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2020.12.10
おやすみベートーヴェン 第361夜【最後の10年】

弦楽四重奏のための《大フーガ》——当時の音楽家たちの常識を超越した、難解で演奏も困難なフーガ!

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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当時の音楽家たちの常識を超越した、難解で演奏も困難なフーガ! 弦楽四重奏のための《大フーガ》

今日紹介するのは、「弦楽四重奏曲第13番」初稿の終楽章を単独小品として出版したものです。初稿の初演で「終楽章が難解すぎる」と評され、ベートーヴェンは書き換えを余儀なくされます。

楽譜出版商のアルタリアをはじめとする親しい友人たちは(「弦楽四重奏曲第13番」の)終楽章の〈フーガ〉を切り離し、新たに別の簡潔なフィナーレを作曲することを強く勧めた。ここにはアルタリアのしたたかな商人根性が働いていたかもしれない。もちろんアルタリアは、最初はこの形で出版することをベートーヴェンと約束していたので、8月までには版を起こし、試し刷りまで作成していた。ベートーヴェンは最初かなり渋っていたが、終楽章を独立した作品番号をつけて出版するという条件でアリタリアの考えを受け入れた。

 

この時点ではまだ影も形もない新たな終楽章と差し替えることで、ガリツィン侯から委嘱された作品の1曲として「変ロ長調」四重奏曲作品130とし、切り離されたオリジナルの終楽章は《大フーガ》作品133としてルドルフ大公に献呈することにしたのである。

作品130の初稿の終楽章は、当時の音楽家たちの常識をもはるかに超越した難解で演奏も困難なフーガで、四重奏団を替えてのどの初演もベートーヴェン支持者の限られた音楽愛好家たちにさえ理解されず、むしろ、新しい終楽章との差し替えを強く助言され、最終的に真の意味でのベートーヴェンの絶筆となる作品130のための新しい終楽章が1826年11月に作曲されることになった。弦楽四重奏曲史でこの《大フーガ》の本当の後継となる作品は、バルトークまで待たなければならない。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)195、231ページより

演奏時間15分を超える大作のこのフーガ、当時の弾き手にも聴き手にも相当な難しさだったのですね。ベートーヴェンの作曲技法がまさに晩年の境地に達したと伝わってくる作品です。

作品紹介

弦楽四重奏のための《大フーガ》Op.133

作曲年代:1825年3~12月(ベートーヴェン55歳)

出版:1827年5月アルタリア社(ウィーン)

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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