レポート
2022.11.04
いきものスケッチブック No.5「ペリカン」

ペリカン独特のクチバシを表現!? 学んで工作して音で遊んだワークショップ

生物を題材にした子どものためのピアノ曲集を作るために、音楽之友社と作曲家の春畑セロリさんが企画した、題して『いきものスケッチブック』プロジェクト。
生き物とアートのスペシャリストも講師にお招きし、ワークショップを通じて、子どもたちに表現のアイデアをもらおうという試みです。
第5回のテーマは、ペリカン。あの独特のクチバシを、どう作って表現するのでしょうか。

写真・文
飯田有抄
写真・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

取材協力:きたいピアノ教室
写真:飯田有抄
動画:編集部

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まずは鳥の音楽を聴いてみよう

このワークショップでは毎回、テーマの生き物にちなんた曲を、作曲家の春畑セロリさんがピアノで演奏してくれます。曲集は『ゼツメツキグシュノオト』。絶滅が危惧された、美しく、可愛らしい、ステキな動植物の世界が音楽で描かれている作品集です。

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今回のテーマは「ペリカン」なので、同じ鳥の仲間ということで、セロリさんは〈クマゲラ〉を演奏してくれました。

「クマゲラって知ってる?」というセロリさんからの問いかけに、知っているという子はだれもいませんでした。

「クマゲラはキツツキの仲間です。キツツキは木を突く鳥だよね」

クマゲラの様子をスタッカートの連打で表現した曲を、みんなで聴きました。

ピアノ曲集『ゼツメツキグシュノオト』より「クマゲラ」

春畑セロリ(はるはた・せろり)
作曲家。東京藝術大学卒。鎌倉生まれ、横浜育ち。
舞台、映像、イベント、出版のための音楽制作、作編曲、演奏、執筆、音楽プロデュースなどで活動中。さすらいのお気楽者。
主な著作に「ゼツメツギグシュノオト」「オヤツ探険隊」「空をさわりたい」「できるかな ひけるかなシリーズ(全7冊)」「連弾パーティー・シリーズ(全5冊)」「きまぐれんだんシリーズ(全6冊)」(以上、音楽之友社)、ピアノ曲集「ポポリラ・ポポトリンカの約束」「ぶらぶ〜らの地図」(全音楽譜出版社、CDは日本コロムビア)、こどものためのピアノ曲集「ひなげし通りのピム(カワイ出版)」などがある。

ペリカンって、どんな鳥?

さて、ここで今日の主役の「ペリカン」の紹介です。今回も生き物のことを詳しく教えてくれるのは、蝦名元先生です。

蝦名元(えびな・つかさ)
一般財団法人 進化生物研究所 研究員・学芸員。東京農業大学・佼成学園女子中学高等学校・東京農業大学稲花小学校 非常勤講師。博物館・科学館等での展示・講座など、科学の楽しさや生きものをテーマにイベントも実施。
著書:『生きものラボ! 子どもにできるおもしろ生物実験室』(講談社)、『今を生きる古代型魚類-その不思議なサカナの世界-』(東京農業大学出版会・共著)、『群れ MURE 群れるって美しい。』(カンゼン・共著・監修)、教育情報誌『たのしい学校』(大日本図書・連載中)。

「ペリカンは、水鳥の仲間です。カモやハクチョウと同じように、水にプカプカ浮いて、泳ぐタイプの鳥ですね。ペリカンは渡り鳥でもあります。季節が変わると、国から国へと飛んで行きます。住む範囲がとても広い鳥ですね。

ペリカンは世界で8種類しか知られていません。前に紹介したサルは220種類もいたのにね!

おもにアフリカやアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどに住んでいます。季節によっては、ベトナムや台湾などにも渡ってきます。ときどき、台風などで飛ばされて、日本に迷い込んできてしまうペリカンもいます」

スライドを見ながら、ペリカンの生態をイメージ。

「日本ではこれまで、3種類のペリカンが確認されています。数年前に高知県で確認されたこともありました。また、千葉県の印旛沼というところに、もう20年も、どこにも行かず、住み着いているペリカンもいます。どこから来たのかは、誰も知りません。江戸時代にも、京都にペリカンが迷い込んできたという記録があります」

そんなペリカンの特徴は、なんといっても大きなクチバシ!ビヨ〜ンと大きく広がる袋状の部分がありますよね。

「大きな袋は、網のように使います。水の中でクチバシを大きく広げ、袋の中にたくさんの魚を捕まえて、ごっくんと丸呑みします。余分なお水はクチバシの隙間から出しています。

それから、この袋には血管がいっぱい走っています。暑いときは、血液を回して体温を下げる役割も果たしています」

ここで蝦名先生が動画を見せてくれました。ペリカンはこのクチバシを動かして、カタカタカタカタ……という音を出していました。姿形の独特なクチバシですが、こんな音も出しているんだ〜と、みんなビックリ。

ペリカンの特徴を形にしてみよう

そんなおもしろいクチバシをもったペリカンを、みんなで作ってみよう! ということで、マイ・ペリカンの工作を準備してくれたのは、秋田彩子先生です。

秋田彩子(あきた・あやこ)
ものづくり教室主宰。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、Qinari(キナリ)研究所設立。子どもたち一人ひとりが、アートのみならずあらゆる物事を自分で考え表現できるように、様々な素材や技術、文化や価値観に触れ、様々な世界に出会える時空間を提供している。2019年からは自然の中での体験と美術制作を融合させる軽井沢出張所も不定期開催中。

「今回は、クチバシがカタカタと鳴るペリカンを作ります。まず、頭と体を紙で作るので、好きな色を塗ってみましょう」

子どもたちは、思い思いの色で、ペリカンの頭・体・足の色をデザインします。

思い思いに色を塗って……
ペリカンの形に切り取ります。

クチバシをカタカタと鳴らす仕組みは、秋田先生が事前に準備しておいた針金でできた骨組みです。

この骨組みに、薄手の白いゴム手袋をかぶせれば、クチバシ部分が出来上がり。ゴム手袋をハサミで切ったり、骨組みにかぶせたりするのは、けっこう繊細な作業でした。今までのこのワークショップでは一番難しかったかも!? でも先生たちのサポートで、一人ひとり、集中して上手に作ることができました。

クチバシを動かせるように助けてもらいながら工作。
ペリカンのユニークな特徴であるクチバシ下の部分は、ゴム手袋で。

本当にみんな、集中してよくがんばりました。

動かし方を確認して……
胴体にクチバシをセット。
できた! マイ・ペリカン。

ペリカンのクチバシの音とピアノで遊ぼう

人差し指と親指を、ペリカンのクチバシ部分に入れて動かすと、カタカタカチカチと気持ちのいい音も鳴ります。ちょっとしたコツが必要のようでしたが、練習したら、みんないい音が鳴りました。

では、みんなで作ったペリカンを持って、ピアノの前に集合〜!

何がはじまるのかな?

「じゃあ今から、ピアノを鳴らしたとおりのリズムを、みんなもペリカンのクチバシで鳴らしてみて」とセロリさん。

ポポポン♪ ポポポポンッ♪

セロリさんの奏でるかわいい和音の音に続いて、みんなのペリカンもクチバシで応えます。なんだか楽しいアンサンブル♪

タタンッタタンッ♪  タンッタタンッ♪

みんなのリズムが揃うと、お〜!と先生たちの歓声。気持ちいいくらい、みんな揃っていました。

4つのリズムパターンを、チームに分かれて、みんなでリズム合奏。一斉に重ねて、セロリさんのピアノ演奏に重ねて遊んでみました。

「ペリカン・アンサンブルできたね!」

蝦名先生のレクチャーでは、ペリカンの仲間として、ハシビロコウも紹介されていました。

「じゃあ最後に、動かないハシビロコウ役と、クチバシを鳴らすペリカン役をピアノでやってみよう!」とセロリさん。

低音でじゃ〜んと鳴らすハシビロコウ、高音で自由に動くペリカンの即興アンサンブルです。

「お家や学校でも、音で自由に遊んでみてくださいね」

ペリカンの音って、どんなイメージ?
みんなの可愛いペリカンの群れ。

動画:ペリカンの音のイメージを表現してみました!

セロリさんによるペリカンの音のモチーフ

写真・文
飯田有抄
写真・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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