
佐藤俊介が第57回(2025年度)サントリー音楽賞を受賞!
日本の洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人・団体に贈られる「サントリー音楽賞」が発表され、第57回(2025年度)は、ヴァイオリニスト・指揮者の佐藤俊介が受賞した。
佐藤は、バロック・ヴァイオリンとモダン・ヴァイオリンの両方を演奏し、ある日はソリスト、ある日はコンサート・マスターとしてステージにあがる。また、指揮者としての顔も持ち、器楽や声楽のアンサンブルを指揮する。
4歳の時にアメリカに移住し、これまでフランス、ドイツ、オランダで暮らしてきた佐藤は、5つの言語を話す。演奏、指揮、指導、教育をとおして、世界の音楽家と日々協働する彼の歩みと国際感覚が、日本の音楽シーンにさまざまな恩恵を与えていることが評価された。

ヴァイオリニストであり、指揮者、室内楽奏者、ソリスト、指導者でもある佐藤俊介の多様さは、彼の多才で臨機応変な性格を反映しているといえるだろう。ピリオド奏法に裏打ちされた活動は彼のアイデンティティの中核をなすものであり、音楽の中に身を置き、劇的かつ啓示を与えるような方法で聴衆とコミュニケーションをとることを可能にしている。世界各地のピリオド楽器アンサンブルやシンフォニック・オーケストラを指揮し、ソリストとしても出演している。2013年から23年まで、オランダ・バッハ協会のコンサートマスターを、18年からは音楽監督を兼務し、2019年9月から10月に行われた同管弦楽団の日本ツアーを成功させた。録音したJ.S.バッハのカンタータや器楽作品の数々は、オランダ・バッハ協会のYouTubeで見る事が出来る。2011年からはコンチェルト・ケルンのソリスト、指揮者、コンサートマスターを務めている他、オーストラリア・ブランデンブルク管弦楽団、東京交響楽団、ハーグのレジデンティ・オーケストラ、セビーリャのオルケストラ・バロッカなどから客演指揮者として定期的に招聘されている。2013年から、アムステルダム音楽院の教授としてヒストリカル・ヴァイオリンを教えている。録音では、「グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ集」や、「テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための 12 の幻想曲」、また、パガニーニの作品を世界で初めてガット弦とバロック・ボウを使った歴史的奏法で録音した「パガニーニ:24 のカプリース op.1」や、「J.S.バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ(全曲)」(Acoustic Revive)等。最新アルバム「BEE1H0VEN ~ ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集」は、新レコード・アカデミー賞第1回大賞に輝いた。2010年、ライプツィヒの第17回ヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクールで第2位および聴衆賞受賞。出光音楽賞、S&Rワシントン賞受賞。2019年度 第61回毎日芸術賞、第70回芸術選奨 文部科学大臣新人賞を受賞。
オランダ・バッハ協会 YouTube
古楽か、モダンか。佐藤俊介は、そうした問いや対立を、過去のものにする可能性を秘めたパイオニアである。
奏法、楽譜、楽器、そうした過去のものに対する敬意と健やかな好奇心を、無限の創造の糧とする。そんな古楽の究極の目的は、人間の普遍性の探究といえるだろう。国境や時代を超え、「人間」そのものを掘り下げる。ゆえに、多様性の宝庫となる。
佐藤は10代の頃、米国で古楽への関心を抱いた。研鑽ののち、今は古楽器とモダン楽器の両方を、分け隔てなく自身の声としている。卓越した国際感覚と語学力も、世界中の音楽家との柔軟なコミュニケーションを促進する礎となった。オランダ・バッハ協会第6代芸術監督を経て、演奏、指揮、指導、教育を通じ、 世界各地で自らを飛躍させつつ、次代の才能を育てている。
そうした歩みが昨今、日本の音楽シーンにもさまざまな恵みをもたらしている。
東京交響楽団への客演は、聴衆以上に奏者たちにセンセーショナルな目覚めをもたらした。東京藝大チェンバーオーケストラへの指導、およびみずみずしい即興 精神にあふれるスリリングな弾き振りは、若い奏者たちの視野を大きく世界へと開かせ、音楽に生きる人生の幸福を再認識させるものとなった。フォルテピアノのスーアン・チャイと各地で敢行したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏も、遊び心と挑戦心を前面に出し、受け身ではない能動的な「聴き方」を聴衆に 提案。音楽業界を大いに触発した。
そして昨年、満を持してロマン派以降の音楽を主な対象とする古楽オーケストラ「Past Forward Ensemble(PFE)」を創設。今年5月、独ケルンで船出する。過去へと向かう探究心を、未来を編む力とする。そんな志を託された名称の通り、あらゆる偏見や先入観を取り払い、より自由な精神で、音楽と人々を連ねてゆくことを目指している。
分断に歪み、混迷を深めるいまの時代において、佐藤は芸術家にしかできないことをきわめてアクチュアルに示し続けている。楽しむだけではなく、思考を突き動かすためにこそ、音楽を。今回の贈賞は、そうした佐藤のビジョンを照らし、クラシック音楽の未来の一翼を担うひとりとして、今後の歩みへの期待を示すものである。
(吉田純子委員)
佐藤俊介 & スーアン・チャイ『BEE1H0VEN~ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ全集』
選考委員
伊東信宏、柿沼敏江、片山杜秀、鈴木雅明、寺西基之、舩木篤也、松本良一、 吉田純子 (敬称略・五十音順)
関連する記事
-
インタビューベルリン・バロック・ゾリステン with ヤン・インモがひらく新しい視界
-
インタビュー柴田俊幸×アンソニー・ロマニウク〜リスクを背負って、繋げていくコガク
-
読みもの未来に続くタイムマシン
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
















