「弦楽四重奏第15番 イ短調」第1、2、3楽章——体調不良で作曲を中断、第3楽章には回復の感謝を込めて
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
体調不良で作曲を中断、第3楽章には回復の感謝を込めて「弦楽四重奏第15番 イ短調」第1、2、3楽章
初演での大失敗を経て、再演では称賛を受けたという「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」。この作品が繰り返し演奏されるようになった頃、ベートーヴェンは「弦楽四重奏第15番 イ短調」の作曲に集中していました。
昼夜を徹して作曲することもあって疲労がたまり、4月半ばごろから床に臥すことが続いて18日にはかつての主治医アントン・ゲオルク・ブラウンホーファー博士に往診依頼の手紙を書いている(BB1958)。ブラウンホーファー博士は投薬と食事療法と十分な睡眠を徹底する治療にあたった。5月になると軽い散歩ができるまでに回復し、いつもの年より早めにバーデンに保養を兼ねて移ることにした。中断していた「イ短調」四重奏曲の作曲に戻り、第3楽章には「病癒えし者の神への聖なる感謝の歌」と表題したリディア旋法による宗教的敬虔さの漂う美しい音楽を書き上げている。この「イ短調」四重奏曲作品132は8月初旬に完成され、その後はすでに3月から並行してスケッチを始めていた「変ロ長調」四重奏曲の本格的な作曲に向かっている。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)192ページより
体調が優れなかったことにより一時期は作曲を中断していたようですが、その時期があったからこそ第3楽章の美しい響きが生まれたのですね。その表題や、演奏時間が長さからは、回復したことの喜びが伝わってくるようです。
明日は、初演についての様子をご紹介します!
「弦楽四重奏第15番 イ短調」Op.132
作曲年代:1825年初春〜8月初旬
初演:1825年9月9日
出版:1827年9月シュレジンガー社(ベルリン、パリ)
シュパンツィヒ四重奏団により初演される。9月が試演、11月6日に公開初演。
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly