レポート
2025.12.26
角田鋼亮、サッシャ・ゲッツェルが指揮

「第九」2025 聴き比べ!Vol.2~東京フィル×都響

年末の定番であるからこそ、オーケストラのカラーが出る「第九」。今年も各オーケストラ、こだわりの布陣と構成となりました。ここでは2楽団を聴き比べ! 東京フィルは角田鋼亮を、都響はウィーン出身のサッシャ・ゲッツェルをそれぞれ指揮に迎えた「第九」公演をレポートします。

取材・文
那須田務
取材・文
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

東京都交響楽団の「第九」(12月24日・東京芸術劇場)写真提供:東京都交響楽団©堀田力丸

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自然で巧みに歌わせる指揮~東京フィルハーモニー交響楽団

欧州演奏旅行を成功裏に終えた東京フィルの指揮は角田鋼亮、都響はウィーン出身のサッシャ・ゲッツェル、合唱はいずれも新国立劇場合唱団、ソリストはクレジットの通りである。

東京フィルは前半に「第九」と同じシラーの詩に因むシュトラウスⅡ世のワルツ《もろびと手を取り》を演奏した。

「第九」はヴァイオリン12型の小振りな編成もあって第1楽章冒頭から速めのテンポで躍動感とともに音楽を前進させる。弦は柔らかな音色でアーティキュレーションが明快。第2主題の音型からジョナサン・デル・マー校訂のベーレンライター版と思われるので、関係者に確認したら同版を基本にしているとのことだった。

第2楽章も軽やかなテンポときびきびとしたリズムでダンスの躍動感がある。第3楽章は弦の柔らかな音色と息の長いフレージングがすばらしい。自然で巧みな歌わせ方は角田の魅力と言えるだろう。それは終楽章でも大いに発揮される。管は機動力に優れ、4人のソリストはユニットとして纏まっている。劇的な激しさも表現の合一性も十分ながら、音量面から合唱が前面に出た演奏と言え、以前古楽器のオーケストラの実演に接して同曲の主役は合唱という感想を抱いたことが思い出された。

公演データ

日時:12月20日(土)

会場:サントリーホール

出演

指揮:角田鋼亮

ソプラノ:迫田美帆

アルト:中島郁子

テノール:渡辺 康

バリトン:上江隼人

合唱: 新国立劇場合唱団(合唱指揮:水戸博之)

東京フィルハーモニー交響楽団

曲目

J.シュトラウスII世:ワルツ《もろびと手をとり》

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」

天地鳴動の終楽章~東京都交響楽団

拍手に応えるソリストたちと指揮のサッシャ・ゲッツェル、東京都交響楽団(写真提供:東京都交響楽団©堀田力丸)

一方の都響は16型。第1楽章から大編成に適した遅めのテンポと重心の低いサウンドで整然と弾き進められる。こちらも第2主題からベーレンライター版を基本にしていると思われるが、東京フィル同様終楽章のトルコ・マーチは全体の比率に適したテンポ。

やはり第3楽章が秀逸。弦の柔らかく深みのあるサウンドがすばらしい。フレーズの丁寧な造形と濃密な歌い回しにかつてウィーン・フィルでヴァイオリンを弾いていた指揮者の経験が生きている。

終楽章のファンファーレが凄まじく、低弦のレチタティーヴォの表情豊かな語り口が興味深い。総じてオーケストラと合唱、表出力の高いソリストが混然一体となった熱演。第4部以後の大合唱などはまさに天地鳴動の大迫力だった。

公演データ

日時:12月24日(水)

会場:東京芸術劇場コンサートホール

出演

指揮:サッシャ・ゲッツェル

ソプラノ:森谷真理

メゾ・ソプラノ:小林由佳

テノール:チャールズ・キム

バリトン:加耒 徹

合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

東京都交響楽団

曲目

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」

取材・文
那須田務
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那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...

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