎日聴くと見えてくる“本当の姿”」)。晩年にあっても、実験的精神を忘れない、ベートーヴェンの弦楽四重奏を聴いていきましょう。
本日はご紹介するのは「第12番 変ホ長調」。第11番以来、14年ぶりの弦楽四重奏曲です。
「第九」の再演が行なわれた1824年5月23日の3日後、ベートーヴェンはロシアのニコライ・ガリツィン侯に手紙を送っています。
「だいぶ以前にあなたと約束していました四重奏曲はすぐにでもお手許に届くことになるでしょう」と言っているが、約束の3曲はおろかまだ1曲も着手されていなかった。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)192ページより
ベートーヴェンは、「3つの四重奏曲」の作曲を依頼していたガリツィン侯爵から、2年も前に報酬の前金を受け取っていたのです。
この手紙の直後、バーデンに向かい作曲に専念。18歳になったカールの進路の問題、ロンドンから再度の訪問依頼に揺れながら、年をまたいだ1825年2月にこの曲は完成します。
「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」Op.127
作曲年代:1824年6月~25年2月(ベートーヴェン53〜54歳)
出版:1826年3月ショット社(マインツ)
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