レポート
2021.10.04
過去最多の出場者から20代が頂点に

国際色豊かな結果に!第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉の審査のポイントに「音楽性は人間性」

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

メイン写真:表彰式にて

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10月3日(日)、東京オペラシティ コンサートホールにて、第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉本選が行なわれ、入賞者が決定した。

結果は以下のとおり。

本選の結果

第1位/聴衆賞: José SOARES / ジョゼ・ソアーレス(ブラジル)

第2位 : Samy RACHID / サミー・ラシッド(フランス)

第3位/特別賞・齋藤秀雄賞/オーケストラ賞(新設): Bertie BAIGENT / バーティー・ベイジェント(イギリス)

入選・奨励賞: Satoshi YONEDA / 米田 覚士(日本)

第1位を受賞したジョゼ・ソアーレス(ブラジル)。自由曲は、ストラヴィンスキーのバレエ音楽《ペトルーシュカ》より第1部、第2部、第4部を振って会場も味方につけ、聴衆賞を獲得した。

コロナ禍で開催が危ぶまれた今回、尾高忠明審査員長の話によれば、延期するときのために来年の仮押さえもしながら、主催する一般財団法人 民主音楽協会は「絶対に今年開催する」という信念のもと進めていたそう。

開催を決定したあとも、応募者が少ないかもしれない、参加者や審査員は来日できるのかなどと懸念していたが、世界49カ国・地域から過去最多の331名もの若き指揮者が応募、3日間でビデオ審査するのは「死に物狂いだった」が、すばらしい演奏が多く、心地よい時間だったと話す。

予選への通過者14名のうち2名は棄権になってしまったが、参加者は14日間の隔離期間を経て、1次予選では12名、2次予選では8名が東京フィルハーモニー交響楽団を指揮し、本選ではファイナリスト4名が新日本フィルハーモニー交響楽団とともにステージに上がった。

なお、錚々たる顔ぶれが並ぶ審査員9名は、無事に全員がそろっての審査になったが、そのうち3名は、ディスタンスをとる必要から2階席で審査することになった。

フランス、ブラジル、イギリス、日本と、出身地の異なる4名のファイナリストは、本選前半には課題曲であるロッシーニのオペラ《どろぼうかささぎ》序曲を、後半にはカラーの異なる自由曲を指揮し、それぞれの音楽の個性を発揮した。

3年前の前回大会では1位から3位は日本人という快挙であったが、今回は一気に国際色豊かに、そして全員が20代と若返った。

今回のファイナリストたち。左から、第1位/聴衆賞のジョゼ・ソアーレス(ブラジル)、第2位のサミー・ラシッド(フランス)、第3位/特別賞・齋藤秀雄賞/オーケストラ賞(新設)のバーティー・ベイジェント(イギリス)、入選・奨励賞の米田 覚士(日本)。

10月4日(月)の記者会見で審査員が語った審査のポイントや今回の感想について、一部をご紹介しよう。

「音楽性というのは人間性だと思います。いかにすばらしい人間で、それが舞台に出るか出ないか。自分自身をさらけ出すことが大切で、自分を大きく見せようとしても出てきません。棒がうまくても、音楽が何も出てこない指揮者にはなってほしくない」(尾高)

「一人ひとりがどれだけやりたい音楽があるのかを見ていました。日本人の参加者に関しては、本当にやりたい音楽はどこにあるのかなというところが少し見づらかった」(高関健)

「若くて熟成した音楽性をもっていることは珍しいことだと思いますので、とてもすばらしいコンクールだったと思います」(ユベール・スダーン)

「指揮のテクニックは筆跡とまったく同じで、良し悪しはない。自分が感じるものを表現し、オーケストラのリアクションを得るのが大事。とてもよく従う、サポートしてくれるオーケストラだったと思います」(オッコ・カム)

「9名の審査員が本当に心を配って、オープンに話をしながら審査をした。ここで入賞したということは、世界に認められたと言ってよいと思います」(シャーン・エドワーズ)

本選のオンライン配信は、11月3日(水・祝)まで無料で視聴できる。これから何十年もの指揮者人生を歩むであろう若き俊英の門出を見逃すことのなきよう!

入賞者のプロフィール、将来に向けたひと言

第1位:José SOARES/ジョゼ・ソアーレス(ブラジル)
1998年3月11日生まれ(23歳)。現在、サンパウロ大学で作曲を学ぶ。2017年、カンポス・ド・ジョルドン冬の音楽祭指揮賞を受賞し、マリン・オルソップ、アルヴォ・ヴォルマー、ジャンカルロ・グェレッロ、アレクサンダー・リープライヒらに学ぶ。2019年、パルヌ音楽祭でパーヴォ・ヤルヴィに師事。2018年にはサンパウロ交響楽団の客演アシスタント・コンダクターに招かれる。2020年からミナス・ジェライス・フィルハーモニー管弦楽団でアシスタント・コンダクター。指揮をクラウディオ・クルスに師事。
「音楽を作るのはダイナミックなこと。それは音楽だけを勉強するのではなく長い旅みたいなもので、常に前に進んでいくことが大事。指揮者は音を出さない音楽家なので、よりよい自分になっていくのが大切だと思っています」
第2位:Samy RACHID/ サミー・ラシッド(フランス)
1993年1月6日生まれ(28歳)。バーゼル音楽大学に学び、2020年秋から指揮をマチュー・ヘルツォークに師事。チェリストとしてのキャリアが長く、パリ国立高等音楽院に学び、2015年カール・ニールセン国際室内楽コンクールおよび2016年ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で第1位(いずれもカルテット・アロドとして)受賞している。
「レパートリーを増やし、人間としても成長していくことができればと思います」
第3位:Bertie BAIGENT/バーティー・ベイジェント(イギリス)
1995年3月26日生まれ(26歳)。ケンブリッジ大学ジーザス・カレッジやロンドンの英国王立音楽院で学ぶ。2020年のグィド・カンテッリ国際指揮コンクールで特別賞を受賞。セントルイス交響楽団、トリノ王立歌劇場管弦楽団などに客演。コロラド交響楽団のアシスタント・コンダクター、ロンドン・ヤング・シンフォニアの首席指揮者などを歴任。2017年からウォーターペリー・オペラ祭の音楽監督を務めている。指揮をシャーン・エドワーズに師事。
「長い指揮者人生を続けていくことは、常に新しい勉強をしていくことだと思います」
配信情報
第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉本選

見逃し配信視聴期間: 11月3日(水・祝)18:00までに視聴券を申し込み、23:59まで視聴可能

料金: 無料 ※申し込みはこちら

 

プログラム:

前半審査/課題曲

G.ロッシーニ:オペラ《どろぼうかささぎ》序曲

 

後半審査/自由曲

No.143 サミー・ラシッド[フランス]

サン=サーンス作曲:交響曲第3番 ハ短調《オルガン付き》Op. 78より第1部から Adagio – Allegro moderato、第2部

 

No.205 ジョゼ・ソアーレス[ブラジル]

I.ストラヴィンスキー作曲:バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)より第1部、第2部、第4部

 

No.218 バーティー・ベイジェント[イギリス]

R.シュトラウス作曲:交響詩《死と変容》 Op. 24, TrV 158

 

No.102 米田覚士[日本]

P.I.チャイコフスキー作曲:幻想的序曲《ロメオとジュリエット》

 

演奏: 新日本フィルハーモニー交響楽団

審査委員:

委員長:尾高忠明

委員:シャーン・エドワーズ、広上淳一、オッコ・カム、ライナー・キュッヒル、準・メルクル、ユベール・スダーン、高関健、梅田俊明

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