《春の祭典》大聴き比べ大会~知れば知るほど面白い クラシック音楽の魅力を実感
2022年10月28日(金)19時から、誠品生活日本橋 イベントスペース「FORUM」において、『ON BOOKS advance もっときわめる! 1曲1冊シリーズ』(音楽之友社)新創刊記念イベントのライヴトーク「知れば知るほど面白い クラシック音楽の魅力とは ~《春の祭典》大聴き比べ大会~」が開催された。
東京生まれの千葉県育ち。大学の文学部を卒業後、音楽之友社に入社、1991年から、若干の空白を挟み、『レコード芸術』編集部に所属、2007年より同誌編集長。13歳からク...
当日は、メインライターのひとりで総監修的な役割も担った満津岡信育さんと、シリーズ企画開発担当編集・青野泰史、司会も兼ねた音楽之友社営業部長・亀田正俊というクラシック音楽に造詣の深い3名が、くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド、誠品生活日本橋の本に囲まれた贅沢な空間で、ここでしか聞けない「音楽+トーク」を展開した。
会場に集まったのは事前予約(入場無料)をした20名ほどの方々で、年代的には30~60代、男性が8割くらいだっただろうか。
前半は登壇者による自己紹介のあと、司会の亀田が、満津岡さんと青野担当に《春の祭典》との出会いなどについて質問するコーナー。満津岡さんの「《春の祭典》には、最初はあまり興味を持っていなかった」という発言が参加者の興味を惹いていた。
ストラヴィンスキー自身の指揮による1960年の録音が基準
そして休憩を挟んだ後半は、お待ちかねの《春の祭典》大聴き比べ大会。満津岡さんが曲のポイントを5カ所、とても短くピックアップして、それぞれについて3~5種の演奏を聴き比べるというもの。
いずれのポイントでも、「まず作曲者ストラヴィンスキー自身の指揮による1960年の録音を聴いてから、他の特徴的な演奏と比較する」という段取りだったが、これは作曲者自身がこの録音を「演奏解釈の基準を聴衆に届けるため」に行なったとされているからだ。
それゆえに、この聴き比べでは「各演奏が作曲者の意図といかに異なるのか」ということを確認できるものとなった。満津岡さんによれば、これがよく分かるように、なるべく極端な解釈の演奏を選んだそうだ。
作曲者から「全部間違っている」と言われた解釈も!
なかでも、第1部第1曲〈序奏〉冒頭のフェルマータが付いているファゴットのC音を極端に伸ばしたロバートソン指揮による演奏や、第1部第2曲〈春の兆し~若い娘たちの踊り〉では作曲者から「全部間違っている」と指摘されたカラヤン指揮の演奏(1963~64年)、そして第2部第2曲〈乙女たちの神秘な集い〉の11拍子の部分でのマゼール指揮ウィーン・フィルによる限りなく遅いテンポの演奏などに、参加者が驚嘆の声を上げていた。
《春の祭典》第1部第2曲〈春の兆し~若い娘たちの踊り〉。作曲者のストラヴィンスキーから「全部間違っている」と指摘された、カラヤン指揮の演奏
《春の祭典》第2部第2曲〈乙女たちの神秘な集い〉。11拍子の部分をマゼール指揮ウィーン・フィルは、限りなく遅いテンポで演奏している
また、ロト指揮レ・シエクルによるピリオド楽器(初演当時の仕様の楽器=たとえばファゴットではなくフランス特有の楽器バソンを使用)の演奏も選ばれ、演奏解釈だけではなく楽器の違いにも目を向けるなど、さまざまな視点に配慮したとても興味深い聴き比べとなっていた。
《春の祭典》ロト指揮レ・シエクルによる、ピリオド楽器の演奏(トラック1~13)
2部構成による約1時間のイベントだったが、楽しい時間ほど短く感じられるもので、時間はあっという間に過ぎていった。参加者も熱心な方ばかりで、そのうちのひとりが、「とても面白かった。またこういうイベントがあればぜひ参加したい」と語っていたことが印象的だった。最後には満津岡さんによるサイン会も行われ、イベントは盛況のうちに幕を閉じた。
ON BOOKS advanceは、クラシックの各楽曲を好きで親しんでいる方に向けて「その曲を多方面から極められるように」編集したもの。内容は、各曲にくわしい著者が、「総論、楽曲の魅力」「楽曲解説」「演奏史・録音史・名盤」の3部構成にて展開する。
本書《春の祭典》は、初演以来100年を過ぎてもいまだに革新的であり続ける本曲の辿った歴史を一望でき、モントゥー(1956年)からヤルヴィ(2019年)までの「名盤30」、《春祭》が得意な指揮者、珍盤・レア盤、バレエのDVDなどを紹介する圧巻の内容。
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